“VR先進国” 台湾の有識者が語る、VR/XR映像分野の現在地「台湾では国がクリエイターの支援を継続」

2023/12/23 18:00 配信

映画 インタビュー

「虚」と「実」の捉え方がポイント、VRとXRの違いは?


リー・シャンチャオ(高雄映画祭VR部門キュレーター)※提供写真

ワンダー・オン:「Cinema at Sea」で上映した作品はVR作品です。VRとXRの違いは?

リー・シャンチャオ:VRは、ヘッドセットをもって体験するもの。XRはもっと虚実ないまぜにした複合的なもので、携帯などさまざまな機材と連携することができます。虚実ないまぜ、がポイントであり、VRは「虚」の世界をVRヘッドセットを通して観るもの。XRは現実の風景などの映像の中に虚をいれて、「虚」と「実」を一緒に体験できるものです。


ワンダー・オン:XRは面白い体験でした。ヘッドセットを付けた瞬間にコンサート会場に様変わりする。面白いのが、自分と同じ空間にいる人とインタラクティブなコミュニケーションがとれる。ゲームなどでも展開できる可能性がありますね。


リー・シャンチャオ:これからVR/XRが主流になっていくかというと、また違うと思います。これまではVR、XRは映画祭のプログラムとして組まれてきました。VR/XRというものが確立されてきた今は、映画の中だけで語るものではなくなってきていると思います。映画の体験とは全く違うものになってきている。

今は映画祭の一部門でやっていることが多いですが、VR作品だけの映画祭をつくることが可能だと思います。VRヘッドセットを装着して個々が作品を観賞することで、ネットワークを作ることは難しいと思いますが、それがXRになると、体験している空間を共有できていければ、面白いことがもっとできるはずです。

注目の先端技術だがまだ発展途中、継続するために支援が必要

チェン・シーアン(『蘭嶼(らんしょ)の沖で』監督)※提供写真


ワンダー・オン:今の話しは感慨深いですね。私が思うのは、これからは体験格差ができてしまうのではということです。ヘッドセットは高価で、ある程度の金額を払った人でないと体験できないもの。そして、作る側も製作費をバックアップしてもらわないと作れない。観たい、作りたいという考えがあってもそういった課題があると思いますが、その点についてはどう思いますか?

リー・シャンチャオ:ヘッドセットひとつでいろいろな体験が可能になるのでもちろん大事です。今年の高雄映画祭で大規模な実験をした中で言うと、VR体験の会場を確保しないといけない問題もありました。施設面は特に、政府の支援なくては難しいのではないかと思います。体験するアナログの場がないと作品自体が良くなっていかないですね。HTCのような民間企業とタイアップするなど、企業との支援、公的な支援、両輪での支援は必要だと思います。

リー・シャンチャオ:僕の理解が間違っていたらごめんなさい、VR/XR作品はコストがかかる、そして回収が難しい、という理解であっていますか?

チェン・シーアン:VR/XRは大きな場を確保しないといけない、ロケーションベースのエンタメとも言われています。技術だけでなく体験のハードルもあります。携帯、パッド、PCを持っている、は特別なことではないですが、そこまで浸透していくと変わると思いますが、ロケーションベースのエンタメをどう発展していくかかが課題です。現状では回収はどうしてもできないので、政府の支援に頼る形になっていますね。

ワンダー・オン:90年代に「ネットフリックス」の話しをしてもちんぷんかんぷんだったと思います。VR/XRも今は具体的に未来を言い当てるのは難しいですよね。まだ未完成でありながら、実践精神をもって実施しないとリードできないと思います。世界で戦っていくためには、今実践をしていくことが大事ですね。