マーベル・スタジオのオリジナルアニメーションシリーズ「ホワット・イフ…?」シーズン2の第1話が、12月22日に日米同時配信された。同作は、2021年8月にマーベル・スタジオ初のオリジナルアニメーションシリーズとして配信され、“もしもアベンジャーズたちに別の運命が待ち受けていたら?”という仮定において描かれ、もうひとつの物語が楽しめる作品として好評を博した。シーズン2は22日から30日(土)まで全9話が毎日1話ずつ配信。22日に配信された第1話は「もしも…ネビュラがノバ軍に入ったら?」というタイトルで、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のキャラクター・ネビュラが荒廃し、鬱屈とした空気が漂うザンダー星を舞台に奮闘する姿を描いている。2022年の「ガーディアン・オブ・ギャラクシー ホリデー・スペシャル」のこともあり、何となくクリスマスにはガーディアンズが見たくなってしまうのは私だけではないはず。そこで、クリスマスムード一色の読者に向けて、第1話のレビューを紹介する。(以下、ネタバレがあります)
「ホワット・イフ…?」は、「アイアンマンや、キャプテン・アメリカをはじめとしたアベンジャーズたちに、もしも別の運命が待っていたとしたら…?」というテーマで、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)で実際に起こった出来事をベースに、想像を超えた驚くべき”もうひとつの物語”を描くシリーズ。
シーズン1では、スティーブ・ロジャース(キャプテン・アメリカ)が重傷を負ったことでペギー・カーターが世界初のスーパー・ソルジャーになるという「もしも…キャプテン・カーターがファースト・アベンジャーだったら?」に始まり、宇宙海賊ラヴェジャーズがピーター・クイルでなくティ・チャラを誘拐してしまい、ブラックパンサーではなくスター・ロードになってしまったり、ドクター・ストレンジが手の代わりに恋人を失ってしまったり、ゾンビ・ウイルスにアベンジャーズたちが感染したり、ソーが一人っ子だったりと、MCUの魅力的なキャラクターたちの“ありえたかもしれない”さまざまなもしもの物語が描かれた。
そしてシーズン2の第1話では、「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」よりも遥か前の時間軸で、告発者ロナンがサノスを裏切り追放する。野心的なタイタン星人は敗れ、ネビュラの姉が道連れに。ネビュラも過去の残骸の中を漂流していたが、ノバ軍の指揮官が手を差し伸べ、自軍にネビュラを招き入れた。ノバ軍に入隊したネビュラは“刑事”としての才能を示そうとするが、ロナンがザンダー星にも攻め入り、この星も破滅の淵にまで追い込まれてしまう。
ノバ軍の指揮官は最終手段としてシールドを起動。これで敵からの攻撃が防げるが、向こう50年、このシールドの効果が続くため、その間、閉じ込められた世界になってしまうという大きな代償があった。それから5年がたち、閉塞感に耐えきれず、ザンダーの治安はかなり悪化。そして、何者かにヨンドゥが殺害された。ヨンドゥと言えば、口笛で自由自在に操れる矢を思い出す。ネビュラはヨンドゥの殺害現場で彼のホログラムを出し、彼の武器だった矢を呼び戻すことに成功。
ノバ軍の指揮官はネビュラを信頼していて、重要な機密事項を伝えた。それはヨンドゥが新たに台頭する闇の勢力に捕まり殺害されたということ。そしてザンダー星は夜明けまでに壊滅してしまうということも。ザンダーを救うには、ヨンドゥが矢の中に残した図面らしきものを解明しなければいけない。そこでネビュラが向かったのは“事情通”のハワード・ザ・ダックのところ。ネビュラが矢を持っていることで、ヨンドゥが亡くなったことをハワードは察したが、流石の彼もその図面は分からなかった。
だが、別の人物の口から「ザンダーの古いメインフレーム・コアだ。確かB-42だったかな」とその正体が明らかになった。シールド生成器のソースコードもそこに含まれていると知ったネビュラは、コードが盗まれる前に破壊しないといけないと気付く。ハワードたちは、そこに入ったら生きて戻れないと止めようとするが、ネビュラは任務を果たすために命を惜しまないと、相当の覚悟を決めていた。厳重なセキュリティーを突破できる人物が必要と考え、ヨン・ロッグを刑務所から脱獄させた。
これでザンダー星が救われるのかと思ったら大間違い。ここからが本番といった感じで、“裏切り”あり、仲間の集結あり、ストーリーは混沌としていく。雨の降る薄暗い街並みは、ウィリアム・ギブスンが描いたサイバーパンクに似た雰囲気が溢れている。30分ほどの作品だが1本の映画を見るくらいの内容の濃さで、とにかくネビュラがかっこいい。
また、シーズン2が始まる前に公開された予告動画には、遊園地の中でブラックパンサーやアントマンが特殊能力を持った少年を捕まえようとするシーンがあったり、ガモーラやトニー・スタークがカーレースをしていたり、ソー、ワンダ、ハルク、ロケット、ドクター・ストレンジ、キャプテン・アメリカなどが登場していたが、どれもやっぱりどこか違う世界の出来事のような感じがする。
その予告の中で、あらゆるユニバースを観察する“ウォッチャー”が「続編は趣味じゃない。通常はね。だが、こじれてしまった。マルチバースで…」という言葉を発している。シーズン1よりもさらに深い物語が展開されていくことが感じられたし、第1話を見てそれを確信。シーズン2も“もしも”で終わらせるにはもったいない良作ぞろいだ。
ちなみに23日に配信された第2話も「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」関連で、タイトルは「もしも…ピーター・クイルが地球最強のヒーローたちを襲ったら?」。時は1988年。エゴと8歳の息子ピーター・クイルが地球で“拡張”を始めようとしていた。ハワード・スタークとペギー・カーターはその当時の最強ヒーローを集めて、“アベンジャーズ”スタイルのチームを作ることに。
メンバーはティ・チャカ/ブラックパンサー、ハワード・スターク、ビル・フォスター/ブラック・ゴライアス、ペギー・カーター、ウェンディ・ローソン/マー・ベル、ハンク・ピム/アントマン、バッキー・バーンズ/ウィンターソルジャー、ソー。シーズン2の予告にも登場する遊園地にいる特殊能力を持った少年は幼い頃のピーター・クイルだった。父・エゴから授かったその能力はすさまじく、スーパーヒーローたちも簡単には制圧できない…。
「ホワット・イフ…?」シーズン2のキービジュアルではウォッチャーやトニー・スタークらがサンタコスをしていることからも分かるが、第3話「もしも…ハッピー・ホーガンがクリスマスを救ったら?」のように、“クリスマス”を意識した回も登場。マーベル・スタジオからのクリスマスプレゼントだと思って、“もしも…クリスマスに時間があれば”この世界の物語に浸ってみると楽しい夜になるかもしれない。
「ホワット・イフ…?」は、ディズニープラスで独占配信中。
◆文=田中隆信
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