【漫画】子を持てない遊女が大切に飼っていた猫…切なくも心温まるストーリーに「涙腺崩壊しました」「人の温かみを感じる」

2024/01/20 09:00 配信

芸能一般 インタビュー コミック

愛くるしい「こまり」のずぶ濡れ姿画像提供/安達智さん

コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回紹介するのは、安達智さんの漫画『子供が欲しかった遊女の話です』だ。

同作は安達さんの著作である『あおのたつき』(‎マンガボックス)に収録されている物語。2023年11月20日に安達さんがX(旧Twitter)に投稿したところ、6.8万件の「いいね」が寄せられている。本記事では作者の安達さんにインタビューをおこない、創作のきっかけやこだわった点などについて語ってもらった。

子供が欲しかった遊女が我が子のように可愛がっていた猫

『子供が欲しかった遊女の話です』(1/57)画像提供/安達智さん

浮世と冥土の「はざま」に存在する世界。ここにたどり着いた魂は、生前の想いに囚われた姿をしている。主人公の「あお」はこの世界で、わだかまりを抱えて死んだ者が悪霊化しないよう魂を守り、導く手伝いをしている。

ある日、あおのもとへやってきたのは、子供の人形の姿をした魂だった。幼くして亡くなったからなのか、「カカニアウ」と、たどたどしく望みを話す人形。あおは人形をカカ(母親)に会わせるため、浮世へ渡ることになる。

遊女屋で人形の母親を探すも、なんだか人形の様子がおかしい。一般の遊女は子供を持てないはずなのに、人形は子供を持つことが許される上級遊女らがいる部屋に向かう素振りを見せない。あおが訝しんでいると、人形は4つ足で走り出し、なんと猫に姿を変える。

実は人形は子供の霊ではなく、遊女「玉鶴」を母親と慕う猫「こまり」の霊だったのだ。子供が欲しかったが、とても望めない一般の遊女である玉鶴は禿(かむろ/遊女の見習い)の「こうめ」と共に、拾った子猫を我が子のように可愛がっていたのであった。こまりの死を悲しみ涙を流す玉鶴とこうめ。こまりの霊は2人のそばで「ずっと一緒」と鳴き続け…。

読者からは、「こまりはかかの子…で涙腺崩壊しました」「本当に大好きなお話。読むたび泣きたくなる」など好評の声が寄せられていた。

作者・安達智「作品を読んで『品がある』と言ってもらえるように」

『子供が欲しかった遊女の話です』(27/57)画像提供/安達智さん

――『子供が欲しかった遊女の話です』を創作したきっかけや理由があればお教えください。

資料を眺めていて、張り見世の遊女が退屈凌ぎに向かいの赤ちゃんを持ってこさせて抱くが、可愛いがるものの勝手がわからずおしっこを引っ掛けられて大騒ぎする、という話に目が止まりました。

商売のために堕ろさなければいけない身の上なためか、女性の本能的なものかわかりませんが、子を持つことや子を持てる人生に憧れを抱く遊女もいたことだろうな、と思ったのが創作のきっかけでした。

――描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあれば教えてください。

人間の子供と思わせてそうではなく、本当に見世の子かわからない、「お前は誰だ?」のミステリー展開は、担当さんのアイデアでまとまりました。結果、先が読めないわくわくから読者さんを物語に引き込む流れができたのではないかなと思いました。

――特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共に教えてください。

最後、2人と1匹がまた一緒になれた場面が好きです。

――作中に登場する遊女や家屋、家具などが丁寧に描き込まれていると思ったのですが、描く際に参考にした資料などがあったのでしょうか?

三谷一馬先生の『江戸吉原図聚』(立風書房ほか)を愛読させていただいています。

――特に黒猫のこまりが濡れている描写が可愛くて好きなのですが、犬や猫を描く際に意識していることはありますか?

犬は一緒に暮らしているのでモデルがいますが、猫はわからないので、猫を飼っている担当さんに表情や感情の質問をさせてもらいました。

――今後の展望や目標をお教えください。

最初は漫画を続けていくために、暴力や性を売りにしたエンタメを描くことが結果に繋がると思っていました。しかし実際はそうではなく、連載を続けていくうちに読者さんから江戸の風俗や建築や建築、廓言葉や、ここにしかない慣習など文化的なものに興味を持ってくださり、「そういったものがもっと見たい」とご意見をいただくようになりました。

作品の構成が少しずつ変わってきたのはそれからです。結果、作品を読んで「品がある」と言ってもらえるようになりました。

ひとえに読者さんと一緒に作品を作ってきた結果であると感じます。作品づくりの方向性は散々迷いましたが、この形が最適解だと答えに辿り着いた気持ちでいますので、これからも読者さんと楽しく創作できたら嬉しいです。