“人と会話をしたい”と思わせてくれた『あぁ、だから一人はいやなんだ。』/佐藤日向の#砂糖図書館

2024/01/20 20:00 配信

アニメ 連載

いとうあさこのエッセイ、『あぁ、だから一人はいやなんだ。』から感じた言葉を綴った佐藤日向※提供写真

声優としてTVアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』などに出演、さらに映像作品や舞台俳優としても幅広く活躍する佐藤日向さん。お芝居や歌の表現とストイックに向き合う彼女を支えているのは、たくさんの本から受け取ってきた言葉の力。「佐藤日向の#砂糖図書館」が、新たな本との出会いをお届けします。


書評の連載を書かせていただけるようになったのをきっかけに、エッセイを読むようになった。

今思い返せば、以前の私は読む本のジャンルがかなり偏っていた。
当時担当してくださっていた方に「エッセイも読んでみましょう」と言ってもらえたおかげで、エッセイの魅力に気づき、かなりの頻度で手に取るようになれたことが私にとって1番大きな変化だと思う。

私が最後に紹介するのはいとうあさこさんの「あぁ、だから一人はいやなんだ。」というエッセイ作品だ。

本作は芸人のいとうあさこさんのこれまでのちょっとした日常や1人での過ごし方と仲のいい人との過ごし方をお酒のエピソードも交えながらクスッと笑える言葉たちで綴られている。私がエッセイを楽しめるようになったきっかけ全てが詰まっている作品だった。

物語を読むことが好きだった私にとって、エッセイというのは未知で、誰かのリアルを本で読むことになんとなく抵抗があった。

いざ読んでみると、自分の中にある言語化できないモヤモヤとした感情たちを文字で説明されているのではないかと錯覚するくらいの共感が詰まっていたり、人前ではきっと話さない自分の中に秘めたものが書き綴られていて、人とコミュニケーションをとることが苦手だった私にはかなり衝撃的だった。

エッセイを読み始めたのをきっかけに相手がどう思っているのか、普段どんな言葉を紡ぐ人なのだろうか、そんな興味が湧くようになり人と会話をしたいと思えるようになれた。

本作ではいとうあさこさんが「一人はいや」とタイトルで言いつつ、一人でも楽しんでいる姿があったり、芸人の大久保佳代子さんが犬を飼い始めた時の幸せな気持ちを文章でお裾分けしてくれたり、私が誰かとコミュニケーションを取る時に聞いてみたい話がてんこ盛りな、読んでいて心が充実する言葉たちだった。芸人さんだからこそ、言葉が常に身近にあるお仕事で見つけた気持ちだったり表現がダイレクトに描かれていて感覚的には友達が更新したブログを読んでいるかのような親しみやすさが作中に広がっていた。

色々な経験をする選択をするのも自分だし、好きなことを極めるためだけに時間を使うことを選ぶのも結局は自分だ。

だからこそそれぞれに違う人生が広がっていて、挑戦するからこそ転びやすい道を自分の経験と学びから歩きやすい道に舗装していくものだと思う。

私にとって文字を覚える、読む、演じる、ではなく書くことは新しい選択で初めの頃はかなり苦戦をしていた。

苦戦したからこそ、その中で出会った作品や言葉、表現はこれからも私の人生のそばにいてくれる。これまで読んでくれた方に、どれか一つでも私の言葉が残っていたらいいなと思う。

関連人物