【コラム】美しさだけでない、台湾作品におけるドラマの魅力を引き出す映像美とは

2024/03/07 20:30 配信

ドラマ 映画 コラム

「HIStory」シリーズ「永遠の1位」より

日本でもBL系ドラマが数多く制作されるようになり、胸をときめかせてくれる作品が多くファンも急増している。今、注目が高まっている台湾ドラマにも良作は豊富にあり、本記事ではBL系ドラマファンにおすすめしたい台湾BLを3作品紹介する。本記事では体を売って生きる青年にスポットを当てた「マネーボーイズ」、多彩な展開を誇る「HIStory」シリーズ、台湾の映画賞で評価された感動のヒューマンドラマ「親愛なる君へ」を取り上げ、台湾ドラマの魅力について考察する。

万年2位の秀才が奮闘する「永遠の1位」

「HIStory」シリーズ「永遠の1位」より


「HIStory」シリーズのスタッフが集結し、スポーツも成績も1位の英才と、彼のせいで万年2位の屈辱を味わい続けた秀才との恋愛を描いたラブストーリー。英才であるシードーを演じるのは台湾のボーイズグループSpeXialの元メンバーであるリン・ズーホン、秀才のシューイーは「何曜日に生まれたの」にも出演しているYUが演じている。

大学4年生で水泳部のエースであるシューイーは、新入生歓迎の水泳大会で優勝し、幼なじみのユーシンに告白する計画を立てる。しかし、幼い頃から1位の座をさらっていたシードーが現れ、驚いたシューイーはプールに落ち、計画は台無しに。小学校から高校まで勉強でも何でも、シューイーの前には必ずシードーという存在があった。大学に入学してやっと離れられたと思ったのに、大学2年の時にシードーが転入してきて、シューイーにまた「万年2位」の悪夢が蘇る…という物語が繰り広げられる。

オープニングにも登場する水中のシーンに注目してほしい。青く澄んだ水の中が美しく、まるで別世界の異次元のように感じられる。本ドラマにはコミカルなシーンや演出も少なくないが、水中のシーンはとてもロマンチック。身体の動きは必然的にスローモーになり、髪の毛の動きひとつにしてもエレガントで、無数に散らばった泡がキラキラと輝いてムードたっぷり。そして、なんといっても、外の喧騒が遮断されてこの世界に2人だけしかいないような錯覚に陥らせ、胸をときめかせてくれるのだ。

老婆を手に掛けた主人公の真意とは…?「親愛なる君へ」

「親愛なる君へ」より


本作は亡き同性パートナーの家族を支える青年・ジエンイーの姿を通して、血の繋がりを越えた家族の絆を紡いだ感動のヒューマンドラマ。ジエンイーを演じた「一年之初」のモー・ズーイーと、ジエンイーの亡きパートナーの母・シウユーを演じた演技派女優のチェン・シューファンがそれぞれ第57回金馬奨において最優秀主演男優賞と最優秀助演女優賞を受賞し、最優秀オリジナル音楽賞も獲得している。

年老いたシウユーの介護と、その孫のヨウユーの世話をひとりでこなしている青年ジエンイー。彼女たちと血のつながりはなく、ただの間借り人だったが、ジエンイーは亡き同性パートナーの家族である2人の面倒を見ることで、彼への弔いになると思っていたのだった。しかし、ある日、シウユーが急死し、その死因を巡ってジエンイーに疑惑の目が向けられることに。警察の捜査によって不利な証拠も見つかり、最終的にジエンイーは自ら罪を認めてしまう。だが、そこには、愛する家族を守りたいというジエンイーの思いが込められていた。

ドラマの舞台は美しいとは言い難い生活感あふれるジエンイーたちの家が中心だが、過去の回想場面で登場する山のシーンのが非常に美しい。ジエンイーとパートナーが登山をし、緑の大自然が広がって霧が立ち込めて神秘的なビジュアルが広がる。ミステリー仕立てのドラマとなっており、この霧がまるで真実の隠されている状況を表しているようで、美しさと心理的な効果をもたらしている。