【コラム】美しさだけでない、台湾作品におけるドラマの魅力を引き出す映像美とは

2024/03/07 20:30 配信

ドラマ 映画 コラム

体を売って生きる青年にスポットを当てた「マネーボーイズ」

「マネーボーイズ」より


新鋭C・B・イー監督による長編デビュー作。家族のために自らの体を売って生きる青年にスポットを当て彼と彼を取り巻く人々を描いている。刹那的に日々を送る主人公の生き様や保守的な家族たちとの軋轢を追い、現代を生きる若者たちの漠然とした不安感をあぶり出す。

恋人のシャオレイと同棲しながら、体を売って田舎の両親に仕送りを続けているフェイ。田舎の家族はフェイをあてにしながらも、彼が同性愛者であることは一族の恥として受け入れなかった。ある日、フェイが客から暴行を受けたことを知った恋人のシャオレイは、その男を叩きのめすのだったが——というあらすじが展開する。

作品全編、C・B・イー監督の独特の感性による映像美で彩られた本作。風光明媚な地方からモダニズム建築が映える都会まで、さらには泥の中の乱闘でさえも魅力的な映像で見るものを惹きつける。また、美しさだけでなく、天井の低い画角は圧迫感があってこちらも息苦しく感じられ、長回しを多用したカットは臨場感に溢れており、没入感を与えてくれる。

ただ美しいだけでなく、ドラマの魅力を引き出す映像美


今回紹介した3本はコミカルなラブストーリーもあれば社会問題を盛り込んだシリアスなドラマもあるが、どの作品も映像が美しいことは共通している。その美しい映像が作品の核となる部分と呼応する。「永遠の1位」は胸の高鳴りを、「親愛なる君へ」はミステリー要素を、「マネーボーイズ」は登場人物の生きづらさをそれぞれ映像でも感じさせる。

ただ美しいだけでなく、映像美がさらなるドラマの魅力を引き出しているポイントに注目して鑑賞してみてはいかがだろうか。

◆構成・文=牧島史佳