「観覧車は恋人たちのもの」――。このせりふにハッとする。それは冒頭の描写にあったからだ。
8年前の雨が就職のため上京する前週。太陽に買い物に付き合ってもらった雨は観覧車に乗りたいと思うが、太陽に「観覧車って退屈じゃない? ほら、ぐるぐる回ってるだけで楽しくないじゃん。それに恋人たちのものって感じだし、俺には関係ないっていうかさ」と返され、「それもそうだね、私たちには無関係だよね」と少し残念そうに言っていたのだ。
そんな思い出のある観覧車。雨のつらい気持ちを知る司は、「未来に後悔を残すべきじゃない」と乗るように促し、自分は先に帰ることにした。
すっかり日が暮れ、太陽は雨を少し待たせて買ってきたマーガレットの花束を差し出しながら観覧車に一緒に乗ってほしいとあらためて頼んだ。そこで雨はマーガレットの花びらで「乗る、乗らない」と占いをして乗ることに。
すると、観覧車の中で、8年前の太陽の言葉の真意が明らかになる。太陽は高所恐怖症で怖かったのだ。それを聞いて笑ってしまう雨。それでも悲しい決断は揺らがないが、「司さんのどこが好き?」と聞かれて答えた「特別扱いしてくれるところ」から始まる好きなところはすべて太陽のことだった。高さに恐がる太陽に目をつぶってていいよと言った雨は、届かないことを承知の上で最後に「大好き」と小さくつぶやいた。
観覧車、そしてマーガレットも8年前に卒業祝いとして太陽にプレゼントしてもらった思い出だ。選んだマーガレットは香りがいい品種で、太陽は「この花の匂いを雨ちゃんと俺の思い出の香りにしない?」と言っていた。8年後、その香りを雨はもう感じることができない。
答え合わせのように8年前の出来事と現在の出来事が重なっていく。その様子は涙なしでは見られなかった。まだ何も知らない太陽の涙も胸に迫る。
そして、実はマーガレットの花びらはほとんど奇数で、占いで最初の言葉が最後にくるのだが、今回は偶数だった。その“奇跡”に幸せを感じる雨に、いっそう切なくなった。
◆文=ザテレビジョンドラマ部
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