福山雅治が、神奈川県・Kアリーナ横浜にて、2023年の年末から6日間にわたり「福山 冬の大感謝祭 其の二十一 “LIVE A LIVE”」を開催。2024年1月1日にファイナルを迎えた。
コロナ禍を経て、ファンとの再会を果たした2022年の「福山☆冬の大感謝祭 其の二十」は、“GET BACK”と名付けて実施。今回は声出し解禁となって初、本当の意味で“生きた”大感謝祭が帰って来た。
元日の昼4時10分頃、石川県を震源とするマグニチュード7.6の地震が発生し、震度7の揺れを観測した。開演時刻の昼5時を10分ほど経過した頃、上下黒のウェアに身を包んだ福山が登壇、自ら状況説明を行う異例の事態となった。
Kアリーナ横浜の会場自体の点検は終わり安全であること、しかし、エンターテインメントを楽しむには安心安全が必須であり、昼5時30分頃まで開催可否等の判断を待ってほしいこと。その姿からは、2万人の観客一人一人に真摯に向き合おうとする福山の思いが伝わってきた。
昼5時30分を少し過ぎると影アナに続いてSEが流れ、ライブは幕を開けた。まばゆいライトの中心に真っ赤なスーツで福山が登場した瞬間、ファンのすさまじい歓声が沸き起こる。そこに立っていたのは、30分前とはまるで別人のオーラを放つ華々しいエンターテイナーだった。
1曲目の「光」はコロナ禍の初期、ライブ開催がままならなかった時期に、オーディエンスとの再会を願って生み出された曲。四つ打ちの軽やかなエレクトロ・ビートに乗せ、自問自答する心の声をつづったような内省的な歌はやがて、エモーショナルにたかぶりを見せていく。
手拍子とコーラスで2万人のファンが曲に参加し、想いを分かち合うことで、密やかな独白は強靭なアンセムへと生まれ変わった。まるで希望の光を具現化するかのような圧巻の照明が、広大なステージを、そして会場全体を包み込む。
誕生した当初は未発表の新曲としてライブ会場でだけ披露し、暗闇の中でともすランプのようにして、ファンと共に育んできたこの曲。コロナ禍の長いトンネルをようやく抜けた今、「光」はついに完成形となった。
会場の規模が大きくなれば、客席と距離が遠ざかるのは致し方ないことだが、アリーナに巡らせた回廊のような花道を行き来することで、360度全方位から注がれるファンの視線をしっかりと受け止める福山。誰もが知るポップアイコンとしての明朗な笑顔は非の打ちどころがなく、隙もない。
その一方で、例えば「Cherry」では、まるで恋人を愛おしむようにギターに触れながら演奏に没入し、恍惚とした笑みをこぼすフェティッシュな一面も覗かせる。ギターへの情熱と音楽愛を象徴し、ライブロゴのモチーフともなっている曲で、リア、センターポジション、フィンガーボードといったパーツの名称すら、官能的な響きを帯びて聴こえた。
「叫んだっていいんですよ、横浜!」とあおり、「いろんな気持ちがあって、それを声に乗せて届けていいと思う」と観客に語り掛けた福山。喜びも悲しみも、あらゆる感情を受容するライブ空間の意義、エンターテインメントの必要性と使命を、奇しくもこの公演では強く意識させられることとなった。