自ら生贄となり、紫を救いたいというひまりの決意は固く、葵も無茶はしないという約束で許可する。翌日、泉に立つひまり。鵺に変身した葵がひまりを生贄として捧げる儀式を始めると、泉の中から祟り神となった龍神が飛び出してくる。
どうやら穢れの元凶は泉の守り神である龍神自身だったよう。ひまりは泉に飲み込まれ、駆けつけた紫が助けに入るのだった。2人の意識が泉の中で溶け合い、紫の記憶がひまりの脳内へ流れ込む。
幼い頃、時の帝を殺す暗殺者として育てられた紫。結果的に帝は別の者たちに殺められたが、その者たちに紫も命を狙われ、全員を返り討ちにした。そのことで人喰いと人々に恐れられるようになった紫は帝暗殺の罪を背負わされ、龍神に生贄として捧げられることとなる。
「そのことに、怒りや悲しみも後悔もない」という紫の台詞が印象的だ。紫にはどこか自分に見切りをつけている節がある。龍神がそんな紫を水蛇へと生まれ変わらせ、百千家に行けと命令したのは紫が寂しそうだったからではないかとひまりは言う。龍神が紫と会おうとしなかったのも理由があるはずだと。
その後、ひまりは龍神の体に呪札が貼られていることに気づく。その呪札を外したことをきっかけに、龍神はようやく元の姿に戻り、言葉を交わすことができるように。
そこで明らかになる龍神の本当の思い。ひまりが言った通り、龍神が紫に百千家に行くよう命令したのは紫の孤独を癒すためだった。その上で心が優しい紫が迷わぬよう、姿を見せないようにしていたという龍神。だが、龍神の方が孤独に負けてしまい、自らに害をなそうとする者にさえ気づけなかったという。
心を取り戻した龍神によって穢れた泉はみるみるうちに澄み渡っていく。「またこちらの滝へ巡っていらっしゃる時はお声を聞かせてください」と紫が声をかけると、龍神の目からは涙が溢れた。
人間にもあやかしにも心がある。その心を閉ざしたとしても孤独は隠れただけでなくなるわけではない。だから心を失わず、他者との繋がりを持って満たし続ける。その大切さを教えてくれた紫と龍神のエピソードでは、映像の美しさと劇伴の荘重さが際立った。
放送後、視聴者から「紫さんもひまりちゃんも無事でよかった」「みんなが家族のことをすごく大事にして自分のことを犠牲にしてでもって感じがとても良いなあ」「自ら龍神様の生け贄になるひまりの度胸よ。紫と龍神様の対話の架け橋になってて今回も見事な活躍」といった感想が挙がった第6話。危険をおかしたひまりに、「あとでたっぷりお仕置きだ」と鵺が“顎クイ”する胸キュンシーンも反響を呼んだ。様々なトラブルに見舞われる日々の中で、どんどん深まっていくひまりと葵の関係からも見逃せない。
■文/苫とり子
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