何でもテレビになる『くりぃむナンタラ』/テレビお久しぶり#87

2024/02/16 19:00 配信

バラエティー コラム 連載

「テレビお久しぶり」(C)犬のかがやき

長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は『くりぃむナンタラ』(毎週水曜夜11:45-、テレビ朝日系)をチョイス。

何でもテレビになる『くりぃむナンタラ』


当たり前の話だが、テレビ番組の画面の中では、必ず何かが行われている。コミュニケーションが行われ、レクリエーションが行われ、プロモーションが行われている。何も行われていない番組など存在しない。問題は、何を行うのか、なのであり、テレビ関係者たちは、一体何を行えばよいものか、と頭を悩ませているのだろう。もし私だったら、毎週毎週もうやることなんかないよ、企画なんて無限にあるわけじゃないんだぞ、もうさ、サイとか飼ってずっと映しとこうよ。なんて言い出すに違いない。だから『行列のできる法律相談所』が『行列のできる相談所』に新陳代謝されるのもごく自然な流れであると言えるし、『ケンミンショー』が16年以上もテーマを変えぬまま続いているのは異常だとも言える。だって、都道府県は47個しか無いのである。もちろん県民性や地域性といったものは、たかが47個に分類できるようなモノではないだろう。しかし、毎週、16年以上もそれをエンターテインメントとしてやってのけるのは端的に凄い。凄すぎる。

そんなことを思う中、出先のビジネスホテルで『くりぃむナンタラ』を見て驚いた。物干し竿を壁にぶつけないように運ぶという遊びに白熱していたからである。それもごく普通の民家の中で、壁に当たったという判定もスタッフの目視によって行われる。ほとんどテクノロジーが存在しない、私でも今すぐにできそうな遊びがテレビに映し出されていることが新鮮で、思わず見入ってしまった。何でもテレビにはなるものだ。そこに達者な演者がいればなお良い。赤チームの有田哲平日向坂46齊藤京子ロングコートダディ、青チームの上田晋也日向坂46森本茉莉ネルソンズ和田まんじゅう、という布陣、6人とも感情表現豊かで発言も多いので、これだけシンプルな遊びでもどんどん白熱していく。何をするにしても、盛り上がるかどうかは面子次第。これはテレビでも飲み会でも同じ事なのだろう。

2回戦目は、階段からピンポン玉を落とし、それぞれ得点の割り振られた器に入れるという遊び。こちらも途中でルール改定などが行われ、まあ盛り上がる、盛り上がる。フレンドパークだってこんなに盛り上がってたっけ?というくらい、皆(というかくりぃむしちゅーのふたりが)遊びをやめたくなさそうなのだ。この、遊びをやめたくない、という様子が、芸能人から感じ取れたりすると、一気にうれしくなる。というのも、テレビで見る芸能人たちは、皆クールであるというか、(大人だし仕事なのだから当然なのだが)引き際をきっちりわきまえていて、美味しいものを食べて「美味しい」と言っても、本当に美味しいと思っているのか、いや、思ってはいるのだろうけども、じゃあもう一口、二口、とまではいかない、そういった壁があるように見えて、もし私ならばタッパーに入れてヨダレを垂らしながら四足で走って帰ると思うと、やはり芸能人というのは根が違うなと打ちのめされるのだけども、この番組のくりぃむしちゅーは、周りの制止を振り切ってまで遊びにかまけていて、本当にやりたくて仕方がないのだろう。心から楽しそうな人を見ると当然、こちらも楽しくなる。ということは、今、テレビ番組で何を行えばいいのかがハッキリした。階段からピンポン玉を落とせばよいのだ。