「誰も見たことのない “ありえない状況”だった」 オーガナイザーU-KIが語る“WDC”

2017/08/16 18:00 配信

芸能一般 インタビュー

“日本発”のストリートダンスの世界大会として、世界中のダンサーが注目し、世界のダンスシーンにおいて“SUPER”な地位に君臨している2on2のバトルイベント「WDC」(WORLD DANCE COLOSSEUM)」が今年も開催される。大会開催に先駆け、オーガナイザーのU-KI氏が「WDC」の歴史と理念、そして今年の見どころを語る。

U-KI


“同じ夢を持つ人”が出てきて、構想がどんどんと膨らんでいった!


——今年も「WDC2017」の開催が迫ってきましたが、そもそもWDC(WORLD DANCE COLOSSEUM)を始めたきっかけは?

「2003年頃ですね。まずは、2002年から『LOCKダンサーが主役になるEVENTを!』というコンセプトで“SOUL STREET”というショーケースイベントをやっていて、その対極として当時まだほとんど無かったバトルイベントを始めてみたんです。スタートから火がついて一気に盛り上がっていった記憶があります。」

——イベントのタイトルも最初からWDC?

「当時は“SUPER FRIDAY”というイベント名でした。その名の通り奇数月の第二金曜日に開催していて、初期の頃には、HIDARI 左の(野口)量や、KENZO(DA PUMP)等が参加してくれていましたね。“SUPER FRIDAY”はWDCとは別にワンナイトトーナメント形式のイベントとして残しています。今ではロックダンスの登竜門的なイベントになっています。」

——では、いつ頃からWDCという名前で?

「“SUPER FRIDAY”を開催していくうちに、スタッフの間で、『これを世界大会にしたらどうだろう?』『バトルイベントの世界大会って面白いよね?』のような“たくさんの声”や“同じ夢を持つ人”が出てきて、構想がどんどんと膨らんでいったんです。その流れに乗って2006年に“SUPER FRIDAY”の年間の総集編として第1回目のWDCを開催しました」

——最初にWDCを開催した時はいかがでした?

「第1回目はTOKYO DOME CITY HALLで開催しました。何しろ日本で初めての世界大会という試みでしたので、陰では色々と苦労や失敗がありました。でも結果的には成功だったと思います。当時のダンスシーンの中でWDCは凄く注目されました。既存のイベントでも外国人ダンサーが参加するイベントが若干はありましたが、1、2名程度。一方WDCは約30名もの世界でトップクラスの外国人ダンサーが一気に参加して、まさにワールドワイドなお祭り状態になりました。それは当時とても画期的で、今まで日本のダンスシーンでは誰も見たことのない “ありえない状況”だったんです。あの日、現場にいる僕らはみんなとにかく楽しかった….“未来への手応え”をなによりも感じました。海外からダンサーが来日して、凄いスキルをもったダンサー達のダンスを日本のみんなに“ナマ”で見てもらうことが出来たわけですから。自分たちを育ててくれた日本のダンスシーンに対する恩返しを少しできた気がしました。どんなに大変でもこのイベントは『ずっと続けたい』という思いを強く感じました。」

——そこから現在へどうやって辿りついたのですか?

「1回目のイベントでの失敗や経験を活かし、2回目、3回目と繋げていきました。WDCのイベントのコンセプトは『ダンスに国境はない!』なんですけど、それを忠実に体現し、例えば情報の発信の仕方などのブランディングにもこだわったり。あとは、会場も2回目からは横浜BLITZ(現在は閉館)に移しました。今思えば、TOKYO DOME CITY HALLは当時の僕たちにとっては規模が大きすぎましたね(苦笑)。」

——WDCのレギュレーションはどのように?

「最初の頃は、“日本大会”と“WORLD FINAL”というタイトルで2回開催をしていました。地方予選をやって、そこで勝ち上がった人が“日本大会”に参加。そして、“WORLD FINAL”という流れでした。2、3年目位までの地方予選は、東京と大阪で開催。その後、東京、大阪、九州、東北、名古屋、北海道という感じで広がりました。」

——大会に参加するダンサーがどんどん増えていきましたね。

「はい、4、5年目頃から、色々な面で軌道に乗りました。何より『WDC』という名前のブランド力がどんどん強くなり、海外でも通用するようになったんです。それもあり、8回目(去年)から場所がZepp DiverCityに変わったんです。」

正直言うと…日本の10年位前の雰囲気ですかね


——WDCと10代(キッズ)ダンサーとの関わりかたはどのように見てきましたか?

「WDCがスタートした頃『KIDS SIDE』は色んな意味で成り立たなかったですね。そもそものパイ(参加者)が少なかったんです。当時もダンスをやっている子供はいましたが、大半は決められた踊り、決められた曲、決められた衣装で踊るという、ジャンルで言うと“ダンスショー”や“発表会”だったんです。ダンスバトルは、その上を行く『即興ダンス』ですから。ダンスをある程度自分のものに出来ないとバトルには出ることはできないですからね。」

——そこからシーンはどのように変わってきましたか?

「今は、キッズの方が熱いかもしれないですね。大人の地方予選は北海道、東北、関東、大阪、九州と5か所なんですど、キッズは北海道、東北、関東、北陸、北信越、名古屋、広島、福岡、鹿児島、沖縄と10か所ですからね(笑)。ホント凄いです! キッズのレベルは年々上がってきていますね」

——今一線で活躍しているダンサーで過去にWDCに出場した人は?

「それはもうたくさんいますよね! RUSH BALLのMAiKAとKYOKAはいつのまにかカリスマ的存在になっていますね。去年はMiaと風花が優勝していますし、Shigekix、IKKIも優勝していますしね。」

——今年からは予選で中国大会も開催されました。

「中国での予選は4か所で開催して、そこの各優勝者が、9月に日本で開催されるFINAL大会へ出場します。」

——中国のダンスシーンはいかがですか?

「日本の10年位前の雰囲気ですかね。正直言うと、まだ文化としてがっちりとは根付いていない気がします。僕らが20代の頃って、すでに40代の先輩たちがダンスシーンを支えていたんです。そういう先輩たちがいたから、僕たちはダンスに触れる機会をたくさん提供してもらいました。言うならば、ダンスがすごく身近にあったんです。それに比べると今の中国にはその『先輩』に該当するダンサーがいない。ちょうど今30歳位の人が先駆者なので、文化としてはまだまだ浅い感じがします。でも、キッズダンサーが急激に増えてきているので、今後が楽しみですよね。中国のダンスシーンでは、日本のキッズ達のダンス教育にすごく関心をもっているようです。」

U-KI


『今のこの熱量をそこで共有できるか?』と自分に問いかけました


——まさに世界基準となった「WDC」ですが、今後のビジョンは?

「変な言い方になるかもしれませんが、今のWDCに関してはある程度自分達の夢や想いは達成することが出来たと考えています。最初は『会場、規模をどんどん大きくしていこう』とか漠然と思っていたんですけど、会場に関してはある時に『会場を大きくする事が正しい答えなのか?』と立ち止まって考えてみたことがあるんです。例えば日本武道館や横浜アリーナなどの大きな会場でWDCを開催した時に『今のこの熱量をそこで共有できるか?』と自分に問いかけました。その時自分の中に浮かんだ熱量のイメージは、WDCのベースとなった“SUPER FRIDAY”で体感した“あの熱量”です。」

ーー熱量ですか?

「はい、僕自身が、本来のダンスのファンがダンスを観て感動出来るキャパっていうのが、“ナマで感じる”3000人位までの会場かなと思う気持ちがあり、今のコアなダンスファンを裏切りたくないという意味も含めて、“サイズ感”よりももっともっと“質の向上”を突き詰めて行きたいと考えています。規模に関しては“日本初”のWDCをこれからどんどん“日本発”のWDCとして世界中に広げていきたいと思っています。世界のダンスシーンを日本発のWDCで席巻したいですね! 世界進出の皮切りとして今年は中国本土の4カ所で予選を開催しました。ありがたい事に世界中から予選をやりたいというオファーが来ているので、彼らと共にダンスの可能性にチャレンジしていきたいです。」

——今年の「WDC」の見どころをお願いします。

「今年は近年メキメキと頭角を現してきた LEO&IKKIに注目しています。唯一日本人が勝つ事が難しかった“WDC HIPHOP SIDE”で去年BEST4という結果を残しているだけに凄く期待が持てますね。あれから1年経って、さらにスキルや経験値も上げてきてるし、本戦に向け気合を入れて挑んでくるでしょうからね。絶対優勝を狙ってると思います」

——来日するダンサーで注目のダンサーは?

「“JUSTE DEBOUT2017”覇者であるLOCKのVOVAN & FUNKY J・POPのMo’Higher(HOAN / JAYGEE) ですね。ここの2チームは世界覇者としてのプライドもあるでしょうし、やはり絶対に負けられないという気持ちで参戦してくると思うので、日本チームにとってはかなりの強敵になると思います! また毎年会場を沸かせるKIDS ALL STYLE SIDEも凄く楽しみですね。今回初開催の中国予選優勝者が日本のファイナリスト達とぶつかる図式になるんですが、中国優勝者が未知数すぎてワクワクが止まりません。9年目を迎えるWDCへ一人でも多くの方へ足を運んでいただき、世界に立ち向かう日本チームを応援していただきたいと思っています。そしてここ日本では絶対に味合うことのできない世界レベルの戦いを体感して欲しいと願ってます。」

WDCの模様


WDCの模様


WDCの模様


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