ストーリーも映像も美しいが、本作をメガヒット作に押し上げたいちばんの要因はやはり主演の2人にあるように思う。
Kを演じたリウ・イーハオは、えくぼのできる可愛い笑顔と優しくひたむきな眼差しで、「ぽかぽか男子」「台湾でもっとも萌える彼氏」などと呼ばれている。本作でもその本領を存分に発揮しているが、それだけにはとどまらない。監督のギャビン・リンは、リウ・イーハオを「笑顔のなかにも悲しみを込められる役者」と評している。愛するクリームと他の男性との結婚を後押しすることや悪化していく病に苦しみながら、彼女の前で笑顔を見せる繊細な演技が涙を誘う。
また、クリームを演じたアイビー・チェンは、拗ねたり笑ったりびっくり箱のようにクルクルと表情を変えながら、とびっきりキュートにクリームを演じた。また、彼女の泣きの演技は素晴らしいと共演者も絶賛している通り、泣き顔がとても自然で、演技っぽさや嘘くささを感じない。演じているときに「その人物はこの社会に本当に存在していて、出来事も今、実際に起きているんだと信じる」ことができれば、演技で泣くことはさほど難しくないとアイビー・チェンはいう。撮影現場では、わずか3秒で涙を流すという離れワザを100回以上も行い、監督や共演者を驚愕させたそうだ。
2人はKとクリームとして、作品のなかで何とも自然に存在している。他愛ない、だけれどもお互いにとって宝物のような日々を積み重ねてきたことが感じられる2人のあたたかな空気感が、物語をより美しく、切ないものにしているのだ。
とにかく泣けるという触れ込みの通り、途中から涙が止まらなくなった。孤独な2人が見つけたささやかだけれどもあたたかな暮らし、不治の病と余命宣告、相手の幸せを願って身を引く無償の愛という、よく見るベタなストーリー展開ではある。
Kの行動は身勝手な自己満足と断じることもできるし、クリームの結婚相手がいちばんかわいそうなのでは…などツッコミどころも多い。だが、Kとクリームのお互いを想う愛情の深さが痛いほど伝わってきて、細かいことは置いておいてただただ泣けるのだ。
終盤に向けて1つ大きな仕掛けはあるものの、本作は総じてとてもストレートな物語といえる。「台湾映画の傾向としては……」などと難しいことを考えず、見る側もストレートに物語を受け止めて、Kとクリームの愛が放つ唯一無二の輝きに思う存分涙を流してほしい。
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)