――今回の講演会企画を引き受けられた経緯を教えてください。
お笑い界って自由に見えて、実はすごく排他的な村なんです。例えば、キングコングの西野(亮廣)も1年くらい前は、「あいつ、頭がおかしくなったんちゃうか!?」と芸人たちにめちゃくちゃ悪口を言われていたんですよ。
でも、西野のやり方が世の中で認められ出した今は、「西野はOKね」と言い出しているんです。売れてない芸人ほど、自分が開拓者になるのを恐れて、ただのジャッジマンみたいになってしまっているんですよね。
この現状に僕はずっと悶々としていて、「今のお笑い界は1個の価値観しかないぞ」と言いたかったんです。そんなときに今回の企画をいただいたので。
もちろん、葛藤はありました。僕みたいにまだ中途半端な芸人が、“自分のお笑い”について語るのはどうかな…とも思うし、この講演会をテレビのショー的に仕上げるなら意味がないな、と。でも、“王様の耳はロバの耳”的な感じで本音を叫ばせてもらえるのであれば、これはチャンスだと思って、引き受けさせていただきました。
後輩に言う感じで、売れている先輩方にもチクッと言えたら…という思いもありましたね(笑)。そんなこともあって、講演会の前にあえてビールをちょっと飲んで(笑)、“ポロリ”が出やすいようにしました。あの講演会で言ったことはすべて本音です!
――講演会ではアメリカ進出宣言もされました。決断のきっかけはなんだったんですか?
僕、原発の街の出身なんですよ。それで、ある番組で原発のネタをやりたいと言ったんですけど、番組側から「賛成、反対というのは絶対に言わないでくれ」と要請されて…。それをアメリカ人の友達に話したら、「え!? アメリカのコメディアンはみんな、当たり前のように自分の主張をするよ」と驚かれたんです。
だったら、「日本のテレビはやりにくい」なんて文句だけ言ってやり過ごすんじゃなく、それをOKとする場所へ行って、自分のネタで主義主張を唱えてみたいと思ったんですよ。
――その思いに対する周囲の反応は?
周りの芸人からは、「お前、綾部(祐二)か!?」と。でも、それって言いたいだけなんです。「東京に行ったらオモロなくなる」と言って東京に行かない大阪の芸人や、「文化や言葉も違うし…」と言って海外に出ない東京の芸人と同じ。
自分が行く勇気のない場所に対して、めっちゃ言い訳を作るんですよ。それが芸人なんです。だいたい文化の違いとか、食の違いとか言いますけど、とんこつラーメンみたいに文化を超えて流行るものは流行るんですよ。でも、芸人は貧乏になることや体裁を保てなくなることを恐れて、そこに挑戦しないんです。
――今回の講演会では後輩たちを前に、熱い思いを赤裸々に語ってくださいましたが、もし次に講演会をするとしたら、誰の前でやりたいですか?
講演会はもういいです(笑)。家に帰った後、なんかすごく恥ずかしくなったんで…。ただ、今回の講演会に対して、スタジオでバカリズムさんやカンニング竹山さんが発言しているVTRを見て、「僕が物申す会」は欲しいです! 売れている先輩方に対しても、尊敬の念があるからこそ、「もっと勝負して、文化レベルを引き上げてくれたらいいのに…」とか、いろいろ思うところがあるんでね。
――今回の放送を見た視聴者の中には、「何を言っているんだ、村本!」と食ってかかってくる人もいるかと思います。そんな方々に向けて、一言お願いします。
どんな意見も受け止める覚悟はあります。僕の発言に対しては賛否両論があるだろうし、僕の悪口を言う人も出てくると思うんですよ。ただ、「Time is money」という言葉があるじゃないですか。
僕の発言に対して議論を巻き起こした時点で、その人たちは僕のために時間=金を使っているわけです。もしかしたら明日死ぬかもしれない…、そういう限りある時間を僕のために使ってくれた時点で、僕の勝ちやなと思います。
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