それぞれ長い歴史をもつふたりのヒーローだけに、これまで数多くの映像作品が発表されている。今回はそのなかから映画作品に焦点を絞り、その歴史を振り返っていこう。DCヒーローのなかで最初に映画化されたのは、やはりスーパーマン。今回の「DCヒーロー特集」にもラインナップされている『スーパーマン』(1978年公開)は、すべてのヒーロー映画の原点とも言うべき作品。これまで子供がターゲットだったヒーローを、全世代で楽しめる作品にするべく、脚本に『ゴッドファーザー』(1972年)のマリオ・プーゾ、監督に『オーメン』(1976年)のリチャード・ドナーを起用し、マーロン・ブランドとジーン・ハックマンという2人のオスカー俳優も出演させるなどして、アクション&スペクタクル満載のエンタメ大作として制作。スーパーマンの飛行シーンや怪力シーンなど、当時最高峰のVFXを駆使しており、特撮っぽさを感じさせない映像も人気が出た理由だっただろう。またスーパーマンを演じたクリストファー・リーヴもハマり役で、記者としてのやや頼りない表情から、メガネを外してスーパーマンに変身したときのカッコ良さは異常で、ヒーロー作品の醍醐味を世界中に知らしめた傑作だ。この成功がなければ以降のヒーロー映画の隆盛もなかったかもしれないことを考えると、本作が果たした功績はとても大きい。その後、リーヴ版のスーパーマンシリーズは『スーパーマンII 冒険編』(1980年)、『スーパーマンIII 電子の要塞』(1983年)、『スーパーマンIV 最強の敵』(1987年)と続き、ヒーロー映画として不動の地位を築くに至る。これらはまとめて初期4部作と呼ぶことが多く、今もなお金字塔として映画史に燦然と輝いている。アクションがさらに強化され、ストーリーも変化に飛んだ2作目、コメディを全面に打ち出した異色作の3作目、核兵器の根絶という平和へのメッセージ性を打ち出した4作目と、それぞれに異なる魅力が堪能できるのも楽しい。ムービープラスの「DCヒーロー特集」では、この初期4部作の字幕版と吹替版がどちらも放送されるので、ぜひ好きなほうでチェックしてほしい。スーパーマン映画としては、このあとも『スーパーマン リターンズ』(2006年)や『マン・オブ・スティール』(2013年)などがあるが、初期4部作を観ておけばまず問題ないだろう。
バットマン映画の歴史については、スーパーマンよりもやや複雑だ。そもそもDCヒーロー映画は、監督によって作品のカラーがガラリと異なっているのが特徴で、それが魅力でもある。まず最初は、90年代に作られたティム・バートン&ジョエル・シュマッカーによる4部作。マイケル・キートン主演の『バットマン 』(1989年)を皮切りに『バットマン リターンズ』 (1992年)、『バットマン フォーエヴァー』(1995年)、『バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲』 (1997年)と続いたが、途中で監督やスタッフ、主演俳優が変わったため、一貫性があるのは第2作まで。ティム・バートンが監督を務めたこの2作では、バットマンを徹底して孤独な存在として描いており、ジャック・ニコルソン演じるジョーカーの強烈なビジュアルも手伝って、ダークファンタジー作品として強烈なインパクトを残した。さらに2000年代に入ると、クリストファー・ノーラン監督による、“通称ダークナイト3部作”と呼ばれるリブートシリーズが公開。シリーズ史上最高傑作と評されることも多い3部作だが、今回「DCヒーロー特集」で放送される『バットマン ビギンズ』(2005年)こそ、その記念すべき第1作目である。バットマンの誕生へと至る秘話を、ノーラン監督らしいリアリティ溢れる映像で描き出した本作は、バットマン映画の入門編としても大いにオススメできる。そしてダークナイト3部作以降、約10年ぶりに制作されたバットマン映画が『THE BATMAN-ザ・バットマン-』(2022年)だ。ダークナイト3部作で打ちだしたノワール路線は踏襲しつつ、バットマンとなって2年目の若き日のウェインの姿を描いている。サスペンスやミステリー、スリラー要素が強調されており、謎を解いてゆく探偵映画としても楽しめるのが特徴で、全世界興収830億円越えの大ヒットを記録。本作も「DCヒーロー特集」にラインナップされており、これがCS初放送となる。
いかがだっただろうか。世のため人のため、つねに人間の味方として悪を懲らしめてくれるスーパーマンと、トラウマと負の感情を抱えながら葛藤し続けるバットマン。85年以上にわたって世界のトップヒーローの座に君臨し続けるその理由を、ぜひ「DCヒーロー特集」を通じて感じて欲しい。なお今回の「DCヒーロー特集」にはDC映画史上No.1の興行成績(11.52億ドル)を記録した『アクアマン』も放送予定なので、合わせて楽しんではどうだろうか。
◆文/岡本大介
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