菅田将暉の“童心”、浜辺美波の“孤独”、役所広司の“親心”… “日本アカデミー賞”俳優たちの味わい深い演技に浸れる邦画3作品

2024/03/15 18:00 配信

映画 コラム

「ファミリア」役所広司の深みある演技が光る感動作

役所広司※2022年ザテレビジョン撮影


「銀河鉄道の父」では賢治の父・政次郎を演じ、渋谷の公衆トイレ清掃員を演じた主演映画「PERFECT DAYS」では「第47回日本アカデミー賞」最優秀主演俳優賞を獲得した日本映画界きっての名優・役所広司。そんな彼が切ない親心を演じたの映画「ファミリア」(2022年)も、現在Leminoで独占配信中だ。

同作は、国籍や文化、境遇を超えて家族になろうとする人々の姿を描いたヒューマン・ストーリー。役所は、妻を早くに亡くし陶器職人として山里で1人暮らしする男・神谷誠治を演じている。

プラントエンジニアとしてアルジェリアに赴任中の1人息子・学(吉沢亮)が、難民出身の女性ナディアと結婚するという。誠治は、彼女を連れて一時帰国した学と久しぶりの親子の時間を過ごす。一方、隣町の団地に住む在日ブラジル人マルコスは、誠治に亡き父の面影を重ね、焼き物の仕事に興味を持つ。そんなある日、アルジェリアに戻った学とナディアがある事件に巻き込まれる。

この作品で役所が演じているのは、自らは親の愛を知らずに育ち、不器用ながら息子の幸せを案じる寡黙な父親。実際に起きた事件などをヒントに描かれたオリジナル脚本をもとに、血のつながりある親子の絆だけでなく国籍も環境も違う人々とも絆を結んでいく主人公を、役所が丁寧に演じていく。息子のために涙を流し、ふたたび前を向く誠治。その姿は、人間の持つ強さを教えてくれている。

「銀河鉄道の父」の菅田将暉、「やがて海へと届く」の浜辺美波、そして「ファミリア」の役所広司。日本映画界を背負う実力派たちの深みある演技、この機会にじっくり堪能してみてはいかがだろうか。

ファミリア※2022年ザテレビジョン撮影


◆文/酒寄美智子