悪魔の血を引く少年・奥村燐(CV:岡本信彦)が、父親である魔神(サタン)を倒すために最強の“祓魔師(エクソシスト)”を目指す『青の祓魔師』のTVアニメ第3シーズン『島根啓明結社篇』(毎週土曜夜24:30-25:00ほか、TOKYO MXほか/U-NEXT・Hulu・dアニメストア・アニメ放題ほかで配信)。悪魔とのド派手なバトルが見どころのダークファンタジーながら、家族や友達との絆、葛藤や成長、青春コメディまで、少年漫画の醍醐味がギュッと詰まった大人気シリーズだ。つい先日最終話の放送が終わったばかりではあるが、さらなる続編「雪丿果篇」の制作が発表され、ファンの盛り上がりは最高潮に達している。そこで今回は、主人公の奥村燐を演じる岡本信彦さんのインタビューをお届け。猪突猛進でおバカな燐を演じ続ける苦労とは?
――『島根啓明結社篇』は約7年ぶりとなる新シリーズとなりました。
岡本信彦 最初は「本当にやれるんですか?」っていう驚きや喜びが大きかったんですけど、だんだんと「それも当然か」と思うようになりました。ジャンプフェスタに出演させていただくたびにファンの皆さんからすごい熱量を感じていましたし、僕自身も原作ファンのひとりとして『青エク』という作品が持つパワーの大きさを知っていましたから、妙に納得した自分もいたんです。
――久しぶりに燐を演じるに当たっては、これまで積み重ねてきた経験がむしろ障害になったらしいですね。
岡本 13年前に初めて燐を演じたときは僕も20代半ばで、とにかく「大声を出す」ことが最大の武器だったんです。それ以外はできなかったと言ったほうがいいくらいで…でもそれが燐のキャラクター性とうまくマッチしたんです。それから色々な経験を積み重ねてきた今となっては、ふと「あれ? 燐ってどうやればいいんだっけ?」と(笑)。燐が今の自分とあまりにかけ離れた存在になっていることに気付いて、その時はちょっと絶望しました。もう一度あの頃のように、本当に何も考えていない感じをイメージして、一生懸命声を出すことだけに集中することで、ようやく当時の感覚を取り戻していった気がします。ただしそうなるとデメリットもあって、頭の中を空っぽにして読むので、台本に書かれている漢字が読めなくなるときがあるんです(笑)。
――それは困りますね。とくに『島根啓明結社篇』の入りは学園コメディで、燐のテンションも高いので余計に難しかったかもしれないですね。
岡本 そうなんです。しかも第1話の冒頭がけっこう特殊で、燐のモノローグと言うか、ナレーションから入るんです。聞こえ方として、最初はナレーションっぽく、燐の顔が映ったら徐々に燐に寄せていってほしいという演出があったので、そこのバランスはめっちゃ難しかったですね。これには「あれ? 岡本、燐の声忘れてる?」って思った人もいたみたいなんですけど、あれは演出ですからね!(笑)
――改めて、今の岡本さんからみた燐の魅力はどんなところにあると思いますか?
岡本 人を笑顔にする力とか、燐だったらなんとかしてくれる「かも」しれないところですね。この「かも」っていうワードはとても大事で、決して「なんとかしてくれる」っていう断定ではないんです。その不安定な感じが可愛くもあって、燐の魅力に繋がっているのかなと思います。実は僕自身、最初は燐の良さってあまりピンときてなかったんですが、『京都不浄王篇』の頃からだんだんと彼の魅力に気付いていった気がします。表向きの雰囲気は不良っぽさもあるんですけど、でももし僕がクラスメイトだったとしたら、怖いけどちょっとだけ近づいてみたいなって思わせてくれる何かがあるんですよね。
――過去のシリーズでもっとも印象深いエピソードはどこですか?
岡本 TVアニメ第1シーズンの第2話です。獅郎が燐を守るために命を断つシーンは、奥村兄弟にとってはすべての起点とも言える出来事ですし、燐にとってはこれまで見てきた景色が180度変わったかのような体験だったと思うんです。あとこのシーンは、アニメーションとしてもとても印象的でした。燐が獅郎を助けるために「死ぬなジジィ!」と言って降魔剣を振るシーンは、壮大な演出がついていたこともあって、僕のお芝居としては最初はヒーローとして派手に演じて、その後、父親を失った悲しみにシフトしていく感じだったんです。だけど実際に放送された本編を観たら、作画こそド派手なんですけど、音楽はずっとピアノの悲しい旋律が流れていて、それにすごく驚きました。あとで音響監督さんに聞いたら「燐の気持ちを思ったら、この音しかない」と言われてすごく納得した記憶があります。
――たしかに『青エク』は音楽でキャラクターの気持ちを表現することが多いですよね。では、アフレコ現場での思い出という意味ではいかがですか?
岡本 それで言うと、劇場版(『青の祓魔師 ―劇場版―』2012年)はとても印象深いです。映画作品はだいたい丸一日かけて収録することが多いんですけど、この時は朝10時から収録が始まって、最終的に深夜1時くらいまでかかったんです。当時は僕も若かったので、とにかく最初から全力で声を張っていたら、獅郎役の藤原啓治さんから「それで最後までもつか?」と心配されました。それでも「頑張ります!」って元気よく答えて(笑)。そしたら案の定、最後のほうには意識が朦朧としてきて。最後のシーンはほとんど覚えてないんです。収録でそこまで体力を削られたのはそれが最初で最後の経験なので、役者としてはとてもいい経験をさせていただいたなと思っています。仕事として考えれば決して美しいとは言えないですけど、それでも朦朧とした意識のなかで絞りきったあの芝居は、あれはあれで良かったのかなとも思うんです。
――今作でキャスト陣が集まったのも久しぶりだと思います。久しぶりの掛け合いはいかがでしたか?
岡本 僕がこんなことを言うのもおこがましいかもしれませんが、皆さんのお芝居を間近で拝見して改めて「めちゃめちゃうまいな」と唸らされました。声は7年前のまま、一行のセリフに隠された複雑な心境変化など、皆さん本当に絶妙な表現をされていて、ただただ凄いなと、驚きと感心しかありませんでした。とくに第1話は、僕が燐の芝居を探るなかだったので、皆さんの声を頼りに燐を取り戻していった感覚もあって、ありがたかったです。
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