岡本信彦「『青エク』は僕の数少ない代表作…これからも燐を大切に演じていきたい」<青の祓魔師 島根啓明結社篇>

燐はだんだんと主人公っぽくなってきている

「青の祓魔師 島根啓明結社篇」第1話より(C)加藤和恵/集英社・「青の祓魔師」製作委員会


――『島根啓明結社篇』は主に神木出雲や志摩廉造がクローズアップされましたが、燐の視点で見るとどのように成長したと感じますか?

岡本 『京都不浄王篇』を経て青い炎をコントロールできるようになったことは大きいです。みんなを傷付けずに戦えるというのは燐としても嬉しいだろうし、彼のヒーロー的な気質がだんだんと表に出てきているような気がします。サタンスラッシュとかサタンボムとか、必殺技に名前を付けて叫ぶのも、燐的には成長ポイントだと思います。出雲のピンチに駆けつけたりもしますし、昔に比べるとだんだんと本当の主人公っぽくなっている感じがします。

――今シーズンを振り返って、印象深いシーンはどこですか?

岡本 やっぱり外道院ミハエルに尽きます(笑)。檜山(修之)さんのパワフルなお芝居もあいまって、強烈なキャラクターになりました。情けをかける余地が一切ないほど悪に振り切った存在なので、燐にぶっ飛ばされたときや最後に弾け飛んで消えたときはスカッとした人も多いんじゃないかと思います。あと玉雲と出雲の死別のシーンはやはり泣きそうになりました。

――今回のエピソードを通じて、出雲の解像度は一気に上がりましたね。

岡本 そうですね。以前までは、好きなキャラクターを聞かれたら「可愛くてツンデレだから」という理由で出雲の名前を出していたんです。でもこのエピソードを観た後には、軽々しくツンデレとか可愛いとか、口が裂けても言えないです。今では「本当に幸せになってほしいキャラクター第1位」っていうイメージです。

「青の祓魔師 島根啓明結社篇」第9話より(C)加藤和恵/集英社・「青の祓魔師」製作委員会


――かなりシリアスなストーリーでしたが、最後は志摩も戻ってきて学園コメディとして幕を閉じました。とくに第11話ではエセ京都弁で喋る燐が印象的でした。

岡本 僕は東京出身なので、京都弁や関西弁はまったく話せないんです。ただディレクションもとくになかったので、完全に僕の中での勝手な志摩のイメージで喋りました。京都出身で志摩役の遊佐浩二さんに聞いたら「絶妙にムカつく」って言われたので、これでいいんだなと確信しました(笑)。

――最終話となる第12話では、ウォータースライダーを巡るドタバタ劇もあり、久々のコメディ回でした。

岡本 あれはヒドかったですね(笑)。でも収録はすごく楽しかった。それまでは展開が展開だけに、収録中もあんまり笑ったりできない空気感があったので、それが解き放たれた感じがしました。それにしても燐と志摩のコンビはやっぱりいいです。「こいつら本当におバカだな」っていう感じで笑顔で終われたのは本当に良かったです。

「青の祓魔師 島根啓明結社篇」第12話より(C)加藤和恵/集英社・「青の祓魔師」製作委員会


――そんななか気になるのは、雪男ですよね。

岡本 雪男は最初からずっと火山の噴火前みたいな状態ですから。燐としては、今回はずっと出雲たちを救出するというミッションが動いていたので、雪男と同じ方向を向いている時間が長くて、そこはラクだったと思うんです。これまでのように、営業スマイルを向けられて「心配ないよ」とスッとどこかへ消えられてしまうことがあまりなかったですから。その分、最終話ではやられましたが。とは言え、燐と雪男はいつか腹の底から本音を言い合ってぶつかり合わないと、このままじゃダメだなって感じます。

「青の祓魔師 島根啓明結社篇」第12話より(C)加藤和恵/集英社・「青の祓魔師」製作委員会


――続編「雪ノ果篇」制作も決定しましたし、そこは続編に向けての期待ですね。

岡本 そうですね。まだまだ燐も雪男も詳細なバックボーンも語られていないままですし、そこも含めて今後の展開に期待したいです。原作もまだまだ盛り上がっているところですし、アニメでは敵がイルミナティであることが確定したばかりですから、むしろ『青エク』のメインストーリーはこれからっていう感じがして、僕も楽しみでたまりません。

――最後に、岡本さんにとって『青エク』はどんな作品ですか?

岡本 「自分の代表作ってなんだろう?」って考えたときに、主人公を演じることが代表作だと定義するなら、『青エク』は僕の数少ない代表作と言って間違いないです。

――「数少ない」というのは意外ですね。

岡本 実は主人公役ってあんまりなくて、僕の場合むしろ主人公のライバル役が多いんです。僕自身が主人公っぽい性格じゃないからかもしれませんが、ただ燐についてはとても素直に共感できるところが多くて、演じやすいんです。

――『青エク』は王道の少年漫画ではありますけど、燐自体は王道の主人公像とは少し境遇や立場が違うかもしれません。

岡本 それが良かったんだと思います。そもそもこのような超大作で主人公を演じさせていただくこと自体が天文学的な確率だと思いますが、そのうえで燐のような共感度の高いキャラクターと出会えたことは本当に幸運です。自分にとっても大きな財産ですので、これからも大切に演じていきたいなと思います。

■取材・文/岡本大介

「青の祓魔師 島根啓明結社篇」第12話より(C)加藤和恵/集英社・「青の祓魔師」製作委員会