“親愛なる隣人”ことスパイダーマンは、1962年に発行されたコミック「Amazing Fantasy」で初登場して以降、現在まで多くの映像作品に登場している。スパイダーマンは、最初からスーパーヒーローになるべくして誕生したのではなく、たまたま特殊な能力を持ってしまった“ごく普通”の少年。成績優秀でも、スポーツに秀でているわけでもなく、クラスの人気者とも違う。精神的に未熟な部分も多く、まだまだ成長過程。だからこそ、スパイダーマン=ピーター・パーカーに見る者も共感ができ、その存在を表すのに“親愛なる隣人”という表現がしっくりくるのだろう。そんなスパイダーマンが主役の作品を日本最大級のCS映画専門チャンネル「ムービープラス」では、「特集:スパイダーマン大集合!」と銘打って放送。トビー・マグワイアが主演を務めるサム・ライミ監督による3部作から、アンドリュー・ガーフィールド主演によるリブート版、トム・ホランド主演のMCUシリーズの全8作が集合する。そこで今回はピーターと同様に作品を語る上で欠かせないヒロインの存在にフォーカスを当て、歴代“親愛なる隣人”と歴代“親愛なる彼女”のロマンティックなシーンを紹介しよう。
ライミ監督×マグワイア主演の初代「スパイダーマン」3部作では、さえない高校生のピーターが、放射能を浴びたクモに誤って噛まれてしまい、スーパーヒーローに変身。最愛の叔父が強盗に殺されてしまい、叔父の言葉「大いなる力には大いなる責任が伴う」を胸に、正義のため悪と戦う決意をする。
同シリーズのヒロインは“MJ”の愛称で知られるメリー・ジェーンで、キルスティン・ダンストが演じている。ダンストは1989年にオムニバス映画「ニューヨーク・ストーリー」の一編「Oedipus Wrecks」(ウディ・アレン監督)で映画デビュー。1994年公開のトム・クルーズ主演「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」で少女の吸血鬼を演じ、ゴールデングローブ賞の助演女優賞にノミネートされた他、ベネディクト・カンバーバッチ主演の「パワー・オブ・ザ・ドッグ」(2021年)での演技も高く評価され、第94回アカデミー賞で助演女優賞にノミネートされた。
MJとして最初の3部作に出演した中で、最もロマンティックなシーンに挙げられるのはピーターとの“逆さキス”。スパイダーマンが路地で悪党からMJを救い、逆さまの状態でぶら下がるスパイダーマンのマスクを、素顔が見えない程度にずらして、土砂降りの中、キスを交わす。これは歴代「スパイダーマン」シリーズを通しても名場面の一つと言える。
2012年と2014年に公開されたガーフィールド主演の「アメイジング・スパイダーマン」シリーズは、ライミ監督版の3部作の続編というわけではなく、リブート版として制作された。監督は「(500)日のサマー」などを手掛けたマーク・ウェブが担当し、MJではなくグウェン・ステイシーという原作コミックでピーターの初めての恋人として登場した女性がヒロインとして登場している。
グウェンを演じたのは、先日映画「哀れなるものたち」で「第96回アカデミー賞」主演女優賞をはじめ、「第77回英国アカデミー賞」「第81回ゴールデングローブ賞」主演女優賞を受賞したエマ・ストーンだった。ストーンは2007年公開の「スーパーバッド 童貞ウォーズ」で映画デビューし、「小悪魔はなぜモテる?!」(2010年)、「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」(2014年)、「ラ・ラ・ランド」(2016年)、「女王陛下のお気に入り」(2017年)など数々のヒット作に出演。2021年公開の「クルエラ」も彼女の代表作の一つになっている。
ストーン演じるグウェンは、聡明で自立した女性というイメージ。スパイダーマンの正体がピーターだと分かった後も、彼と一緒にいることを自分の意思で決め、時としてスパイダーマンを手助けするパートナー的な役割も果たしていた。守られるだけではない、強さも持ち合わせたヒロイン像を打ち出している。
ロマンティックなシーンとしては、「アメイジング・スパイダーマン2」での橋でのシーンを挙げたい。川に架かる大きな橋にクモの糸で「I LOVE YOU」の文字を描いたスパイダーマン。それを涙ぐみながらもほほ笑んで見ているグウェンをスパイダーマンがさらい、橋の上に連れて行く。「メッセージ見た?」「あなただったの? 読めなかったの」「じゃあ、教えるよ。“愛してる”だ」と、抱き合いながら話す2人。別々の道を進もうとしているグウェンに「間違ってるよ。僕たちはいつも一緒だ。これからもずっと」とピーターは誓い、キスを交わす。たくさんの高層ビルが見える場所でのキスシーンはとてもロマンティックだ。
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