<アンチヒーロー>飯田和孝Pが語る長谷川博己の演技の妙「主人公のキャラクターに日本の俳優さんの中で一番合っている」

2024/04/12 17:00 配信

ドラマ インタビュー

日曜劇場「アンチヒーロー」より(C)TBS

企画当初から“主人公は長谷川博己”と決めていた


――長谷川博己さんの起用理由を教えてください。

最初の企画書の時点から、イメージキャスト=長谷川博己と書いていました。この主人公は本当につかみどころのない人間で、何を考えているか分からないけれど、胸の中になにか芯のようなものを持っているのかもしれないと思わせる人物です。

簡単に正体が分からないということを一番重視していたので、それを体現してくれる方として長谷川さんが真っ先に浮かびました。

「小さな巨人」(2017年)というドラマに私もプロデューサーで参加していたのですが、そのときの長谷川さんは、すごく芯が強いけれど、繊細でもろくて、強さの反面いろいろな面を持ち合わせている方という印象でした。

その期間だけでは全部をつかみ切れなかったので、そういった意味でも実際にもつかみどころのない方なのではないかと感じて、もう一度一緒にお仕事をしたいという気持ちがあったのと、主人公のキャラクターに日本の俳優さんの中で一番合っているのではないかと思ったのが起用理由です。

――北村匠海さんの起用理由を教えてください。

北村さんの演じる役はすごく難しいキャラクターだと思っていて、弁護士になってまだそこまで年月は経っていないけれど、ド新人でもない、ある種視聴者の目線的なキャラクターになってきます。そこをどう表現してもらえるかを考えたときに、北村さんの表現力に注目しました。

すごく頭のいい俳優さんなのですが、頭でお芝居をしていないというか、1話から10話まで台本がある中で、「この段階はこうで、こう変遷していく」という計算があっても、演じてみるとそれが計算に見えなくて、すごく自然な佇まいなのが北村さんの特徴だと思っています。

――堀田真由さんの起用理由を教えてください。

役の印象と真逆な、この役をやらなそうな俳優さんがいいなと思ったんですよね。堀田さんは、すごく柔らかくてかわいらしい印象がある俳優さんなので、そんなイメージの堀田さんがこの役をやったら面白いのではないかと。

実は今後このキャラクターについてもいろいろなことが明かされていくのですが、堀田さんがその背景にどう向き合っていくのか、非常に楽しみにしています。

矛盾する世の中に警鐘を鳴らす“そういう世の中なんです”


――第1話では、「法律というルールの中では許されても、リアルな世界は一度罪を犯した者を許す気なんかない。幸せになんかなれるわけがない」という印象的なセリフもあります。

皆さん口には出さないけれど、謝ったら許してもらえる、法律上釈放されたら許してもらえる、ということではないのが世の中だと思っています。テレビ番組で大衆に向けて発する上では、“過ちを犯したら謝って更生して償う”、それが最善の策で、そしたら“見ている人は見ていてくれる”という感じじゃないですか。

でも、見ている人は見ていてくれても、その人までもが潰される世の中だと思うんですよね。手を差し伸べる人さえも攻撃されてしまう。そのことに注視すべきで、目を背けてはいけないと感じています。すごく矛盾していると思うんです。だから、“そういう世の中なんです”と伝える。

だからこそ、主人公は殺人者というレッテルを貼らせないために動いている。殺人者と認められてしまったら、今の世の中ではそこから絶対に立ち直れないから。そこが一つのメッセージだと思っています。なので、あえてトップシーンは、元も子もないような強いセリフから入っています。全部見てもらえると、言いたいことはこういうことだったんだと分かると思います。