【漫画】新米パイロットが空を夢みて奮闘する姿に「引き込まれる」「悲しい気持ちが抑えきれない」の声

2024/04/24 09:00 配信

芸能一般 インタビュー コミック

パイロットになのに荷物積みの日々…空を夢見る女の子の物語画像提供/sumirechanさん

コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョンマンガ部」。今回は、空を夢見る新米パイロットを描いた漫画『サン=テグジュペリは夢をみる』の『1926年フランス。飛行機が木と布だった時代、夢見る新米飛行士が空を目指す漫画』をピックアップ。作者である漫画家のsumirechanさんが、2024月3月28日に本作をX(旧Twitter)に投稿したところ、1.8万件を超える「いいね」や反響が多数寄せられた。本記事ではsumirechanさんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。

空に思いを馳せながら、地上で荷物積みの日々を送る新米パイロット

『サン=テグジュペリは夢をみる』(6/46)画像提供/sumirechanさん


ある偉大な作家の生涯をモチーフにした本作は、1926年フランス・トゥールーズ郊外の、ラテコエール空港郵便会社の飛行場を舞台に描かれている。物語の主人公は、小説家を志す新米パイロット、アン・ド・サンローラン。

アンは郵便配達パイロットとして雇われたのにも関わらず、入社してから半年ずっと荷物積みなどの雑務をさせられていた。自分もみんなと同じようにスペインやアフリカを飛んでみたいと、先輩凄腕パイロットのギヨメに愚痴をこぼすアン。

飛行場の周りをくるくる飛ぶだけの飛行訓練を「貴重な人材の浪費」だと嘆くほど、アンは不満が溜まっていた。「なんとかしてよ。古参パイロットなんだから」とアンが泣きつくと、ギヨメは険しい表情を浮かべる。

実は郵便配達のシフトは、“ボス”であるドーラによって決められているため、ギヨメにはどうすることもできなかった。ギヨメによるとドーラは元軍人で“めちゃめちゃおっかない人”らしい。

そんなことを気にせず、直談判をしに行ったアンだったが「駄目。駄目だ。お前はまだ飛ばさん」と一蹴されてしまい――。

本作を読んだ人からは、「引き込まれる」「アンの成長が楽しみ」「続きが気になりすぎる」「悲しい気持ちが抑えきれない」「犠牲があったから今の安全があるんだな」など反響の声が上がっている。

飛行機への見方が変わった“あの時”の感動を多くの人に届けたい…

『サン=テグジュペリは夢をみる』(40/46)画像提供/sumirechanさん

――『1926年フランス。飛行機が木と布だった時代、夢見る新米飛行士が空を目指す漫画』を創作したきっかけや理由があればお教えください。

昨年まで会社員として働いていましたが、漫画家になりたく、出版社への持ち込みを考えていました。私はトマトスープ先生の漫画「ダンピアのおいしい冒険」が大好きで、ダンピアが掲載していたイースト・プレス社のコミックレーベル「マトグロッソ」に今まで描いた同人誌を持ち込んだところ、歴史モノでなにかやってみないかとお声がけをいただき、現在に至ります。

Twitterに投稿した「1926年フランス。~」の漫画は、フランス人の作家サン=テグジュペリの人生をモチーフに、パイロットの女の子が小説家として大成するまでのお話、ということでマトグロッソにて連載しています。

私がサン=テグジュペリをしったのは高校生のころでした、宮崎駿の影響で読んだのです。日本では星の王子さまの作家として著名な人ですが、私が特に感銘を受けたのは飛行機乗り達の物語である「夜間飛行」や「人間の土地」です。

飛行機や空などどちらかに寄ったりもせず、地上との関係性のなかで飛行機を駆り空を飛ぶ人の姿という、人間の営みすべてを包括したような彼の大きな視点と、その文体の冗長にも思える美しい比喩表現の数々に当時感動した記憶があります。

もともと私は第二次世界大戦期の「兵器」としての軍用機が好きでしたが、飛行機の見方が全く変わった、自分にとって大切な読書体験でした。このような感動をより多くの人に届けたく、サン=テグジュペリを読んでもらうきっかけになったらいいなという思いで、彼をテーマとしています。はじめて描いた漫画が同人誌「with you, to Atlantis.」なのですが、これも同様のテーマでかいた漫画です。

――本作を描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあればお教えください。

登場する飛行機は時間がゆるす限りかっこよく描こうと思っています。今のところ本作で登場した飛行機は「ブレゲー14」という第一次世界大戦中にフランスで開発された飛行機です。エンジンから煙突のようにのびてる特徴的な排気管等、そのレトロな佇まいが気に入っているのですが、この時代の飛行機は本当に資料が乏しく邦文の書籍がほぼ無いに等しいので、英文や仏文で描かれた資料を見つけて翻訳にかけて描いています。今はちょうど本機の操縦席まわりがどうなっているか考えています。頭が痛いところです。

――特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。

お話のラスト、飛行機事故の凄惨なシーンが個人的に気に入っています。新潮文庫から出版されております堀口大学訳「人間の土地」のあとがきである、宮崎駿「空のいけにえ」に影響されました。一見優雅に見える郵便飛行ですが、その黎明期は手探りで飛行機を飛ばしていたので、事故で死ぬパイロットが後を絶たない残虐な時代でもありました。現在は最新のテクノロジーがてんこもりの極めて安全な乗り物になりましたが、飛行機のそういった暗い一面を多く描くのも本作のテーマのひとつとしたいので、その始まりとしてよい感じに描けたなと思っています。

――普段作品のストーリーはどのようなところから着想を得ているのでしょうか

本格的に漫画を描き始めたのが2年ほど前からですのでまだ個人的にしっくりする着想方法が見えてこず悩んでいます。今はなるたけ映画や漫画、小説に触れてインプットを増やすようにしています。その中から人に伝えたいとおもう箇所が見つかれば、そこをテーマとしてお話を組み立てるようにしています。

――sumirechanさんの作品は人物描写が丁寧で、キャラクターの目の表情が印象的でした。作画の際にこだわっていることや、特に意識していることはありますか。

ありがとうございます。私は白土三平氏やあさりよしとお氏が描かれるような、デフォルメが強めの女の子が好きで、漫画を描くようになる前からこういう感じのキャラクターの絵を多く描いていました。特にかわいそうなもののかわいさに心を捕まれることが多く、そのシチュエーションが映えるような子を描きたいなと思っています。そこに注力しすぎていままで全然男性キャラを描いてこなかったので、ここは目下練習中です。

――今後の展望や目標をお教えください。

サン=テグジュペリという実際いた人物をモチーフにしているので、彼への敬意を忘れず一生懸命描く。が個人的な本作の目標です。漫画家というものがどういうものなのかまだ全然わかりませんので、はっきりとした展望はありません。ただ、この先ずっと漫画をかきたいなとおもってます。あ、でも読み切りが描きたいです。あとコミティアにも出たいです!

――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!

私の漫画を読んでくれて本当にうれしいです。はげみになります。もしサン=テグジュペリをまだ読んだことない方がいらっしゃいましたら、この機会にぜひ手に取っていただけるとうれしいです。