声優仲間からも絶大な支持…沢城みゆき、役に寄り添い「常にそこにいる」存在感 “ファブルの妹”も鮮やかにこなす

2024/04/13 11:10 配信

アニメ コラム

沢城みゆき※画像はWEBザテレビジョン タレントデータベースより

テレビアニメ「ザ・ファブル」(毎週土曜深夜0:55-1:25、日本テレビ系/ディズニープラスで全話見放題独占配信)が、4月6日深夜に放送・配信開始した。同作は、南勝久による同名人気コミックをアニメ化したもので、殺しの英才教育を施された“殺しの天才”通称・ファブル(CV:興津和幸)が、ボス(CV:小村哲生)から「1年間誰も殺してはならない」という指令を受け、“佐藤明”として人殺しをしない暮らしを送る姿を描く物語。今作で佐藤明の“偽の妹”洋子を演じるのが、長年にわたって第一線で活躍する人気声優・沢城みゆきだ。今回はそんな沢城の魅力を、幅広いエンタメに精通するフリージャーナリスト・原田和典氏が独自の視点で解説する。

“声優アワード”も常連の実力派声優


「この人がキャストにいれば安心」「今回はどんなキャラクターにどんな声を当ててくれるのだろうか」新作アニメに沢城が出演するという情報を見つけるたび、期待を高めているファンも多いに違いない。

「常に稼働しているアニメシーンになくてはならない存在」というイメージもあり、2001年に放送されたアニメ「しあわせソウのオコジョさん」で主役を演じてから約25年間、第一線に立ち続けている事実は単純に「とんでもなくすごい」と思う。

さまざまな物語のキャラクターに扮(ふん)することのできる柔軟性と、ハードスケジュールをこなすタフネスを兼ね備えているからこそ、数多くの大仕事に恵まれているのだろう。しかもいくつになっても演技がみずみずしい。

その年度に「最も印象に残る」声優や作品を対象に業績を称える本格的な声優を対象とした「声優アワード」では、主演女優賞や助演女優賞だけでなく、海外ファン賞に輝いたこともあり、日本のみならず海外からも注目されている。また、2017年に放送された特番「人気声優200人が本気で選んだ!声優総選挙3時間SP」(テレビ朝日系)で4位に入るなど、その実力は同業者からも折り紙付きだ。

新アニメ「ザ・ファブル」でも早速強烈な印象を残した。主役は殺し屋組織の一員である、無敵の殺し屋・佐藤明。明は殺しや暴力の時にすさまじい瞬発力を発揮するものの、普段はむしろ茫洋としていて、猫舌、しかもウィスパー・ボイス。コワモテなのにウィスパーというのも妙に味わい深いが、「あんまり周りに聞こえるようなしゃべり方をするな」と殺しのボスに教え込まれたのかもしれない。

一方、沢城が演じるのは原作でも人気のキャラクター・洋子。バリバリに歯切れよくしゃべり、行動し、時に明を引っ張っていくような頼もしさを見せる。ボスの指令で“偽の妹”という設定が決まると、即座に明を「お兄ちゃん」と呼ぶあたり、洋子の持つ素早さ、この設定に対する前向きな姿勢がうかがえる。次回がまったく予想できないが、とても展開を楽しみにさせる余韻を残して第1話は終了したが、この物語のカギを握るのは、かなりの割合で洋子なのではないか。それほどの強さを感じさせるキャラクターでもある。

不二子ちゃんや鬼太郎の声も継承


「ルパン三世」峰不二子、「ゲゲゲの鬼太郎(6期)」鬼太郎、「鬼滅の刃 遊郭編」堕姫(上弦の陸)、「ONE PIECE」シャーロット・プリン、「HUNTER × HUNTER」クラピカ、「PSYCHO-PASS サイコパス」唐之杜志恩、「終末のワルキューレ」ブリュンヒルデなど、取り組んできた役柄は限りないが、もちろんこれらは膨大な出演作品の一部に過ぎない。不二子ちゃんや鬼太郎など、自身が生まれる遥か以前から存在する国民的・伝統的キャラクターも、まるでテイラーメイドを着こなすかのように、実に自然に、軽やかに演じている。昭和のアニメファンと現代のアニメファンの接点、という言葉も思い浮かぶ。

元のキャラクター像を尊重し、先輩声優へのリスペクトをこめつつ、そこに自分の持ち味を加えて、伝統的な登場人物を現代の空気の中に生き生きと動かす――これをこなすことができるのも、器の大きさの証明といえる。

なお、「LUPIN THE THIRD PART V~SI BON ! SI BON !」には、彼女の名義では初となるボーカル・ナンバーも収められている。作編曲は、“ルパン音楽の生みの親”こと大野雄二。沢城が1999年から取り組んできたキャラクターソングとは別種の味わいを持つ歌声は、さらなる音楽活動への期待を募らせてくれる。

ほか、ナレーション、ラジオ、舞台出演、吹き替えなど活動範囲は多岐にわたっており、言うなれば沢城は「常にそこにいる」存在感の持ち主だ。今回の「ザ・ファブル」を契機に、彼女の演技はさらに注目を浴びることだろう。

◆文=原田和典

沢城みゆき※2023年ザテレビジョン撮影