<怪獣8号>「どう転がるんだこれ?」圧巻の怪獣描写と二転三転のドラマで鷲掴み。ラストではTARAKOさんの声も「うるっときちゃったよ」

2024/04/15 16:33 配信

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アニメ『怪獣8号』第1話より(C)防衛隊第3部隊 (C)松本直也/集英社

夢に破れた32歳の主人公。今は日の当たらない死骸処理が怪獣との戦い


そんな防衛隊と怪獣の戦いを描く本作だが、主人公のカフカは怪獣専門の清掃業者モンスタースイーパー(株)で働く32歳の古参社員。少年時代に憧れていた防衛隊入隊の夢を諦め、今は防衛隊が討伐した怪獣の死骸処理が彼にとっての怪獣との戦いだった。死骸処理も市民、街のための大切な仕事に違いないが、やはり断ち切れない思いがあるのだろう。テレビに映る防衛隊の活躍を見て、カフカは「なんでこっち側にいるんだろ、俺…」と、やるせない気持ちを吐露する。

しかし、そんなカフカに意外な形で転機が訪れる。少子化のあおりを受けて、入隊試驗の年齢制限が33歳未満に引き上げられたというのだ。カフカは昔の自分と同じように防衛隊を目指す新人後輩・市川レノ(CV.加藤渉)の言葉に背中を押され、くすぶっていた夢への情熱を再び燃え上がらせる。

漫画の「怪獣8号」は30代、40代から人気を集めているというが、それはカフカが少年ではなく、このような一度は夢を諦めた中年男性だからだろう。子どもの頃に抱いた夢を叶えるというのは誰しもが難しく、カフカと同じような気持ちを抱いている人は世の中に少なくないはずだ。そうした世代が受ける共感性と、かといってリアリティーが過ぎないバランス感はとてもちょうど良い。

こうした中で動くヒューマンドラマが気になるところだが、第1話で意味深に匂わされたのが防衛隊第3部隊隊長の亜白ミナ(CV.瀬戸麻沙美)との関係だ。カフカが回想していたように、カフカとミナは幼なじみだ。今では防衛隊のエースとして活躍するミナとの間にどんな過去があったのか。再び夢を追いはじめたカフカに彼女はなにを思うのか。今回はニアミスで終わったが、先々にあるだろう2人の再会は注目したいポイントだ。

まさか主人公が怪獣に!? カフカの夢はどうなるのか


第1話後半では、生き残っていた余獣(本獣と呼ばれる巨大怪獣から生まれる小型の怪獣)に襲われ、間一髪のところをミナに救われたカフカとレノ。2人ともども入院するハメになってしまったが、カフカは今回の一件でもう一度防衛隊を目指すと決意する。その意気込みを言い切る寸前、カフカの目の前にいつの間にか小さな幼獣が…。

「ミツケタ」と喋ったかと思った瞬間、その幼獣はカフカの口からまるで侵食するかのように体の中に入り込んでいく。異変を察知したレノがカーテンを弾いたとき、そこには異形の怪獣になったカフカの姿があった。

防衛隊員になろうという男が、しかも怪獣と戦うはずの主人公が討伐される側の怪獣に!? カフカの夢はどうなってしまうのか。二転三転した展開に、「防衛隊目指して頑張るよくある導入パターンか…と思っていたらどう転がるんだこれ?」「怪獣倒すアニメじゃないの?えっ!?」「これはオモロイ!リアタイ決定」など、様々なコメントが殺到。SNSでは早くも鷲掴みにされた視聴者の様子が浮き彫りになっている。

なお、最後に現れた謎の幼獣の声優は、先月に逝去されたTARAKOさんであったことがエンドロールで明かされた。「怪獣8号」の公式Xにはご冥福と感謝のメッセージが綴られ、ファンからも「まさかここで新しい声が聴けるなんて…うるっときちゃったよ」「嬉しいな、TARAKOさんの声はこうして残っていく」など、感謝や感激の声が相次いでいる。

■文/鈴木康道

アニメ『怪獣8号』第1話より(C)防衛隊第3部隊 (C)松本直也/集英社