ーー撮影で最も印象に残っていることは?
今回の撮影で特に印象に残っているのは、スカーレットと名付けたタコとの交流です。スカーレットとは、実際にコンタクトを取って関係を築いていきました。その中で、30分ぐらい彼女と一緒にいると、彼女の方から私の手に、手や足を差し伸ばしてくれて握手をしてくれたということがありました。彼女は私を狩りに同行もさせてくれました。
その後、私がまた戻っても彼女は私のことを覚えているようで、また一緒に行動させてくれたのです。これは大したことないように思われるかもしれませんけれども、タコというのは、いわゆる骨格もなければ歯や爪もなく、自分を防御するものが一切ない、とても脆い立場の生物。そんなタコが、好奇心から自分の防衛心を下げてくれ、大きさも10倍以上違う私をそのように招き入れてくれたということはとても印象的でした。
ーータコのような知的生物について知ることで、海洋生態系についてわかることは?
タコのような知的生物について知ることと、海洋生態系全体への理解は、繋がりがあると思います。このシリーズではタコの生態を中心に見せていますが、彼らが本当に並外れた生物、動物であるということを理解していただけると思います。
タコは300以上の種類があって、私達の暮らす海全てに必ず生息している生物です。生態系という点で見ると、タコは捕食関係において、ちょうど真ん中に位置しており、そこが何かで狂ってしまうと、ドミノ効果で様々なところに影響を及ぼしかねません。
いま、私達の海は、癒しを必要としています。地球温暖化や、生物学の多様性、アニマルウェルフェアに関してなど、いろいろなところに課題が生じています。それらに我々が共感していけるかというところが大切で、海をただの大量の水と考えてしまうと、なかなか感情移入や共感は難しいものです。
タコのエピソードを通じて、海に暮らす動物たちやその環境、海洋生態系について少し意識してもらえるのではないかと思っています。
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