真田広之が主演&プロデュースを務め、ハリウッドの制作陣が手掛けたドラマ「SHOGUN 将軍」(ディズニープラスのスターで全話独占配信中)の第10話「夢の中の夢」が4月23日に配信され、壮大な“ハリウッド版戦国ドラマ”がフィナーレを迎えた。同作は主人公・吉井虎永役の真田や樫木藪重役の浅野忠信ら世界を股に掛けて活躍する名優はもちろんのこと、“日本人は日本人キャストが演じる”など、「正しく日本を描く」という旗印の下、国内外のキャスト・スタッフが力を合わせて作られた壮大な戦国スペクタクル。実在の武将にインスパイアされたキャラクターは個性豊かでいずれも魅力的だったが、今作の中で異質な魅力を放ち、妖艶なしぐさや佇まいで魅了したのが、向里祐香演じる一流の遊女・菊だ。このほど向里にインタビューを行い、役へのアプローチやハリウッド方式の撮影秘話、真田の印象などを語ってもらった。
――出演が決まった時の率直な感想をお聞かせください。
今回はオーディションだったんです。菊が出て来る6話の茶屋のシーンを演じたビテオテープを送って返事待ちという状態。面談をするわけでもなく、ただビデオを送っただけだったので、菊役に決まったと知っても「本当に私なの? 誰かと間違ってない?」って、撮影現場に行くまで信じられなかったですし、ずっと不安感がありました。
――菊を演じるにあたって、どんなアプローチをしたんですか?
三味線や日舞を習いました。それと新橋の芸妓さんをご紹介していただいて、戦国時代の女性らしい目線などの所作を学んだり。いろいろなことを準備して、撮影現場のカナダ・バンクーバーに向かいました。
――劇中での菊の所作はとても美しかったですね。
菊は“伊豆一の遊女”という設定。指先や立ち方など、ちょっとした動きに一流らしさのようなものが出ると思うのでそこに嘘がないよう練習をして、菊が醸し出す雰囲気やオーラを意識しながら演じました。
――菊を演じる上で、どんなことを意識しましたか?
一番は「自信」です。私は“伊豆一”で、すべてを知っているし、すべてをコントロールできるんだというマインドを持つことを心掛けました。全部分かっていて観察力も鋭い。自分とは正反対ですけど(笑)、なるべく日頃から焦らないように行動しつつ、菊のそういう部分を大切にしながらお芝居するよう意識していました。
――菊の表情も印象的でしたが、何か工夫した点はありますか?
菊は頭が良い女性で相手にかける言葉にも何か意味を持っているんですけど、私の中ではフワッとした柔らかいイメージがあって。何か物を取る時も弧を描くように丸くフワッと手にしたり、蝶のように舞ったりしている感覚。表情も目をガッと開けて向き合うというよりは、目を細めて相手に余裕を与えるように自分なりに計算しながら作っていました。
――そうすると、呼ばれた時の振り向き方も変わってくるんですね?
呼ばれてそのまま振り向くのではなく、まずは顎で相手のことを見なさいと教わりました。言葉にするのは難しいですけど(笑)、顎を先に見せながら振り向くようなイメージ。目線も含めて、そういう一つ一つの所作を先生や芸妓さんに教えていただきながらみんなで菊というキャラクターを作っていきました。
――ハリウッド方式の撮影はいかがでしたか?
とにかく作品に携わっている人数が多かったです。撮影はバンクーバーで行われたんですけど、劇中に登場する大坂城や町並みなど、全部セットを作ってしまうところは流石だなと。菊として大坂城に行くシーンはなかったんですけど、撮影がお休みの日に大坂の町などを見学する機会があったんです。とても細かいところまで忠実に再現されていて、あらためてすごいなと思いました。
お芝居に関しては、日本だとセリフを間違えたり、かんでしまったらそこでカットが掛かるんですけど、今回の現場ではそのまま自分の間で気持ちを作り直して演技を再開するんです。そのやり方にはびっくりしました。
いろいろシステム化されていて日本とは違うところもありましたけど、一つの作品を作るという意味では日本も海外も同じ。みんなでいいものを作るという思いを抱きながら撮影に臨みました。
――演技指導などのコミュニケーションもスムーズでしたか?
エグゼクティブ・プロデューサーのジャスティン・マークスから「何かあったらいつでも連絡してくれていい」と言われていて。シーンや役のことで不安があったらZOOMでミーティングをして、撮影前にいろいろ話し合うことができました。常にそういうスタンスで俳優と向き合ってくれたのでとてもありがたかったです。
――最後に、本作で主人公の吉井虎永を演じている真田広之さんはプロデューサーも務めていますが、現場での印象を教えていただけますか?
今回は役としてご一緒する機会はなかったんですけど、真田さんが出演する広松(西岡徳馬)の切腹シーンを見学しました。現場の空気がピシッと締まるような、言葉では言い表せないオーラを持った方だなと。
でも、プロデューサーとして現場にいらっしゃる時は、そのオーラを完全に消していて。常に真っ黒な服を着ているのでそばにいても全然気付かないんです。ここまで消せるのかと驚くほどプロデューサー業に徹している姿が印象に残っています。
日本と海外チームの架け橋になってくださって、いろいろ困ったことがあった時は話を聞いてくださる頼もしい大先輩。同じ作品に出演できて光栄でしたし、とても貴重な経験になりました。
「SHOGUN 将軍」は、ディズニープラスのスターで全話独占配信中。
◆取材・文=小池貴之
※西岡徳馬の「徳」は心の上に一本線が入るのが正式表記
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