サンフェス当日、現場で源一郎率いる龍聖学園とすれ違った北宇治。龍聖学園の樋口一弦(CV:畠山航輔)は、求に源一郎に会ってくれと頼むが、求はこれを強い口調で断り、一悶着となる。本番の演奏後、樋口を見かけた久美子と緑輝は彼を呼び止め、ことの詳細を聞くのだった。樋口によると、源一郎はみんなから尊敬されている指導者で、本気で「孫」である求を心配しているとのこと。さらに求と源一郎の確執の原因は、3年前に他界した求の姉が関係しているのではないかということが分かる。緑輝は改めて彼と向き合うことを決める。久美子と緑輝の二人は、改めて先輩であることの大変さを実感するのであった。
樋口の口から、求に姉がいたことや、その姉がすでに他界していること、かつてなく沈痛な空気感に包まれた。求の態度の要因は家庭内のいざこざ程度に考えていた久美子がショックを受けたのも当然だが、たいていのことには動じない緑輝までもが反省の念を口にしているのが印象的だ。またサンフェスでのもうひとつの見どころは、麗奈の「先輩」としての言動だろう。本番後、これまで厳しく指導してきた初心者の一年生部員に対して「すごく良かった」と声をかけ、一年生部員は思わず涙を流す。徹底した実力主義を貫いてきた麗奈が、相手の気持ちを思いやる言動をしたことは大きな変化だろう。部員全体へのパフォーマンス的な意味合いもあったとは言え、そのような言動を取ったことは素晴らしく、先輩として、人として成長していることが伺える。SNSでも「麗奈、フォローなんてできる人だっけ?」「立派になったなあ」など、麗奈の成長を讃えるコメントが多かった。
求と向き合う決心をした緑輝は、彼に本心を話すように促すも、求は無言を貫いたままだった。一方久美子は、顧問の滝昇(CV:櫻井孝宏)から、源一郎が求を龍聖学園に転校させたがっているという話を聞く。そしてその日の帰り、久美子は駅で求から声をかけられる。求は久美子に、自分は源一郎のことを嫌っているわけではないが、姉はかつて「指導者の孫」ということに悩み、吹奏楽への思いを失ったまま病気で亡くなってしまったこと。そんな姉への思いから、自分は「姉が求めていた楽しい吹奏楽」を求めなければいけない気がしていること。吹奏楽を心から楽しむ緑輝の姿勢が姉に似ていること。そのままの緑輝でいてほしいために自分の過去について話せなかったことなど、ありのままの本心を打ち明ける。翌日、源一郎と樋口に自分の言葉で意思表明をした求 は、改めて久美子に「僕は北宇治の人間です」と告げる。そんな求に、緑輝は「なにか、いっしょに弾きませんか?」と提案。コントラバスの二重奏を通じて、ふたりはまた笑い合うのだった。
シリーズを象徴する名所のひとつである宇治橋での対話、駅前でのタクシーのヘッドライトによる光と影の演出など、見どころ満載の終盤ではあるが、やはりコントラバス二重奏による特殊EDは圧巻で、観るものの心を惹きつけてやまない。言葉が無理ならば演奏で会話をしようと試みる緑輝の優しさや逞しさもあいまって、素晴らしいシーンとなっている。ちなみにここで演奏されたのは、エドワード・エルガーの「愛の挨拶」。エルガーがのちに妻となる女性にプレゼントした曲で、言わばプロポーズの歌である。求がこの楽曲をリクエストしたのは「姉が好きだったから」という理由で他意はないものの、図らずもふたりの新しい門出を祝福するかのような雰囲気もあり、改めて本作が「音楽アニメ」であることを実感できる屈指の名シーンとなった。SNSでも「エモすぎ」、「泣かないほうが無理」など絶賛コメントで溢れていた。
なお最後に今週の黒江真由(CV:戸松遥)についてだが、後輩の衣装を補修したり演奏指導をするなど、すっかり部内に溶け込んでいる様子。久石奏(CV:雨宮天)の不満の矛先をうまくかわすなどのファインプレーも見せており、これには久美子も感謝するほどだった。今回は全体として、キャラクターたちの「先輩」としての姿が随所に描かれており、それぞれの成長を感じたお話だった。さて次回の第五回は5月5日(日)放送予定。期待して待とう!
■文/岡本大介
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