──念願の吉田組での撮影でしたが、吉田組の現場で学んだことや得たものを言葉にするなら?
いっぱいあります。ありすぎるくらいあります。言葉にするのはすごく難しいですが、それこそドキュメンタリーのようなお芝居のやり方、感覚や技術は今まで味わったことがないものだったので、これを忘れないようにしたいなと思います。
あとは、私は自分を消す方法や本当の意味でその役を生きるということを知らなかったなと思ったんです。「役者さんってみんなこれができるんだ」と思って、役者さんをすごく尊敬しました。
──その感覚は今までにはなかったもの?
あんまりなかったんです。私はこれまで当て書きしていただくことや「イメージを生かしたものです」とか、そういう形でオファーしていただくことが多かったんです。だけど、今回のように、私の知らない世界でずっと生きてきた皆さんがいるんですよね。
今回共演した森くんにしても、岳くん(細川岳)にしても、みんなこの生々しい中で役と向き合っている。それがすごいなと思いましたし、私もそれができる人になりたいなと思いました。
──今、共演者のお名前も上がりましたが、共演者とのやりとりで印象的だったことがあれば教えてください。
特に夫役の青木さんにはとても支えていただきました。豊が沙織里を支えるように、ずっと近くで接してくださって。私自身初めてのことだったのですが、お芝居をする前の感情がどうだったのかを考えて、スタートする30秒とか1分前からずっと演じていたんです。そうしないと、スタートと共にお芝居をすることができなくて。カットがかかったあとも、ある程度自分の中で落ち着くまで演じていたり。
青木さんはそれにずっと付き合ってくださいました。車から降りて階段を登って警察署に行く場面も、スタートがかかる前の車の中から私は涙が止まらなくなってしまったのですが、青木さんが車の中でずっと手を握ってくださっていて。階段を登る前もずっと肩を抱いてくださった。初めて過呼吸も起こしたのですが、そのときもずっと付き合ってくださいました。青木さんがいたからできたなと思うシーンばかりです。
──本当におふたりで作っていったんですね。
はい。同士のようでした。
──今作は石原さんご自身も母親になって初めての作品でしたが、そこについてはいかがでしたか?
脚本をもらったタイミングですぐに撮影をしていたら、沙織里のジェットコースターのような感情の起伏は、お芝居でしかつなげなかった気がします。でも出産を経験して、この恐怖と立ち向かいながらのお芝居は、育児をしている中だからわかることがすごく多かったです。タイミングが良かったなと思います。
──石原さんは、この作品からどのようなメッセージを受け取りましたか?
客観視できていないので、難しいのですが…。メッセージというか、「こうなったらいいな」と思うことはあって。何か一言、(SNSで)打つでも書くでも返信するでも、「自分の家族や恋人に対して同じことができるか?」と考えてほしいです。
もし「自分の家族や、自分の大切な人だったら」と思ってコメントを抑えることができたら、少しは世の中がやさしくなれるのかなと思います。当事者の気持ちになるって、難しいと思うんです。この作品を観ても当事者の気持ちになれるわけじゃない。でも心の中に、この作品の中の誰かの心が住み着いてくれたらいいなと。それで、行動するときの考えるきっかけになれたらいいなと思います。
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