――囲碁は詳しかったんですか?
僕は全く分からないですね。置くところを確認して、そこに置いてっていう(笑)。ただ、手の返し、碁石を指で持って、くるっと返してパチッと置く。あの感じは格之進のプロ棋士としての繊細さが出るかなと思って、ホテルの部屋でも練習しました。結構難しいんだけど、國村隼さん演じる源兵衛の囲碁でコントラストが出て、非常によかったと思っています。
――格之進の生き方をどう思いますか?
うーん、僕的には面倒くさいなと(笑)。こだわっちゃってさ、あんなかわいい娘がいるのに切腹しようとして、どういうことだ!って。やりながらイライラしてました。でも、そういう気持ちとは相反して、譲れない気持ちとか、古き良きものの中にある魂みたいなものは分かるというか、そう自分に思い込ませて、格之進の中に何かあるんじゃないかなと考えてましたね。実際あった気はします。今に忘れかけてるような気持ちというか。白石監督もそこは大事にされていたので、僕としては面倒くさい男だと思いながら、片方では僕には分からない、こだわりや曲げられない格好良さがあるんだと、必死についていきました。
――前半は静かな正義感あふれるいい人かと思ったら、途中で怒りを爆発させて変貌。あの緩急のつけ方はご自身で考えたのですか?
やっぱり白石監督なので、最初は江戸の…江戸時代ってすごく華やかで暮らしやすくて楽しい時代だと言われているんですよね。確かに最初、桜が咲いてる中、國村さんと水辺で囲碁を指す雰囲気とか楽しそうなんです。
だけど、小泉今日子さん演じるお庚が急に怖くなってくるあたりから“裏の江戸”もあるんだなと。で、だんだん僕も復讐心が目覚めてくる。ああ、やっぱり白石作品は、優しいだけでは終わらない。白石さんの世界観が出てくる。
僕も気持ちがノッてきて、それこそ高倉健さんの仁侠じゃないですけど、そういうイメージだったり、僕の好きなつかこうへいさんが書いた「蒲田行進曲」の池田屋階段落ちのシーンで映画に命を捧げている男たちの熱い思いとか、そんないろんな意味の分からない感情が僕の中で混ざり合って。何を表現していいか分からないんだけど、1枚の布に血がじわっとにじんでいくようなイメージ…白石監督の映画っていっぱい血が出てくるじゃないですか。実際そういう感じになってハマったんだと思います。
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