佐藤日向、遠回りをしながら見つけ出した“私らしさ”/わたしことば(4)個性ってなんだろう

2024/05/20 11:30 配信

アイドル 芸能一般 コラム 連載

佐藤日向が言葉をテーマに書き下ろすエッセイ連載「わたしことば」#4「個性ってなんだろう」

アニメ「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」(星見純那役)、「ラブライブ!サンシャイン‼︎」(鹿角理亞役)、「ウマ娘 プリティーダービー」(ケイエスミラクル役)などの声優として活躍するほか、舞台俳優としても活動する佐藤日向。そんな佐藤にとって大切な「言葉」を題材にして書き下ろすエッセイ連載「わたしことば」。最終回となるテーマは「個性ってなんだろう」。「60点の女」「無個性」と評価されてきた佐藤が、遠回りをしながらも見つけ出した自身の個性について思いを綴る。

#4_個性ってなんだろう

日向は何をやっても60点だね」。
小学6年生だった頃のマネージャーさんから言われた言葉だ。25歳になった今でも言われた場面をはっきりと覚えているから、そのくらい衝撃的だったのだと思う。

私は芸事に関しては頑固だったこともあり、努力をどれだけ重ねても成長速度が本当に遅く、マネージャーさんから見れば"努力をしていない子"に見えていたのだろう。

小学生が受け止めるにはなかなかにきつい言葉たちを抱えきれず、帰宅して泣きじゃくる私にいつも母は「他の人と比べたってしょうがないよ。だって、日向は他の人とスタート地点が違うんだから。どれだけ努力を重ねても、それでやっと他の子のスタート地点と同じくらいになれるかもしれない、そんなレベルだよ。それでもこの仕事、やりたいんでしょ?」。そう言ってくれた。

このエッセイを読んでいる人からは母の言葉の方が厳しいのでは?と思われそうだが、私の性格上自分が納得できる理由さえあれば頑張れたのだ。母は私のことを持ち上げるのがうまいなと娘ながらに思う。

マネージャーさんから言われた「60点」という言葉は思っていた以上に私の心に引っかかり、ここから先、ずっと私の人生に付きまとうことになる。

小学5年生の頃の佐藤日向事務所提供

例えば、人生で2回目のレコーディング。なんと5分で終えてしまった。

小学6年生の時に喉を一度潰してしまってからこの低い声が生まれたわけだが、当時の私にとってはコンプレックスでしかなくて、それこそアイドルっぽい曲のレコーディングとなると冷や汗が止まらず、心臓がバクバクしてヘッドフォンをつけるたびに自分の心音が耳に届いた。

人生2回目のレコーディングはワンコーラスも歌わせてもらえず、高音パートのハモリを一節だけ歌い、「以上です」と言われてあっけなく終わった。

その後、グループでは足並みを揃えるために個性を出して歌うのではなく、真っ直ぐで目立つ癖のない、周りと合わせて歌う方針が取られた。

そしてこの歌い方をきっかけに、私は「60点の女」にプラスして「無個性」とも言われるようになる。これはもうかなり踏んだり蹴ったりだ。

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