乃木坂46“同期”との映画が実現 ラップもできる才女・北川悠理が愛される理由

2024/05/21 08:10 配信

映画 アイドル コラム

筒井あやめ、北川悠理、賀喜遥香(写真左から)映画「しあわせなんて、なければいいのに。」完成披露試写会より ※ザテレビジョン撮影

5月17日からLeminoで独占配信が始まった映画「しあわせなんて、なければいいのに。」で脚本を考案し、自ら主演も務めたのが北川悠理だ。乃木坂46を卒業後約1年を経て、再始動した北川の表現者としての力や、愛される理由について分析してみたい。

北川の脚本&主演作に4期生集結


同作は、2023年6月に乃木坂46を卒業した北川がグループ在籍時から構想を温めていたもので、同期である4期生の遠藤さくら賀喜遥香金川紗耶黒見明香佐藤璃果柴田柚菜清宮レイ田村真佑筒井あやめ矢久保美緒弓木奈於が出演。元メンバーが原作・脚本を担当し、現役メンバーが出演する作品は乃木坂46史上初めてのこと。監督は乃木坂46の「おいでシャンプー」「いつかできるから今日できる」のMVを撮影した高橋栄樹が務めた。

5月17日に行われた完成披露試写会で、卒業以来初めて公の場に登場した北川。冒頭のあいさつを終えて作品への思いを話そうとしたところで、「大好きな方に囲まれて…」と感極まって涙がこぼれてしまった。それを優しくフォローして笑顔になる4期生。こんな、彼女をとりまくほんわかとした空気感は乃木坂46時代から変わっていない。

北川は同試写会で、映画作りの動機について「乃木坂46で活動していく中で、お芝居が好きだなと思って、私は自分の言葉で話すのが少し苦手というか、こういうふうにゆっくりになるんですけど、役を通してだと人生で1番感情を出せるなって思ったんです」と、乃木坂での活動から自分にできることを見つけていったと振り返った。

そして「卒業するにあたって、ファンの皆さんに何か恩返しができたらいいなって。あと、大好きなメンバーやスタッフさんと何か作れたらいいなって思いました」と仲間思いなところものぞかせた。

2018年に乃木坂46に加入した時、高校生だった北川はアメリカ出身の帰国子女という生い立ちから、バイリンガルぶりでファンに注目され始める(4期生には同じくアメリカ在住歴がある清宮レイ、香港生まれの黒見明香と「国際派」が多い)。その後慶應義塾大学に進学し、乃木坂46内での学力テストでトップスコアを叩きだしたり、「Qさま!!」(テレビ朝日系)、「東大王」(TBS系)などの番組への出演でインテリぶりが知られるようになる。

遠藤さくら、筒井あやめ、北川悠理※ザテレビジョン撮影

感性豊か…ラップに開眼する場面も


いつも独特のおっとりとした話しぶりで、メンバーに物まねされたりしていたが、彼女のアイデアから生まれたものも少なくない。2021年には同期の林瑠奈とラップに開眼。「乃木坂スター誕生!」(日本テレビほか)で2人でのラップパフォーマンスを見せると、YouTubeチャンネル「乃木坂配信中」でもお題に合わせて英語混じりのラップを披露し、審査員役の弓木奈於を「あんなに冗舌にしゃべれるんだ」と驚かせていた。2022年には31stシングルの「ここにはないもの」で北川と林、弓木、賀喜遥香遠藤さくらの5人でラップ曲「アトノマツリ」が収録された。

とにかく「言葉」にまつわる感覚はさえており、「乃木坂スター誕生!」では掛橋沙耶香の作曲、北川の作詞によりオリジナル曲「空の泣きまね」を生みだす。空を眺めることが好きな北川が、空にちなんだ素朴な感情を歌詞にした。しかも林や弓木、掛橋とメンバーを巻き込んでアイデアを形にしていくところに、北川の人柄が信頼されていたことがうかがえる。

そんなふうに北川はグループ内では創造力を生かし、クイズ番組出演の機会も増えていったが、まだまだこれからというタイミングの2023年春に卒業を発表し、6月末に活動を終了した。卒業理由は「夢をかなえるため」の海外留学と明かしていたが、乃木坂46としての最後のブログで、自身が脚本を書いて4期生メンバーで演じる映画の制作を公表した。それが約1年近くを経てこの「しあわせなんて、なければいいのに。」として配信された。この映画の企画自体が、卒業を決めた時の北川たっての発案で、自ら資料を作ってスタッフにプレゼンを行って実現させたという。天然キャラにもたとえられる言動とは裏腹に、物語を作ることへの意欲は熱い。そんな彼女のことを、試写会で同期の弓木は「底知れない」と評している。

ストーリーには、北川がこれまでに感じた感情や人生観も込められているかのようだ。北川が自ら演じる高校二年生の白木鴇は、学校で居場所を見つけられないでいたところに、駅で自作のCDを配っていたツグミ(筒井)と出会い、学校の外で仲間(友達)を見つけていく。鴇の繊細なモノローグから北川の豊かな感性がうかがえる、明るいキャラクターの清宮が劇中でも鴇を積極的に友達として誘うなど、4期生11人の配役に北川から見た各メンバーのイメージも投影されているようだ。

乃木坂46卒業の時に言及していた「夢」がこうした創作活動なのか、それとも他の何かなのかも北川自身は明らかにしていない。だが、まだまだ彼女の頭の中には紡ぎたい物語があるだろう。そう思わせてくれる1作が生まれた。

「しあわせなんて、なければいいのに。」はLeminoで独占無料配信中(無料期間は5月24日[金]朝11:59まで)。

◆文=大宮高史

北川悠理※ザテレビジョン撮影