<街並み照らすヤツら>イレギュラーな制作過程&森本慎太郎の魅力を監督・前田弘二、脚本・高田亮らが明かす

「街並み照らすヤツら」より(C)日テレ

“周囲とズレてるキャラクター”へのこだわり


――登場人物たちの掛け合いがとても楽しい作品になっています。ポンコツなキャラクターが多いのは、高田さんのお好みでしょうか?

高田:いや、前田監督は自主映画時代からおかしな人を登場させないとOKをくれないんですよ(笑)。人と違った尺度で生きている人、それが周囲とは決定的にズレている人が好きなんですよね?

前田:周りにとっては大きいことだけど、本人にとっては小さいことだったり、周りには小さいことだけど、本人にはとても大きなことって、普通にあることだと思うんですよね。みんなどこか偏っているはずだと思うから、映画やドラマではそれを極端にした人物を登場させたいという思いがあるんですよね。ただ、毎回変なことを言わないといけないから、書くほうは大変だと思います(笑)。

高田:毎回、ヘンな人を考えないといけないのは、もう地獄ですよ(笑)。でも、僕も現実は窮屈だから、映画やドラマではそういうことに縛られずに自由な人を観たいという欲求があるので、そこは監督と同じなんですけどね。

主演の森本慎太郎は「太陽のような方」


――主人公の正義に森本さんをキャスティングされた理由を教えてください。

藤森:まず脚本があって、主人公は普通にそのへんの商店街にいそうなお兄ちゃんみたいな方がいいなと思っていました。森本さんは以前、弊社のドラマ「だが、情熱はある」(2023年日本テレビ系)に出演していただいたことがあり、演技力がすばらしいのはわかっていましたし、森本さんには身近にいるお兄ちゃん的な感じがあると思ってので、オファーさせていただきました。

前田:森本さんは太陽のような方で、現場をすごく明るくしてくれるんですよね。周りに気を遣わせない人でもあるし、本当に気持ちのいい人だと思います。役においても、森本さんの資質というか、持っている柔らかさみたいなものがいい具合に役に溶け込んでいる感じがしますね。

高田:森本さんは正義にぴったりですよね。

前田:今回のドラマにはクセモノ的なおかしな人ばかり出てくるんですけど、森本さんにはそれを無理なく受け入れられる許容範囲の広さがあって。「どんな人が来ても大丈夫」と思わせてくれる安心感と明るさがあるのが森本さんの俳優としての魅力だと思います。

高田:第3話で正義がスナックから帰ってきた彩を迎えるシーンがあったと思いますが、僕はあのときの森本さんの表情に感動しました。「僕は仕事を楽しんでもらいたいと思ってる」と言いつつも、本当は彩がスナックで働くのは、正義としてはイヤなわけじゃないですか。でも、仕事を楽しんでもらいたいという気持ちもウソではないし、その二つの感情に揺さぶられるお芝居はコントロールが難しかったと思いますが、それが本当にすばらしかった。森川さんのお芝居もすばらしくて僕は観ていて泣いてしまいました。

――主人公に正義という名前をつけたのには理由があるのでしょうか?

高田:最初に名前を決めるときに、皮肉に聞こえるような名前がいいんじゃないかと思っていました。偽装強盗という悪いことをやる人の名前が正義だなんて、まさに皮肉ですよね(笑)。今後、正義は名前のとおりに“正義”の方向に向かおうとしますが、それもだんだんわからなくなって、どうするのが一番正しいのかに悩む展開になっていくと思います。