1988年にはトム・クルーズ主演の映画「カクテル」の挿入歌「ココモ」が全米1位を獲得。別行動をとっていたブライアンもソロアルバム『ブライアン・ウィルソン』を発表。
そして2023年、1962年発表の初アルバム『サーフィン・サファリ』から約60年を経て、ジャケット写真が撮影されたハワイ、“パラダイス・コーブ”に存命メンバーが再集合。確執を乗り越えて時間を共にする彼らの姿(特にマイクとブライアン)には泣けた。
あともう一つ、当ドキュメンタリーの中でなんとも異様な存在感を放っているのが、先にも少し触れたブライアンらの父マリー・ウィルソンだ。ソングライターとしての経歴も持つ彼は、ビーチ・ボーイズの活動初期にマネジャーを務め、息子たちの成功に尽力した。が、グループが売れるほど支配欲が増し、“嫉妬の鬼”と化していく。自分が音楽家として収められなかった成功を、息子たちがものにしていくことにむかついたのか。
揚げ句の果てにビーチ・ボーイズの著作権を信じられないほど安い値段で売り飛ばし、そのためメンバーは長年にわたって苦労を強いられることになる。また、ドキュメンタリーでは触れられていないけれど、“サンレイズ”という5人組グループをプロデュースして、ビーチ・ボーイズの人気を蹴落とそうとした形跡もある。なんという暴君なのだと思わざるをえないが、それでも、父にとっては愛すべき息子たちであり、息子たちにとっては大きな父であるという点が0パーセントになることはなかった。それがありありと伝わるのも、「ビーチ・ボーイズ:ポップ・ミュージック・レボリューション」の深いところだ。
「ビーチ・ボーイズ:ポップ・ミュージック・レボリューション」は、ディズニープラスで独占配信中。
◆文=原田和典
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