“絶叫クイーン”から“おしゃれアイコン”へ…最旬美女優アニャとは?「X-MEN」シリーズの“青春ホラー”で好演の過去も

2024/05/31 07:10 配信

映画 コラム

アニャ・テイラー=ジョイ写真:AP/アフロ

「マッドマックス」シリーズ最新作「マッドマックス:フュリオサ」が5月31日(金)に公開される。1979年に第1作「マッドマックス」が公開されて世界的に大ヒットを記録し、主演を務めた名優メル・ギブソンとヒットメーカーのジョージ・ミラー監督の出世作となった。1981年に2作目「マッドマックス2」、1985年に3作目「マッドマックス/サンダードーム」とコンスタントに続編が制作・公開され、人気シリーズとして確立。2015年に「マッド・マックス 怒りのデスロード」が公開されると、「第88回アカデミー賞」で最多6部門を受賞した。そして最新作「マッドマックス:フュリオサ」が完成。監督はもちろんジョージ・ミラーが務め、内容は「―怒りのデスロード」の前日譚となっており、デスロードへつながる“怒り”の原点がここで明かされる。本作で「―怒りのデスロード」ではシャーリーズ・セロンが演じた“フュリオサ”役に起用されたのは、近年話題作に多数出演して注目を集めるアニャ・テイラー=ジョイ。役者業もさることながら、モデルとしてもディオールやティファニーといった世界的ハイブランドのグローバルアンバサダーを務め、Instagramのフォロワーは約1140万人を誇る。若者から絶大な支持を受けるファッション界の“おしゃれアイコン”的存在でもある彼女の軌跡を振り返る。

ホラー映画「ウィッチ」で注目


1996年にアメリカ・フロリダ州で生まれたアニャ。役者としてデビューし、最初に脚光を浴びたのはロバート・エガース監督によるホラー映画「ウィッチ」(2016年公開※日本公開は2017年)だろう。17世紀のニューイングランドを舞台に“魔女”への恐怖によって崩壊していくキリスト教徒の夫婦と5人の子どもたちの様子が描かれており、父に魔女ではないかと疑われる長女・トマシンに扮(ふん)した。同作は「第31回サンダンス映画賞」で監督賞を受賞したのをはじめ、高い評価を得ている。

「ウィッチ」に続いて、「シックス・センス」「アンブレイカブル」を手掛けたM・ナイト・シャマラン監督のサイコスリラー映画「スプリット」に出演。アニャは、解離性同一性障害(多重人格)者に誘拐される女子高校生の一人・ケイシーを演じた。クラスの中で浮いた存在だったが、冷静さを失わず毅然とした態度を見せるなど、演技面でも強い印象を残している。同作の続編として「ミスター・ガラス」が2019年に公開されたが、そちらにもケイシー役で出演。一連のホラー映画、サイコスリラー映画への出演によって“絶叫クイーン”と呼ばれるようになり、演技における新しい才能に対して贈られる「英国アカデミー賞」ライジング・スター賞にもノミネートされた。

俳優、モデルとして活躍の場を広げるアニャは、2020年に人気アメコミを原作とする「X-MEN」シリーズのスピンオフ映画「ニュー・ミュータント」(ディズニープラスで配信中)で主演を務めた。同作は、マーベル・コミック「The New Mutants」を「X-MEN」シリーズのスタッフが映画化。監督は「ハッピーエンドが書けるまで」などのジョシュ・ブーンが務め、製作総指揮のスタン・リーに加え、製作には「X-MEN:ダーク・フェニックス」で製作・脚本・監督を務めたサイモン・キンバーグなど、強力なスタッフがそろった。シリーズ初の青春ホラーにして、若手実力派キャストが豪華共演したことも話題となり、アメリカでは初登場1位を記録するほどの人気ぶりだった。

まだ自らの特殊能力をうまく扱うことができない若きミュータントたちが、苦悩し、葛藤を抱えながら運命に立ち向かっていくという物語で、アニャは勝気な性格の“マジック”ことイリアナ・ラスプーチンを好演。ここでもホラーテイストな作品で彼女の魅力がいかんなく発揮された。

アニャ・テイラー=ジョイ※画像はアニャ・テイラー=ジョイのオフィシャルInstagram(anyataylorjoy)より

「クイーンズ・ギャンビット」も話題!…一気にブレイク


また、同年Netflixで配信されたドラマ「クイーンズ・ギャンビット」もアニャの存在を広く知らしめることとなった代表作の一つ。冷戦期を舞台にした物語で、アニャはチェスの天才少女エリザベス・ハーモンを演じた。養護施設の用務員にチェスを教わり、生活のためにコンテストに出場すると、たちまち才能を開花させ、強敵を倒していく。苦悩も含めたエリザベスの成長が描かれ、「第78回ゴールデン・グローブ賞」(テレビ部門)のミニシリーズ/テレビ映画部門で主演女優賞を受賞している。また、ジェーン・オースティンの小説「エマ」を原作とした「EMMA エマ」の主演を務めるなど、2020年はアニャにとって大きく飛躍した年となった。

2021年には映画「ラストナイト・イン・ソーホー」に出演。ロンドンを象徴する街SOHOを舞台に、1960年代と現在が交錯する幻想的な要素も多いサイコホラー映画。1960年代のポップカルチャーが大好きでファッションデザイナーを志望するエリー(トーマシン・マッケンジー)の夢の中に現れる、1960年代の歌手サンディをアニャは演じている。劇中では「恋のダウンタウン」を歌唱するシーンも。

2022年にはリベンジアクション・エンターテインメント「ノースマン 導かれし復讐者」、1933年に発覚した政治陰謀事件「ビジネス・プロット」をモチーフにした「アムステルダム」に出演。「アムステルダム」ではラミ・マレック演じる資産家トムの妻リビーを演じ、演技はもちろん、赤いドレスなど彼女が身にまとう美しいレトロファッションにも多くのファンが目を奪われた。この年にはもう一作「ザ・メニュー」にも出演。大西洋に浮かぶ孤島にある予約が取れない高級レストランが舞台のサスペンスで、アニャはグルメを気取るタイラーと同店を訪れるマーゴという女性を演じた。そのレストランには想定不可能なサプライズが用意されており、見る側も先が読めないストーリーとなっている。

2023年には大ヒットした映画「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」でピーチ姫の声を担当。そして2024年は2021年公開の「デューン 砂の惑星 PART1」の続編「デューン 砂の惑星PART2」にアリア・アトレイデス役で出演し、「マッドマックス:フュリオサ」へと続いている。

“絶叫クイーン”と呼ばれるホラー系の役を経て、芯のある強い女性を演じることが多いアニャ。「マッドマックス:フュリオサ」ではまた違ったタイプの“強い女性”を演じており、さらに演技の幅が広がりそうだ。

◆文=田中隆信