コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、「誰もが被害者にも加害者にもなるかもしれないと思わされた」と反響を呼び、6月14日より単行本が発売された人気作品「家族全員でいじめと戦うということ。」をピックアップ。
作者のさやけんさんが5月21日にX(旧Twitter)で同作を投稿。そのツイートには合わせて約7000のいいねと共に、多くの反響コメントが寄せられた。この記事ではさやけんさんにインタビューを行い、創作のきっかけやこだわりについてを語ってもらった。
「あのねぇママ、お姉ちゃん学校でいじめられてるんだって。」
ある日突然、ハルコと同じ小学校に通う弟がこんなことを言い出した。しかし、学校から帰って来たハルコはいつも通り楽しそう。「友達と公園で遊ぶ約束をした」と言い、すぐに家を出て行った。
それでも弟の言葉が気になったお母さんは公園に向かう。しかし、娘の姿はどこにも見当たらない。この日以来、ハルコの言動の矛盾が次々と判明していく…。
さらに、運動会の応援に行くと同級生のお母さんから衝撃的な一言。
「ハルコちゃん、1年生の終わり頃からずっと無視されてたって聞いたし…」
ハルコは4年間もひとりでいじめに耐え続けていたのだ。
いじめをなかったことにしようとする担任の先生はあてにならない。ハルコもいじめられていることを話してくれない。そこで、ハルコの両親は同級生のお母さんに話を聞きに行く…。
本作は娘をいじめから守るため、家族全員で戦う姿を描いた物語。読者からは「心が温かくなる」「素敵な話」「とても興味深い」「気持ちがよく分かる」など多くのコメントが寄せられている。
――「家族全員でいじめと戦うということ。」を創作したきっかけや理由があればお教えください。
我が子がいじめ被害にあった時、ついつい「何があったのか」「誰にやられたのか」という部分に注目してしまいこども本人がどうしたいのか、何を思っているのか、どうしてあげるのが本人にとって良いことなのか、という一番大切な部分が置いてけぼりになりがちです。
独占欲や正義感、他者とのほんの少しの違いや思い込みで引き起こされやすい小学校低学年のいじめ問題を俯瞰で見つめ、「大人はどうあるべきなのか」を見つめるきっかけになるのではないかと思い、制作をはじめました。
――本作の中で特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
ある場面で父であるアキオさんが口にした「私たちは親です。こどもの問題に対して、親が納得することをゴールにしてはいけない。」というセリフは、私自身の教訓にもなっています。
大切な我が子が誰かに傷つけられた時、きっと誰しもが相手に対して腹立たしく、許せないという気持ちでいっぱいになると思いますが、自分の気持ちを晴らすことに気を取られたりはせず、時には感情を抑え、本当に苦しいのは誰か、その子のためにどうしたらいいのかを一番に考えてあげることが大切だと強く感じた言葉でした。
――「心が温かくなる」「とても興味深い」など大きな反響がありましたが、コメントを読んだ時のお気持ちをお教えください。
たくさんの方からのひとつひとつのコメントが、とてもありがたく感じていました。このお話を書くにあたり、伝えたかった部分が読んでくださる方々に届いたことが本当に嬉しかったです。描き上げるまで長く苦しい時期もありましたが、たくさんのコメントに支えられ、描く力をいただきました。本当にありがとうございます!
――本作を通じて伝えたいメッセージがあればお教えください。
こどもたちの先生から聞いた話ではありますが、いじめというものはおおよそ小学2年生ごろからはじまるものなのだそうです。その頃のこどもたちのいじめ加害の内容は、仲間はずれや無視といった、被害者の訴えがなければ大人の目線では気が付きにくいようなものが主でその発端は、友達を守りたいといった正義感や、自分の苦手や好みを友達と共有したいだけであることも多いです。
必ずしも被害者と加害者と区切れるものばかりではなく、対応もとても難しいと思います。保護者がそういった仲間はずれに関わっていることも少なくはなく、大人の世界、そしてインターネットの世界でもこういった構図は多く見られます。いじめの加害者を咎めるだけで終わるものではない。そういった行為に対し、周りが同調しないことも大切であることを感じていただければ嬉しいです。
――今後の展望や目標をお教えください。
こどもたちが成長した時、胸を張って読んでもらえるような温かい気持ちになれる作品を描きたいなぁと思っています。
――最後に、作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いいたします。
このお話に興味を持ってくださった皆様、本当にありがとうございます。冒頭の部分は辛い描写が多く、読んでいて苦しい気持ちになることもあると思いますがこのお話はハッピーエンドです。最後は家族全員、笑顔で過ごせるようになるまでの日々を描いています。読み始めた時と、読み終えた後の感想はきっと違うものになるのではないかなと思います。ぜひ、最後まで読んでいただけるととても嬉しいです!
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