コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョンマンガ部」。今回は、「宙に参る」の第1話を紹介する。作者の肋骨凹介さんが、5月16日にX(旧Twitter)に本作を投稿したところ、1.9万件を超える「いいね」やコメントが多数寄せられた。本記事では、肋骨凹介さんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。
「本日は御多用中、御改装頂き誠に有難うございます。喪主を務めさせて頂きます…息子の宙二郎です」と葬儀で挨拶をしているのは、人工知能を搭載したロボット・宙二郎。その横には、喪服に身を包んだ鵯ソラが無表情で立っている。いまおこなわれているのは、ソラの夫・宇一の葬儀だ。
葬儀は“地理的な都合”で“遠隔葬儀”という形式。そのためソラと宙二郎以外はリモートでの参列となり、参列者1人ひとりの顔がディスプレイに映し出されて椅子に並べられている。お焼香のときには各参列者用のディスプレイを顔に装着したロボットが、代わりに焼香をするという近未来な葬儀だった。
やっと葬儀が終わり、ソラが「ふぅ…」と息を吐きながら椅子にもたれ掛かる。「おつかれ」「泣くかと思ってた」と話しかける宙二郎。ソラも自身の反応が思いがけないものだったようで、「自分でも意外だわ」と語る。しかし少し自虐的に「薄情だと思うかい」と言うソラに、「いんや」とすぐさま否定をする宙二郎。そのやり取りは、まったくロボットと人間とは思えない自然さだ。
宇一と最後のお別れをするために、斎場に移動したソラと宙二郎。ソラは一点を見つめて黙り込んでいる。そんなソラを気にかけて宙二郎が声をかけると、ソラは独り身の義祖母のことを心配しているようだった。そんな心配を感じたのか義祖母からメッセージが届いたのだが、そこでソラは遠い実家への帰省を考えるのだが…。
この物語を読んだ人たちからは、「面白過ぎて引き込まれた」「宙二郎かわいい」「淡々としているけれど温かい」「焼香ロボ手作りなのすごい」「これも愛だの形だよな」など、多くのコメントが寄せられている。
――『宙に参る』を創作したきっかけや理由があればお教えください。
2007年ごろからWEBで漫画を公開したり同人即売会に出たりしていました。機会があって名刺を頂いていたリイド社さんに「何かやらせてください」と不躾な連絡をしたところ親身に取り合って頂き始まった連載です。同人誌で描いていた話にSFっぽい話もあったのでそういう漫画はどうか、という話になり「宇宙、人工知能、葬儀」という要素が相性がいいと考え「宙に参る」の1話が出来ました。
――夫のために寝る間を惜しんで焼香ロボットを作ったというところに愛を感じました。本作を描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあればお教えください。
連載を立ち上げるにあたっての打ち合わせで「ストーリーが進むのもいいけど日常回のような話も挟めるといいですね」という話を担当さんとしていました。そういう回を挟もうと思うと作中の展開が極端に緊迫していると「そんな話しとる場合か?」となると思ったのでパワーバランスを極端に傾けて安定させる事で作品としての引きと日常感を両立させるように意識しました。この1話の以後、1巻分くらいまで読むとそういう話になってると思います。
――特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
コウア出発前の夜景などです。「宙に参る」までの同人誌などではあまり背景を描いていなくて「連載では背景をちゃんとしよう」という目標がありました。遠近法に沿ってなるべく正確に描こうとしていましたが気付いたらズレていて、でも見栄えは良かったので正確性よりも重視した方がいいこともあるなぁと気付いた所です。
――普段作品のストーリーはどのようなところから着想を得ているのでしょうか?
お題を決めてそれに関連する事柄を連想して話しになりそうか考えます。「宙に参る」は先述の通り「SFっぽい話」というお題があったので「宇宙」や「人工知能」がまず出て来て、そこから「死」とか「生活」とか「距離」があり「葬儀」に繋がって1話ができました。それ以降はざっくりゴールを決めてそこに至るまでにはこういう話が要るよなぁ、とまた経由地点的なお題をたてます。そのお題に対して同じ手筈で話づくりを繰り返しています。
――作画の際にこだわっていることや、特に意識していることはありますか?
なるべくわかりやすい絵になるよう気を付けてはいます。基本的に淡泊な絵柄なので最近は濃い色や書き込みのある部分をどう配置するかを考えています。あとは基本的に興味を持ってない人が読んで引っかかって貰わないといけないのであまり無い絵、ガジェットや台詞やシチュエーションがなるべく入るようにしています。
――今後の展望や目標をお教えください。
なるべく長く漫画家を続けていけるように頑張りたいです。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!
気温差の激しい折、お身体に気をつけてお過ごしください。
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)