山田裕貴インタビュー「演じたケンに対して、共感しかなかった」<「Ultraman: Rising」>

2024/06/19 08:30 配信

映画 アニメ インタビュー

保育士になりたかったほど子供が好きなんだそう(C)宮川朋久

エミとのシーンで初めて感じた父性


――今回、(赤ちゃん怪獣のエミを育てた)ケンを通して間接的に子育てを体験したワケですけど、大変さを実感しましたか?

山田 いやいやいや、世のお母さん方には絶対に頭が上がらないので、間接的に経験したなんて言えないです。ですが、僕の周りにも親になったという人が増えてきて、その人達の話を聞いたり、彼らの子どもを見たりしていると、本当に計り知れない大変さと愛情がそこにあるんだなと感じます。僕は、保育士になりたかったぐらい子どもが好きなんですが、好きっていう気持ちだけでは乗り越えられないくらい育児って大変なんだろうなって思いました。

あと、エミが敵に鎮静剤を打たれてしまうシーンがあるのですが、セリフを言いながら、本当に腹が立ったんですよ、自分の子供ではないのに。「ふざけんな!!」って。「あぁ、コレが父性なんだろうな」と初めて抱いた感情でした。もし自分に子供が居たらと想像しながら、エミとのシーンを演じたのですが、きっとケンと同じような感情を抱くんだろうなと共感していました。

「ヒーローだって完璧じゃない」


――子育てと本来の仕事との両立とか、今回のウルトラマンは今までに無い描かれ方ですよね。

山田 スゴく面白いな、と思います。でも、過酷すぎますよね。ウルトラマンって怪獣を倒さないといけないので、絶対にウルトラマンをやっているだけでも大変だと思うんです(笑)。なのに、それに加えて野球選手もやらなければいけないし、スーパースターだからカッコよく居続けて子どもたちに夢を与えなければいけない、ってもう何役やっているんだと。だからこそ、拾った怪獣の子どもを自分の手で育てようって思えるケンは素晴らしいと思います。僕だったら、ウルトラマンは辞めてしまうと思うので、彼に対してはものすごくリスペクトしています。

――怪獣と闘ってる最中に、普通のトーンで喋るのも、今までに無いウルトラマン像ですよね。感情丸出しで「チェッ」って言ったり、泣き言を言いながら闘ってるのがスゴく人間味があって新鮮でした。

山田 それがこの作品の良さじゃないですかね。今って、憧れている人を神格化しすぎてしまって、その人が何かミスをしてしまったら一斉に非難してしまう世の中じゃないですか。でも「ヒーローだって完璧じゃないんだ」と思わせてくれますし、今回のウルトラマンでスゴくいいなと思ったのは、怪獣を倒そうとしていないところ。ぶっ飛ばしてはいるけれど、「なぁ、話を聞けよ」って、「このままだとやられちゃうから、おとなしく帰った方がいいぞ」って言えるウルトラマンってなかなかいないと思うんです。「悪だから即倒す」ではなくて、1回話し合おうというスタンスは、僕はスゴく素敵だなって思いました。

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初の吹き替えでパニックになった理由


――今回、ケンを演じるにあたって心がけた事はありますか?

山田 吹替えなので、基本的にはオリジナル(英語版)のケンにテンションを合わせるようにしましたし、「人間である事」は忘れないように演じようと思いました。ケンの成長物語でもあるので、序盤では「ホントにもう限界だ!」という気持ちを表現しました。人間味が溢れていいと思いましたし、ウルトラマンになったからといって声を変えたりすることもしませんでした。

――声優のお仕事はいくつもされていますが、吹替えは今回が初めてですよね。

山田 はい。実は家で練習している時に、僕、パニックになっちゃたんです。例えば、他のアニメーションでは、鉛筆の線画で作られた無音の映像があって、そこにセリフを入れていくんですけど、今回練習用に頂いたのは、オリジナルのケン役の俳優さんの英語でのセリフが入っている状態の物で、その英語を聞きながら日本語の台本を見つめて練習していると、「えっ、今、どこの事言ってるの?」ってなってしまって。そう思っている間に次のシーンに進んじゃったりしていたので、流石に「これヤバいぞ」と思い、友達の(声優の)木村昴くんに、吹替えの練習はどうやったらいいのか尋ねました。

――木村さんのアドバイスは?

山田 まずはその海外の俳優さんが、どういうテンションでそのセリフを言っているのかを把握する。その次は、鼻と口、どっちで息をしているのか、どこでどう痛がったのか、吸って吐いて吸って吐いての回数や秒数も計って、それを全て台本に書く。そこまでしてから、やっと練習だ、と教えてもらいました。練習当初は、日中、他の作品の撮影をしていたので、帰宅してから毎日この作業と格闘していました(苦笑)。

わからない部分が無いほど自分と重なったケンの気持ち


――すごく大変だったんですね…。

山田 いや、格闘しながらもスゴく楽しかったんです。何で楽しかったかと言うと、子どもの頃から観ていたウルトラマンですし、先ほどお話ししたように自分と重なる部分も多かったので、追憶するような感覚もあったんですよね。そのくらいケンの気持ちに共感できない部分が無かったんです。だからこそスゴく「頑張ろう!」っていう気持ちになりました。

――オリジナルのケンのテンションに合わせたとの事ですが、さっき仰っていた父性が生まれたというのは山田さんの感性じゃないですか。そういうオリジナルとは違う感情が生まれた時はどう演じられたんですか?

山田 なるべく元のテンションに合わせて声をあてていったのですが、僕が思うサトウ・ケンもあっていいのではないかという気持ちもあったので、時にその気持ちを優先させていただく事もありました。英語と比べると日本語はあまり流れるように聞こえないですし、音の伝わり方も異なるので、日本語ではこういう音として伝わった方がいいとか、とにかく“音”は大事にしました。

――今回、190ヶ国で配信されて、どこの国でも山田さんの吹替えも選択できるんですが、世界中に自分の声が届くのは、どんなお気持ちですか?「ウルトラマン」は日本のヒーローだから、日本語で観てみたいって人も多いと思うんですよ。

山田 全世界で僕の声を聞いてもらえるんだ、なんて大それた事は考えてなかったですけど、「日本のヒーローだから」と思って日本語音声を選んでくれたら嬉しいです。

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