映画「ハリー・ポッター」どこがCGで、どこが実写? “空想の中にあるリアリティー”にこだわった監督たち

2024/07/10 18:00 配信

映画 コラム

映画「ハリー・ポッター」シリーズが7月10日よりムービープラスにて放送スタート『ハリー・ポッターと賢者の石』 © 2001 Warner Bros.

CS映画専門チャンネル「ムービープラス」開局35周年を記念して、水曜夜9時に新たなレギュラー枠「ワーナー ブラザース劇場」が誕生。第1弾として映画「ハリー・ポッター」シリーズ全8作が、7月、8月に2か月連続で一挙放送される。稀代のファンタジームービーとして知られる本シリーズは、2001年から10年にわたってシリーズ化。2011年公開の最終章からも10年以上が経つが、現在も新旧のファンに視聴され続け、世界的な人気を博している。いつまでも色褪せず、長年愛され続ける本作の魅力はどこにあるのか。“空想の中にあるリアリティー”という視点から本作を見ていきたい。

興収1兆円超え、全世界で愛される近代映画の金字塔


映画「ハリー・ポッター」は、1997年から2007年にかけてイギリスの作家、J・K・ローリングが発表した同名ファンタジー小説を原作とする作品だ。舞台は1990年代のイギリス。叔母夫婦の家庭で育てられた孤児の少年ハリー・ポッター(ダニエル・ラドクリフ)は、11歳の誕生日に自分が魔法使いであることを知り、ホグワーツ魔法魔術学校に入学することから物語は始まる。

ハリーは学校で出会ったロン・ウィーズリー(ルパート・グリント)やハーマイオニー・グレンジャー(エマ・ワトソン)ら同級生たちと交友を深めながら、様々な魔法を習い、ときに冒険を経験しながら学校生活を送っていく。やがて、ハリーは自身の出自を知り、かつて魔法界を支配した闇の帝王ヴォルデモート(レイフ・ファインズ)と対決することになる。

小説の第1巻「ハリー・ポッターと賢者の石」は刊行後すぐに世界各国で翻訳されるメガヒットとなり、当時、続刊を心待ちにしていたという人は数知れないだろう。ワーナー・ブラザース・ピクチャーズはこの原作全7巻を、8部作の超大作として映画化。シリーズ累計の興行収入は1兆円以上(※全世界、「ファンタスティック・ビースト」シリーズも含める)を記録し、近代映画界を代表する金字塔となっている。

シリーズ第1作目「ハリー・ポッターと賢者の石」 7月10日(水)夜9:00より© 2001 Warner Bros.


リアリティーに満ちた世界観、空想を現実にした映画の魅力


ファンタジーとは、言うまでもなく空想世界の物語だ。変身する魔法も、空飛ぶほうきも、透明マントも、怪物や妖精も、「ハリー・ポッター」の世界で描かれる魔法界の光景は全て空想、創造の産物だ。しかし、映画を観ていると、あたかも存在する世界を見ているかのような現実感に引き込まれていく。そもそもJ・K・ローリングのアイデアが絶妙なのだが、現代のイギリスを舞台にしていることで、異世界もののような非現実的すぎる世界観を初手から打ち払っている。古くから魔法使いの伝承が残るイギリスで、じつはマグル(非魔法族)が知らないだけで本当にあると思える魔法界の物語。

例えば、実在するロンドンの鉄道ターミナルであるキングス・クロス駅に隠された“9と3/4番線”。魔法使いにしか分からないこの秘密のプラットフォームを目指し、ホグワーツの学生たちが9番線と10番線の間の壁にカートを押して、消えていく。そこから走る、ホグワーツ魔法魔術学校に向かう蒸気機関車(ホグワーツ特急)。また、様々な魔法用品が並ぶ魔法使いの商店街“ダイアゴン横丁”や、ロンドンの地下に存在する秘密の施設“魔法省”など、「ハリー・ポッター」の世界は、今現実に存在し、扉を開ければそこにあるようなリアリティーに満ちている。

映画シリーズのすばらしいところは、小説で書かれ、想像を巡らすしかなかったこの魔法界の光景を、視覚的体験にして届けてくれたことにある。最新のVFXにより生まれる魔法界の美しい風景やホグワーツ城の荘厳な建築。バタービールや百味ビーンズなど、味の想像が止まないユニークな食べ物。ヒッポグリフやベビードラゴンなど魔法生物たちのリアルな描写…などなど、映像には誰しもが心躍る視覚的な楽しさが満載だ。前述した魔法界への入口となる“9と3/4番線”はその代表格で、「ハリー・ポッター」と言えば、このシーンが強く記憶に残っているという人は少なからずいるだろう。

【写真】美しすぎる、空想と現実が混じるような「ハリー・ポッター」の世界観『ハリー・ポッターと賢者の石』 © 2001 Warner Bros.