明日海りお、39歳の誕生日 “宝塚のカリスマ男役”から飾らないマルチ俳優への軌跡 “ディズニー最強ヒロイン”の日本版声優も

2024/06/26 06:10 配信

映画 音楽 コラム

明日海りお※画像はWEBザテレビジョン タレントデータベースより

俳優・明日海りおが、6月26日に39歳の誕生日を迎えた。宝塚歌劇団トップスターとして絶大な人気を誇り、退団後はドラマ・舞台、さらに声優としても活躍する“マルチ俳優”明日海の魅力に迫る。

宝塚時代は「花の89期」


明日海の芸能キャリアは、2003年に宝塚歌劇団に入団(89期)したところから始まる。この89期生にはミュージカル俳優の望海風斗、声優アーティストの七海ひろき、舞台やモデルでも活躍する美弥るりからがおり、「花の89期」とも言われる。入団後月組配属を経て、劇団100周年の2014年に花組男役トップスターに就任。通常、トップスターの任期は2~3年程度のところだが、2019年11月まで5年半という長期にわたって務めた。代表作には、再演が繰り返されてきた人気の演目「エリザベート ―愛と死の輪舞―」や、萩尾望都の名作漫画を初めてミュージカル化した作品「ポーの一族」がある。

明日海の男役としての魅力は、中性的で端正な容姿と歌唱力、そして苦悩する様すら絵になる情感豊かな演技にある。「フェアリータイプ」とも言われる浮世離れしたスター性は、とりわけ「ポーの一族」での年を取らないヴァンパネラの少年・エドガーにぴったりだった。5組のスター中でもトップクラスの人気を保った明日海は、2019年には現役トップスター初の神奈川・横浜アリーナでのコンサートも開催し、「トップオブトップ」とも呼ばれた。

退団後の芸能活動は2020年のディズニー実写映画「ムーラン」(ディズニープラスで配信中)の吹き替えから始まった。同作は、古代中国を舞台に、父の代わりに男性と偽って兵士となったムーランの活躍を描く物語。明日海は“ディズニー史上最強ヒロイン”であるムーランの日本版声優を務めた。

同作出演にあたって、公開時には当メディアの取材に「宝塚を卒業後、まだ何をするのか全く決まっていない状態でこのオーディションのお話を聞きました。『まさか大好きなディズニーの実写版映画の吹き替え声優なんて!』と驚きとうれしさがありましたね」と喜びを語っていたが、ハスキーながらも女性らしい柔らかさを持った声色で、戦うムーランの繊細さにもマッチしたものだった。明日海のボイスは「男役」を脱した後も、低く中性的、かつ大人っぽさがある声色が持ち味。「ムーラン」ではそれよりも女性的に演じていた。

「おちょやん」で“朝ドラ”初出演


こういった持ち味と、元男役スターというキャリアから、映像では頼もしい女性や凛とした、ちょっと気になる脇役が回ってくる。連続テレビ小説「おちょやん」(2020-2021年、NHK総合ほか)では主人公・千代(杉咲花)らの鶴亀家庭劇に参加する、東京新派劇の名門「花菱団」元トップ女優・高峰ルリ子として出演して存在感を示した。2024年1月クールのドラマ「推しを召し上がれ~広報ガールのまろやかな日々~」(テレ東系)では、主人公の朋太子由寿(鞘師里保)の先輩で教育係の緑川逸美役に。由寿を優しく鍛える格好いい先輩キャリアウーマンを演じた。

俳優業一筋の宝塚OGが多い中で、明日海はバラエティーでも飾らない素顔を見せている。2022年にHuluの配信番組「明日海りおのアトリエ」で都会の喧噪を離れて各地の伝統文化や風景を体感、東京の芸能界での多忙な日々では見せないリラックスした姿を見せた。

もちろん舞台では退団後もエドガーを演じた「ポーの一族」(2021年)に始まり、「ガイズ&ドールズ」(2022年)のサラ、2024年4月に日生劇場で上演された「王様と私」のアンナと、歌って踊れるヒロイン役も歴任。宝塚時代の同期で、音楽学校生時代には寮で同室だった望海とは今でも舞台業界で切磋琢磨し合える関係にあることとも、ファンにとっては琴線に触れるところだ。

三拍子そろった俳優であることはもちろん、劇場を飛び出してストイックに新しいジャンルに挑み、気さくな素顔も発信してくれる。そこに明日海の、舞台上でのオーラからは想像しがたい飾らない魅力があり、人はいっそう好感を抱いてしまうようだ。

◆文=大宮高史

関連人物