祝誕生日、井川遥“癒やし系の女王”から“芯の強い女性”ハマる俳優へ「拾われた男」では本人役で葛藤表現

2024/06/29 06:10 配信

ドラマ 映画 コラム

本人役で“癒やし系”の葛藤を表現


そんな中、“本人役”で出演したNHK BSプレミアムで放送された「拾われた男」(2022年、ディズニープラスで配信)でドキッとさせられる場面があった。

仲野太賀が主演を務める同ドラマは、俳優・松尾諭が自らの波乱万丈なサクセスストーリーを描いたエッセーが原作。松尾は芸能事務所の社長に“拾われ”、下積み時代に事務所の売れっ子だった井川の運転手をしており、ドラマでもそのエピソードが盛り込まれた。

そこで仲野演じる松戸諭は、井川が演技でも“癒やし系”を求められて葛藤する姿を目の当たりにするのだ。自分なりに役を捉えた感情表現をしたくても、監督に「何見ても癒やされたい時代だから、ホラーでも」と言われてしまったり、首を45度にかわいく傾けるのを求められたり。

同ドラマの出演者発表の際、井川は「実際のところかなり寄せているところとフィクションが入り混ざり…」とコメントを出しており、どこまでがフィクションなのかは定かではないが、劇中では本当はプロレス好きな“白熱系”。癒やし系というイメージから、走ったりするだけで「意外」と言われることが「意外」とも明かしていた。

この作品で描かれたのは、まさに“癒やし系の女王”と称されていた時代。癒やし系という称号はおそらく外からつけられたもの。「誰も興味ないんだよね~、本当の私のことなんか」というせりふにズキっとする。

だが、「私の代わりなんていくらでもいるしさ」という続けてのせりふは、現在の活躍を見れば“そんなことはない”と断言できるのだ。


芯の強さがある女性の役がぴったり


2023年は、2本のドラマで主人公の妻を演じた。「罠の戦争」(フジテレビ系)は、草なぎ剛演じる衆議院議員秘書が息子を瀕死の重体に追いやった犯人探しと、それを隠蔽しようとした議員に復讐(ふくしゅう)する物語。井川は復讐の危害が及ばないように離婚しようとする夫を支えると決意する妻役だ。息子を思うつらさや悲しみの中で、夫を懸命に支える優しさを見せつつ、最終回では、あるきっかけから自ら立ち上がる強さをキリっとした雰囲気で見せた。

「下剋上球児」(TBS系)では、鈴木亮平演じる弱小高校野球部監督・南雲脩司の妻・美香役で、“姉さん女房”のしっかりとしたところを出していた。

どちらも、夫を支え、いざとなればの芯の強さがある役どころがぴったりとハマっていた。癒やし系からの脱却というのも少し違うかもしれない。優しい笑顔は変わらず相手役や見る者を癒やしながらも、母や妻として、また女性として芯の強い役をこなしていける演技力にこれからも期待したい。

◆文=ザテレビジョンドラマ部

※「草なぎ剛」のなぎは、弓へんに前の旧字体その下に刀が正式表記

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