EXOやMONSTA Xのメンバーの出演で話題となった「社長ドル・マート」が“ただのアイドルドラマ”で終わらない理由

2024/06/30 12:00 配信

ドラマ レビュー

最終回でメンバーが決意した、マートと自分たちの未来(C)2023 The Great Show・PONY CANYON

イ・シニョン×シウミン×チェ・ヒョンウォン×チェ・ウォンミョン×イ・セオンという若手人気俳優&トップアイドルという、フレッシュな顔ぶれがそろった韓国ドラマ「社長ドル・マート」(Huluにて配信中)。豪華キャストで話題になった本作は、どん底に落ちた元アイドルたちの友情と成長の物語を描いている。庶民の生活には欠かせない“マート”を舞台にしたコメディと謎、そして大きな喪失を乗り越えた青年たちのドラマを、同記事でいま一度振り返る。(以下、ネタバレを含みます)

「社長ドル・マート」とは


夢と希望を胸にデビューした男性アイドルグループ“サンダーボーイズ”。デビュー5年目にして、念願だった音楽番組の1位候補に。しかしステージで結果を待つメンバー5人の元に、衝撃的なニュースが飛び込む。そして彼らの夢は粉々に砕け、グループは解散することに。

5年後、29歳になったリーダーのチェ・ホラン(イ・シニョン)は、ある日、ひょんなことから警察に呼び出される。そこでサンダーボーイズのメンバー5人が、あるマート(スーパーマーケット)のオーナーであることを知らされた。

そのマートとは、練習生時代の思い出が詰まった“ポラムマート”。チェ・ホランはメンバーのシン・テホ(シウミン)、チョ・イジュン(チェ・ヒョンウォン)、ウン・ヨンミン(チェ・ウォンミョン)、ユン・サンウ(イ・セオン)らを呼び寄せ、経営難だったポラムマートの再建に乗り出す。

最初は苦労と失敗の連続だったが、次第にかつてのチームワークを取り戻し、個性を活かしたアイデアで店を盛り立てていく。アルバイトのオ・イェリム(チェ・ジョンウン)や、師匠のパク社長(ソン・ヨンジェ)の力も借りて客の心をつかみかけた彼らだったが、謎の仮面男の登場とともに陰謀に巻き込まれることになる…。

キャストには、日本で高い人気を誇る韓国ドラマ「愛の不時着」出演で注目を浴びたネクストブレイク俳優イ・シニョン、大人気K-POPグループ「EXO」メンバーのシウミン、「MONSTA X」のチェ・ヒョンウォン、若手イケメン俳優チェ・ウォンミョン、イ・セオンら話題の大人気若手俳優やトップアイドル陣が起用された。

青春コメディ×謎解きを含むストーリーがポイント


本作は大きく2つのテーマが柱となっている。経験のないマート経営を通して5人がそれぞれ成長していく姿と、コメディ要素を含みつつも謎の多い事件の真相に迫っていくストーリー展開だ。

5年前、メンバーの事故によって人気絶頂のなか突然解散したアイドルグループ「サンダーボーイズ」。グループの解散から5年間、各メンバーは連絡を取ることもしてこなかった。だがマートのオーナーが“サンダーボーイズ全員”という驚きの報せを機に、それぞれ仕事も生活環境も異なる5人が再会を果たす。

もちろんはじめは問題ばかりだった。夢のために努力を続けていた者、フラフラと定職につかなかった者、田舎で実家の手伝いに明け暮れていた者、動画配信者としてデカい一発を狙っていた者…。個性の強いメンバーたちは、離れていた5年間を埋めるように衝突を繰り返す。ときには経営を深く考えず、借金を作ってしまうことも。

しかしグループの元リーダーであるチェ・ホランを中心として、次第にそれぞれがマートのオーナーとしての自覚を持ち始める。実直に先達から教わって縁を繋ぎ、突発的なアイデアでその場のお客さんを盛り上げ、練習を積んで魚をさばけるように学ぶ。降って湧いた機会のついでではなく、本気でマート経営に取り組み始めるのだ。その姿からは、メンバーたちの精神的な成長を強く感じることができる。

元々大切に思いあっていたメンバーだけに、話が進むなかでときをさかのぼるように絆が深まっていく。かばうだけでも甘えるだけでもない、5人がそれぞれの力を振り絞ってほかのメンバー全員を支える。健気で尊い姿は、まさに青春そのものといっていいだろう。

またストーリーにおいても、注目すべき点がある。それは物語の始めから散りばめられた“謎”の数々。カラフルな映像が多くコメディ要素が強めの印象がある同作だが、「1話で登場する南京錠のかかった部屋」「度々マートに嫌がらせをする覆面の男」「5人がオーナーに指名された経緯」といった陰を湛えているのだ。

特に「サンダーボーイズが解散した理由」は、5人が道を違えた理由でもある。「5人がオーナーに指名された経緯」も含め、物語のなかで段々と明かされる謎の答え。日常のおふざけシーンは楽しく、謎を明らかになる際は引き締める…当たり前に聞こえるが、そうした緩急のバランスが「社長ドル・マート」の完成度を引き上げているように感じた。