映像にもこだわりが詰まっている。撮影は約120日間に及び、330か所で実施され、4か所のメインスタジオ以外はすべてロケーション撮影だったという。生活感あふれる路地や埃っぽい倉庫など実在する場所で演技が行われることで、シーン一つ一つに温度や湿度、においまで漂ってきそうな臨場感が生まれた。一方、回想シーンはどこかセピア色じみていてスタイリッシュ。生々しい現実のシーンとの違いが際立つ。
監督が思いを託したキャスト陣も、素晴らしい顔ぶれだ。特に目を引くのは、W主演を務めるチェン・シャオとワン・イーボー。チェン・シャオは、潜伏生活を続けるウー・ジェンフォンを演じるため撮影前に減量。高貴な雰囲気で宮廷警察のエリートを演じた「夢華録」とは打って変わって、ボサボサの髪に目を鋭くギラつかせ、セクシーかつミステリアスな佇まいで、ファンを魅了する。
対するイーボーは、「陳情令」の藍忘機(ラン・ワンジー)を思わせる冷たく射抜くような眼差しが印象的。イーボー演じるチェン・ユーが強烈な眼力で容疑者たちに立ち向かうアクションシーンも、見ごたえ十分だ。
フー・ドンユー監督は、若い2人の主演俳優の演技の実力を最大限まで引き出すことを意識して撮影に臨んだという。そんな2人の登場シーンで特に印象深いのが、2人が警察官と容疑者として久しぶりに言葉を交わす場面だ。
チェン・ユーに信じてほしいからこそ「変わらないな、ガキの頃と。売人だと決めつけてる」と熱くなるウー・ジェンフォンに対し、情をかけらも見せず「ではそれが決めつけではなく間違いだと証明してくれ」と淡々と応じるチェン・ユー。事件の真相に近づく中で、2人が切ないすれ違いを重ねながら少しずつ絆を取り戻していく過程に胸が震える。
氷の上を歩くように注意深く捜査に向き合う警察官の姿を現す“冰”と、薬物犯罪の恐ろしさを意味する“雨”、そして、真実を追い続ける警察官の心の炎を現す“火”――と、男たちの熱い戦いがタイトルにも投影された「冰雨火」。7月11日(木)夜9:00から「女性チャンネル♪LaLa TV」で放送される本作で、その強烈な熱量をぜひ体感してほしい。
◆文=酒寄美智子
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