テレビアニメ「鬼滅の刃 柱稽古編」(ABEMA・FOD・Hulu・Leminoほかで配信)が6月30日放送の第八話「柱・結集」をもって最終回を迎えた。「柱稽古編」では柱を中心にキャラクターの掘り下げが行われたが、その中で1つテーマを挙げるとすれば、「つながれる想い」ではなかろうか。このテーマをもとに改めて作品全体を振り返ってみたい。
「つながれる想い」というのは、「鬼滅の刃」の物語全体を貫く重要な要素だ。登場人物たちの多くが、過去の悲しみや希望を託し、託されることで強くなり、戦いの道を歩んでいく。
主人公の竈門炭治郎は、家族を鬼に殺され、唯一生き残った妹の禰豆子が鬼となってしまったことから鬼狩りの鬼殺隊に入隊した。家族の無念を晴らすこと、禰豆子を人間に戻すこと、これ以上自分のような不幸な人間が生まれないようにすること。炭治郎はそれを胸に前進し、道程では幾人もの相手から想いをつなげられてきた。
例えば、鱗滝左近次。炭治郎の師匠である鱗滝は引退した元水柱だ。鱗滝の厳しい指導は技術を教えるだけでなく、鬼と戦い抜くための強い意志と覚悟が試される試練でもあった。また、鱗滝の修行は炭治郎を助けるものであり、同時に止めるものでもあるという、複雑な心中が混じるものでものでもあった。このときの鱗滝は冨岡義勇以外の全ての弟子を最終選別で失くしており、炭治郎が二の舞になることを恐れていたからだ。
しかし、そんな鱗滝の想いを知り、炭治郎につなげたのが、かつて最終選別で亡くなった鱗滝の教え子、錆兎と真菰の魂だ。2人は道半ばにして途絶えた自分たちの想いも炭治郎につなげ、最終選別に送り出す。そして炭治郎は、「柱稽古編」第二話にて錆兎と義勇をつなぐ。それは義勇にとって、修行時代に叱責された錆兎の大切な言葉と、自分の命は姉が命をかけてつないでくれたのだということを思い出させてくれるものだった。
炎柱・煉獄杏寿郎の遺志もまた、「つながれる想い」の象徴的な例になる。上弦の参・猗窩座との戦いで、杏寿郎は自らの命を犠牲にして仲間と無限列車の乗客を守りきった。最期のとき、炭治郎、我妻善逸、嘴平伊之助に送った「心を燃やせ」「今度は君たちが鬼殺隊を支える柱となるのだ」という言葉は死後もなお生き続け、3人に深い影響を与えている。また、杏寿郎が、父、弟に向けた想いは炭治郎によって届けられ、杏寿郎の刀の鍔は炭治郎に託された。
柱をはじめ、鬼殺隊の他の隊士たちも、それぞれの背景に「つながれる想い」を背負っている。霞柱・時透無一郎もその1人だ。彼の双子の兄・有一郎は10歳という幼い身の上ながら、必死に弟・無一郎を守りながら生き、最後まで無一郎の身を案じながら息を引き取った。また、鬼殺隊を統べる産屋敷の一族も同じくだ。千年間、鬼舞辻無惨を追い、滅するために一族の悲願をつないできた。現当主・産屋敷耀哉は戦死した隊士全ての名前を記憶に刻んでいる。
さらに言えば、敵対する鬼たちもかつては人間であり、中には最終選別での手鬼や上弦の陸・妓夫太郎、下弦の伍・累のように、家族や大切な人とのつながりを持つ者もいた。鬼となる過程で人間性や大切な記憶を失いはしたものの、以後も彼らの行動に大きな影響を与えている。首を刎ねられ、塵となる直前に見せた人間らしい表情や後悔は、「つながれる想い」のもう1つの側面を表現していると言えるだろう。
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