福田沙紀、“1話1分”のショートドラマで初監督『聞いていたのと違う、どうしよう』 「ライフ」で感じた刺激が糧に<大人に恋はムズカシイ>

2024/07/08 20:00 配信

ドラマ インタビュー

「大人に恋はムズカシイ」で監督に初挑戦した福田沙紀と「BUMP」代表取締役の澤村直道が対談を行った

福田沙紀が初監督を務めるショートドラマ「大人に恋はムズカシイ」が、7月8日(月)夜6:00よりショートドラマ配信アプリ「BUMP(バンプ)」にて配信スタート。同作は、大人になり忖度やプライドが捨て切れない一人の女性が、年下男性と出会い、その真っすぐな思いに感化され素直に愛する気持ちを取り戻していく物語。

このたび、Z世代女子を中心に人気を集める1話3分のショートドラマ配信アプリ「BUMP」の初の試みとして、“1話1分”のショートドラマが誕生。全29話にもわたる同作で監督に初挑戦した福田と、「BUMP」代表取締役の澤村直道が対談を行い、新たな挑戦に懸ける思いや作品に込めたメッセージを語った。

「20歳くらいの時から作品づくりに興味があった」


――今作で監督を務めることになった経緯を教えてください。

福田:元々20歳くらいの時から作品づくりに興味はありましたが、そんな機会はもちろんありませんでしたし、簡単に挑戦できるものではないと思っていました。

でも、30歳になる前に長年お世話になった事務所を退社し、コロナ禍を機に自分のYouTubeチャンネルを立ち上げて。今までは会社があってマネジャーさんがいて動いてくださる方々が周りにいるという環境にいたけど、撮影も編集も「まず自分で全部やってみよう!」というふうに自分の中のシフトを変えてみたんです。

それこそカット割りや音楽の付け方、独学でやっている韓国語や日本語の字幕を付けるなど、映像制作の過程を実際に体感してみると、すごく楽しくてワクワクして。そんな時に、同じ熊本県出身で、「BUMP」で作品づくりをされている山口龍大朗監督からお声掛けいただき、澤村さんともお話しして、今回の機会をいただいたという形です。

――長年俳優として活動する中で、裏方に興味を持ったきっかけのようなものはあったのでしょうか?

福田:デビュー以来、演者という部署で作品づくりに関わらせていただきましたが、現場に行けば行くほど、シンプルに「1からの作品づくりの過程を見てみたい」という気持ちが芽生えていきました。

特に大きな刺激を感じた作品は「ライフ」(2007年、フジテレビ系)でしょうか。例えば、歩(北乃きい)が靴箱から靴を取って、扉を閉じたら後ろに突然、私が演じるいじめ加害者の愛海がいる、といったゾッとするようなカメラワークや演出が印象的で。

監督やカメラマンさんをはじめ、全てのスタッフさんの集大成、総合芸術ですよね。現場でそういうワクワクを積み重ねる中で、自分の中のクリエイティブへの気持ちがどのように存在しているのかも確かめたくなったし、“ゼロイチ”を作るということを知りたいなと思うようになりました。

突然の進路変更に驚き「聞いてた話と違うじゃない!」


――脚本家の灯敦生さんや俳優陣を含め、若いクリエイターの方々とのお仕事だったかと思いますが、作品づくりの現場はいかがでしたか?

福田:もうすぐデビュー20周年ですが、今までどうしても現場では自分は周りより年下という感覚があったので、周りのスタッフさんに「あのドラマ見てました」と言われるなど、作品の印象から入られることが不思議な感覚でした。

そういう言葉がシンプルにうれしいですし、スタッフの皆さんとどれだけいいものを作れるか、気合が入りましたね。最初は「BUMP」さんからいくつか企画をご提案いただいて、それをブラッシュアップしていく作業でした。

脚本は灯さんにベースを作っていただいた上で、監督として書かせていただいた部分もあります。演者として一番やりやすい流れ、心情の部分の交通整理をさせていただくような形です。

最初は1話3分の全10話予定でしたが、進んでいくうちに市場の変化があったようで、澤村さんから「できれば1話1分、30話を目指そう」と言われて、もうびっくりでした(笑)。「ちょっとちょっと!聞いてた話と違うじゃない!」みたいな(笑)。

要は1話の中で“最初の引っかかり”と“次が見たくなる最後のフック”を元々は10話分、最低でも20個は必要だと思って考えていたところが、30話になったことで60個作らなくちゃいけなくなったんですよ(笑)。その時はちょっと焦りましたね。

「大人に恋はムズカシイ」より


――3分尺を1分尺に変更するに至る“市場の変化”について、具体的にお聞かせください。

澤村:ショートドラマの市場は中国がすごく進んでいて規模も大きいのですが、その中国の作品は大体1分半とかで展開されているんです。

うちは3分が主ですが、その3分の中の1分間とかを切り抜いてSNSのショートに投稿していたりしたんですよ。そしたらSNSで最初にそのショート動画に触れて興味を持って「BUMP」に入ってくれた方から「1分の方が見やすい」という声があったりして。もう3分でも長いんですよね。

僕が事業を立ち上げた際も、本当は1話1分を目指していましたが、脚本を作る中で、なかなか難しいなと感じて3分にした経緯があったので、この作品で1分に挑戦してみたいですという話をさせていただきました。沙紀さんにも柔軟に対応いただいて…。

福田:「やんなきゃ!」って感じでした。結局どんなお仕事でもいろいろな変更は絶対出てくるし、それにどれだけ柔軟に対応していいものを作れるかじゃないですか。

私はどちらかというとそういう方が燃えるタイプなんですよね。初監督なのに「聞いていたのと違う、どうしよう」とも思いましたが、そういう制限の中で「より良いものを!」というところにとにかく燃えました。

――1分ドラマだからこそ必要になる、演出の工夫はどんなところでしょうか?

澤村:“間の詰め方”といった部分は、沙紀さんはすごいなと思いました。映画やドラマをやられてきた方だと、そのルールの中で最適なものを作りたくなりがちなんですが、ショートドラマって映画やドラマとは競技が別物なので、柔軟性を持つのは結構難しいんです。

自分が作り上げてきたものを壊しながら新しいものに挑戦しなきゃいけないと思うんですが、沙紀さんは現場でも「これは長すぎるよね」とご自身から提案してどんどん間を詰めていくんです。

他の監督って結構間を取りたがるんですが、沙紀さんは逆で。短さを追求するとチープになりがちなんですよ。大事な間や感情のつながりが飛んじゃったりするので。でもそこを担保しながら、ただ長くない、くらいの絶妙なバランスを作ってくださいました。

福田:そりゃ、役者側からすると“間”って大事ですよ。気持ちの流れというものがあるので。でも自分の中になんとなくのテンポというのが感覚としてあって、それさえあまりに崩さなければ大丈夫だと思って演出していました。

脚本についても、私も役者をやっているからこそ、せりふの順番や言い回しなどの「気持ち悪さ」「引っ掛かる部分」をできるだけなくしてから俳優部に脚本が渡るように交通整理をさせていただけたかなと思っていて。灯さんとも確認しつつ、一緒にアプローチするのがすごく楽しかったです。

それで撮ってみていざ編集段階に入った時も「あ、いける」と思って。短いとも長いとも感じず、成立していたなと。

自分の頭の中のものをどんどん組み立てていく作業がめちゃくちゃ楽しく、撮影期間は5日間くらいでしたがずっとアドレナリンが出ていて、集中が切れる瞬間も全くなくて。むしろ“最強モード”というか。自分が引っ張らなくてはという気持ちもあり、全力で楽しみました。