コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、週刊漫画ゴラクとWebゴラクエッグで連載中である洋介犬さんが描く『黒懺悔』より『世の中ナメてる女子がインチキ懺悔室を作って、地獄を見る漫画』をピックアップ。
洋介犬さんが2024年6月17日にX(旧Twitter)で本作を投稿したところ、多くの「いいね」と反響コメントが寄せられた。本記事では、洋介犬さんにインタビューを行い、創作のきっかけや漫画を描く際のこだわりについて語ってもらった。
主人公は社会をナメまくっている少女・聴村(きむら)りすん。ある日家で観た映画に影響され、ホームセンターで購入した材料で「懺悔室」を作る。そして社会をナメきった価格設定「一懺悔 一万円」で「懺悔」を聞くことにしたのだった。
初めて来た客は「私は妻をバラバラにしました」と告白。りすんはなぜバラバラにしたのかを聞くが、あまりの内容に冷や汗をかく。さらに「殺すことに抵抗はなかったんですか?」と聞くと、「私は妻をバラバラにしただけです」と平然と言われてしまう。
話が嚙み合わないと感じながらも、他人に秘密を話すことですっきりし客は懺悔を終える。帰っていく彼の後姿を眺めるりすんは、背負っているリュックサックが開き、中から妻であろう顔がのぞいているのを見てしまう。そしてりすんは、世の中には人に話したい暗黒の秘密を持っている人がいるのだ、と興奮しながら懺悔室を続け、どんどんと正気を奪われていくのだった…。
作品を読んだ読者からは、「こいつは闇が深すぎる!!」「いつまで正気を保ってくれるのか、愉しみ。」など、反響の声が寄せられている。
――『黒懺悔』は、どのようにして生まれた作品ですか?きっかけや理由などをお教えください。
きっかけは映画「エクソシスト3」においての「懺悔室でのシーン」が印象深く、いつか「懺悔室」というシチュエーションでのホラー漫画を描いてみたいと思っていたことです。
その後ノウハウの蓄積や「訪れるのは基本的に罪や呵責を抱いた人々であり、そこに闇がある…どころか闇の坩堝なのでは」と構想が固められたことからスタートしました。
――今作を描くうえで、特に心がけた点や大切にしている点などがあればお教えください。
まずは本物の宗教ではなく「インチキ宗教である」こと。
ヒロインのりすんが非常にナメた気持ちで高額を告解者からとっていることを設定し、ここがキモだと思いました。
「インチキで高額な懺悔室であるのに、いやむしろそうであるからこそ告解者が殺到している」という滑稽な構造を作ることに成功したのは、日本の説得力のある光景として成功した気がします。
それに加え、今回の漫画はサイコホラーのみならず、泣ける話、笑える話も入れようと担当H女史とも話し合いました。
――今回の作品のなかで、特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
第二話の「推し作家へセクハラクソリプをする連中を探し出して殺していくガチファン」の話は印象深いですね。
僕自身も好きな作家さんへのあまりにひどいリプを第三者として見て気分を害することはあり(もちろんストーキングはしませんが…)、「SNSって当事者同士だけでなく第三者にも見えているというのは非常に大きな要素なのに、すぐ忘れられてしまう、麻痺してしまう。その意味ともたらすことを考えないといけない」と自戒込みで考える回になったと思います。
――多くのホラー作品を手掛けれていますが、普段どういったことから着想を得ていらっしゃるのでしょうか?
元4コマ漫画家だった時の訓練で「日常生活を送っているだけで身の回りで起こったことをネタに自動変換する」という訓練を受けたので、「さぁ考えるぞ」と思って考えていることはないです。
いつの間にかネタ帳が満載になっている感じです。
――洋介犬さんご自身や作品について、今後の展望・目標をお教えください。
こういうディフォルメの効いたリアルではない絵柄なのに、僕の作品は非常にリアルとして受け取っていただける作用があるらしく、そのために「リアルを反映し、リアルに応用できる」ものを強く打ち出そうと今後の強化方針として打ち出しています。
なので「純ホラー」というよりは風刺性とのハイブリッドの「混成ホラー」がメインになっていくと思われますし、それを望まれているとも感じています。
――最後に、作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
新人時代は「クセがない」と編集さんに難色を示されたことを思えば、ホラーに転向して「クセ強すぎ作家」に化けれたのは幸いでした。
願わくばそれがみなさまにとってエンタメであり、何かの生きるヒントや活力になるような副産物をもたらせればと思います。
「4番でホームランバッター」ではなく「相手の嫌がる小技の7番打者」タイプですが、存在感を発揮できるよう頑張ります。
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