中沢元紀“航平”の懐にするりと入ってしまう、小林虎之介“太一”の人懐っこい明るさが感動を呼ぶ<ひだまりが聴こえる>

2024/07/10 09:31 配信

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太一「お前だって話しやすいじゃん」


航平と太一は並んで弁当を食べ、航平は手話は必要ない、人の口を読むほうが楽だと話す。「佐川くんにはそれもあんまり必要ないけど。よく通る声だって言われたことない?」と航平が聞くと、太一は「あるある、声でかいからうるせぇって」と笑う。

「いいことだよ。よく通るってことは、よく伝わるってことだから。それに佐川くんとは話しやすい」と航平。太一が「お前だって話しやすいじゃん」というと、航平は驚いて太一のほうを見る。太一がかまわずに「なのに、いつもひとりでいるよなぁ。ひとりでいるの好きなの?」と聞くと、航平は「別に」と罰が悪そうに視線を落とす。

太一が「てか、その佐川くんっていうの止めね?なんか宅配業者みたいだし。いいから名前で呼べ」というと、「わかった」と航平は答える。太一は航平に向かって顔をつきだして、航平を促す。航平が少し照れてから「…太一」と名前を呼ぶと、太一は満足そうに笑って弁当を口に運ぶのだった。

航平が周りと壁を作ってきたことが見て取れて切なくなるが、そんな航平の懐にするりと入ってしまう太一の人懐っこい明るさに救われて、胸がジーンと温かくなった。

◆構成・文=牧島史佳