乃木坂46の4期生であり、野球好きと知られる黒見明香がメジャーリーグベースボール(以下、MLB)の魅力を伝える初冠企画MLB連載「9-6-3のファインプレー!」。今回から2回に渡って、東京・新小岩にある「野球工房9」へ取材を敢行!知る人ぞ知る野球グラブの型付けのプロフェッショナル、極意を取材します。
皆さんこんにちは、乃木坂46の黒見明香です。今回私がやってきたのは、新小岩にある「野球工房9」さんです。こちらは野球用品の修理や加工歴40年を誇る職人さんが、グラブを最も使いやすい状態にカスタマイズしてくれるというお店。いったいどんな極意があるのか、取材しちゃいます!
今回お話を聞くのは、「野球工房9」のリペアマイスターの村田洋一さん。数々のグラブをカスタマイズし、その数は数万件にも及ぶといいます。
黒見:まず村田さんの経歴を教えてください。
村田:「久保田スラッガー」という80年以上もあるメーカーの福岡支店にいた江頭重利さん※という方が、日本で最初にポジション別のグラブの概念や、型付けを考え出した人なのです。私はその方に従事し、自身も来年で50年というキャリアになります。江頭さんがいろいろなことを開発する前は、グローブは硬いまま使っていて、やっと使えるようになったときは既に型が崩れてしまっているという状況でした。
※江頭重利さん…株式会社 久保田運動具店・福岡支店で湯もみ型付けの生みの親として、長年数多くのプロ野球選手を含む多くのグラブ型付けを行ってきたパイオニア。2012年には「現代の名工」、翌2013年には「黄綬褒章」を受賞し、"グラブの神様"と呼ばれている。
黒見:湯もみという技術もあると聞きましたが、お湯につけるんですよね?
村田:皮をお湯につけることによって、グラブに水が沁み込み、型を付けやすくなるんです。その温度も調整が必要で、40度を超えてしまうと、皮が焦げてしまいます。
黒見:最初は試行錯誤でしたか?
村田:そうですね。いまから45年ぐらい前に開発した技術ですが、当時はお湯にグラブを付けることなんて常識的に考えられないと思われていました。しっかりとした形になるまで5年、そこからも試行錯誤の繰り返しでした。でも定着してからは、「久保田スラッガー=湯もみ」と認識してもらえるようになりました。50年経ってようやく定着したという感じですね。
黒見:村田さん自身、どのぐらいのグラブをカスタマイズしてきたのですか?
村田:あまり数えたことはありませんが、東京に出てきてから4万件ぐらいはやっているのかもしれません。何度も腱鞘炎になりました。でも師匠の江頭さんは親指が曲がっています。私も右利きのグラブが多いので、左の手首や親指はバキバキですね(笑)。いまでも年間800から1000ぐらい型付けしています。
黒見:ポジション別にグラブが違うというのは、何が違うのでしょうか?
村田:この概念は日本だけじゃないですかね。ポジションによって微妙にサイズが違うんです。例えばセカンドはゲッツーを成立させる機会があるので、ボールを握り変えるために少し小さめ。サードは3塁線を抜けると長打に繋がるので、しっかりボールをひっかけるために大きめ、ショートは右バッターの引っ張りをしっかり吸収するために大きめ……など微妙なニュアンスで変えています。
黒見:数ミリ違うだけで、全然違うものですか?
村田:1センチ違うとグラブは全く違います。大谷選手は投手としてマウンドに上がるときは、外野手のグラブを使用しているんです。メジャーの選手も「何で?」と言っていましたが、普通投手というのは、微妙なバランスを要求されるポジションなので、極端に大きかったり、小さかったりするグラブは使わないんです。
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