飯山裕太が俳優としての次のステップへ手応え「今こそ自分にできる最大限を探したい」

2024/07/19 19:00 配信

2.5次元

飯山裕太撮影=岡本武志/スタイリスト=齋藤良介/ヘア&メーク=田中宏昌

舞台を中心に多数の作品に出演し、経験を積んできた飯山裕太。これまでの俳優人生におけるターニングポイントや刺激を受けた出会い、尊敬する先輩など、今の彼を作っているものに迫った。また、今後の目標や、出演を控える舞台『Collar×Malice -deep cover-』への意気込みについても聞いた。

俳優業の魅力は「自分自身を好きになれる瞬間が増えること」

飯山裕太撮影=岡本武志/スタイリスト=齋藤良介/ヘア&メーク=田中宏昌


――デビューから10年以上経ちました。当時を振り返って思うことからお伺いしたいです。

僕自身も最近ふと、そんなに経つんだ…って思いました。ずっと年下のポジションだったので、年数を数えるのはちょっと嫌で(笑)。

でも、つい先日出演したOtona Project - Produce 演劇ユニット【爆走おとな小学生】舞台『カタバミ』で、初舞台だったシアターサンモールにまた立ったとき、当時は本当に何もできなかったなって感慨深くなりました。あの頃は客席を見る余裕もなかったし、広い空間に放り出されたみたいな感覚でしたね。

初舞台ではお盆にグラスを持って出るシーンがあったんですけど、舞台袖でこぼしちゃって、先輩に怒られて…(苦笑)。当時と比べたら、少しは周りを見て動けるようになったような気がします。

――俳優という仕事のやりがいは何ですか?

自分ではない人になれることですね。僕はたまに自信をなくしたり、何でもない人間だなって落ち込むこともあるんですけど…でもいろんな役に出会うことで、そこから解き放たれて、自分にはない考えをもらえたり、他の役者さんに刺激を受けたり、いつのまにか想定していなかった自分が出てきたりするんです。

そこで、自分自身を好きになれる瞬間が増えることが魅力のひとつだと思っています。さらに、観ていただいた皆さんの言葉で肯定していただけると、自分の大切にしていたものが伝わったんだなって感じて、これもまた魅力ですね。だから、いろんな役をやってみたいですし、自分にないものをたくさん探してみたいなって思います。

飯山裕太撮影=岡本武志/スタイリスト=齋藤良介/ヘア&メーク=田中宏昌


――俳優じゃなかったら何になっていただろうな、と考えたりします?

学生時代は心理学に興味を持っていたので、心理学を学んで人の役に立つことをやりたいと思っていて、大学進学を考えていたときも心理学系を選ぶつもりでした。

けれど、大学受験のタイミングでライブ・スペクタクル『NARUTO -ナルト-』に出演することが決まって、公演期間が半年あるので、大学入学したら1年で即留年することがわかったんです。

それなら俳優として生きようと決めて、大学に行かずにこっちの道に専念しました。でも今も人の役に立ちたいなって思うので、この道を選んでいなかったら心理学関連の仕事をしていたと思います。

俳優も演出家もこなす鯨井康介との出会い

飯山裕太撮影=岡本武志/スタイリスト=齋藤良介/ヘア&メーク=田中宏昌


――俳優人生の中でターニングポイントになった作品や、人との出会いを教えてください。

舞台『弱虫ペダル』ですね。2.5次元作品って、原作漫画とアニメがあって、それとすり合わせながら役を演じていくっていうのが一般的だと思うんですけど、僕が演じた新開悠人は、お話をいただいたときにはまだ連載中の作品にも出ていなかったキャラクターだったんです。

そんなキャラクターを、演出の西田シャトナーさんと一緒に週刊連載を毎週チェックしながら、少しずつ作り上げていったのは貴重な経験でした。方向性を調整しながら作ることで、役柄の可能性は無限大なんです。原作通りに演じるものって考えがちですけど、このキャラクターだったら今こう動くだろうなって、より深く考えられるようになる出来事でした。

それと、“ペダステ”では鯨井康介さんと出会ったことも大きかったです。康介さん自身の魅力もあれば、演技力もあって、どちらも兼ね備える魅力の塊みたいな人。その姿にすごく憧れました。

飯山裕太撮影=岡本武志/スタイリスト=齋藤良介/ヘア&メーク=田中宏昌


――鯨井さんのどんなところが一番魅力的ですか?

人間らしい演技ができるところです。アニメ作品って毛も生えてないし、汗もほとんどかかないイメージですけど、鯨井さんは舞台に立つとめちゃめちゃ汗をかいて、その場に生きている人になるんです。それが作品ともマッチしていますし、すごく格好いい。

しかも普段の康介さんはとても優しい人で、まわりを見て困っている人や、うまくなじめていない人に率先して声をかけて、一緒にやっていこうって言ってくれるんです。そんなやさしい先輩が、舞台に上がり、汗を流して大きな声を出して、その場を生きているっていう姿を見ていたら、より舞台を好きになれたし、自分も頑張ろうと奮起した出会いでした。

――4年ほど舞台に立った“ペダステ”ではたくさんの経験があったんですね。

今でも公演を観に行くと無条件に泣いてしまうんですよ。オープニングが始まっただけで自然と涙が出て、きつかったこともあったけど、ここで生きてたなぁって。青春の一部だなって思えるんです。出演時期が被っていない大先輩でも、“ペダステ”経験者っていうだけですぐに絆が生まれて、無条件に仲良くなるくらい、みんなが思い入れのある作品なんです。

つらい稽古を乗り越えてできた作品だから、開演前は正直空気が重いくらい。でも幕が開けるとすごく楽しくて、終わってみたらこんな作品は他にないなって思えるほど、役者にとっては不思議な魅力があります。

飯山裕太撮影=岡本武志/スタイリスト=齋藤良介/ヘア&メーク=田中宏昌


――以前、作り手側にも興味があるとお話しされていましたが、さきほどの鯨井さんも“ペダステ”で演出家デビューされました。演出も手がける先輩俳優を見て、感じることなどはありますか?

これまでは漠然と作り手もやってみたいなと思っていたんですけど、実際に演出をする先輩たちの姿を目の前で見たら、もっとやらなきゃいけないことがたくさんあるんだなって思いました。課題が鮮明になったからこそ、まだまだ自分には先のことだなと思いましたし、たくさん勉強できることがあるなと。

「カタバミ」の演出をした川隅美慎くんは、ひとりひとりを細やかに見て、それぞれのいいところを引き出すんです。自分がもし将来こうなるためには、もっと人の魅力に気づけるようになって、いろんな視点からの感想を持てるようにならないとだめだなって痛感しました。

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