ドラマシリーズ「一流シェフのファミリーレストラン」(原題:The Bear)のシーズン3が、7月17日に全話一挙配信された。同作はジェレミー・アレン・ホワイトが演じるシェフ・カーミーを中心に小さなサンドイッチ店から始まるレストランの成長や料理人たちの人間模様を描いたヒューマンドラマ。第1シーズンは「第75回プライムタイム・エミー賞」で作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞など主要部門賞を総なめにし、第2シーズンも先日ノミネートが発表された「第76回プライムタイム・エミー賞」で23ノミネートを獲得するなど世界的に注目を集める作品。シーズン3では、苦労の末にリニューアルまで漕ぎ着けたレストラン「ザ・ベアー」での奮闘劇が描かれ、前作に引き続き彼らの人生をより濃く映し出している。(以下、ネタバレを含みます)
物語の始まりは、ニューヨークで一流シェフとして働いていた主人公・カーミー(ジェレミー)が、店の共同オーナーで兄の友人・リッチー(エボン・モス=バクラック)やカーミーの下で働きたくてやってきた若手優等生シェフ・シドニー(アイオウ・エディバリー)らと一緒に、亡き兄が遺した借金だらけのサンドイッチ店を再生すべく奮闘するところから。シーズン1では厨房を舞台にサンドイッチ店で働く癖の強い料理人たちがぶつかり合いながら、カーミーとの関係性に奮闘する姿が描かれ、シーズン2では少しずつではあるが彼らの絆が深まっていく様子が厨房内外で映し出された。
そしてシーズン3では、舞台となる亡き兄が遺したサンドイッチ店の店名を「ザ・ベアー」に改名し、リニューアルオープンに向け、一心不乱に準備に取り組むカーミーたち。前作のラストではスタッフの家族や友人をレストランに招待し、無事にプレオープンを迎えた一方で、厨房内ではカーミーがドアの故障により冷蔵庫に閉じ込められてしまうハプニングが発生。罵倒が飛び交うカオスな厨房内で取り乱すカーミーの心の声を聞いてしまったカーミーの彼女・クレア(モリー・ゴードン)は彼の下を去ってしまうという場面で終幕していた。
プレオープンの翌日から描かれる新シーズンでも説得力のあるカメラワークやキャラクターたちの繊細な表情などの細かい部分も丁寧に表現していることが分かる。
第1話「トゥモロー」では、カーミーを中心に過去と未来が交錯しながらプレオープンを終えた彼らの様子が映し出された。会話らしい会話はほとんどなく、キャラクターたちの浮かない表情や彼らの周囲にいる人物たちが発する言葉で、視聴者側が状況をくみ取っていくような演出が施されている。
カーミーがニューヨークで修行を積み重ねる過酷な仕事場や兄のマイケル(ジョン・バーンサル)の生前の姿、彼の悲報に泣き崩れる姉のナンシー(アビー・エリオット)がカーミーに電話をかける様子など、これまであまり描かれてこなかった、物語の核となるような回想シーンが次々と映し出されていく。重い空気が漂う中、カーミーの笑顔を見ることなく第1話は終了し、彼はレストランでの新たな基準を設定しようと決意する。
第2話「ネクスト」は、同作の舞台でもあるシカゴ出身のミュージシャン、エディ・ヴェダーの楽曲に乗せて、レストランをはじめとしたシカゴの街で働く人々の姿にフォーカスを当てた映像から始まる。まるで映画のオープニングのようなエモさが感じられる出だしには思わず感動。そんな温かみのある映像から打って代わり、彼ららしい激しい会話劇の幕が上がった。
カーミーは、ミシュランの星を獲得するために自分勝手にさまざまなルールを設定し、シドニーやナンシーが話をしようとしても、一向に聞く耳を持たない。
「毎日メニューを変更する」「絶対服従」といった無謀な新ルールやレストランの座席を勝手に変更したカーミーに怒りをぶちまけるリッチー、売り言葉に買い言葉とはまさに彼らのけんかを表現しているかのごとく、攻撃的な言葉でブチ切れるカーミー、彼らの間に挟まれなんとか止めようと仲介に入るシドニーといった同シリーズの真骨頂である“会話劇”が早くも登場。毎度のことだが、俳優陣たちの熱量のこもった“口げんか”には、多くのカロリーを消費するような見応えと迫力のある演技力で圧倒されてしまう。
第3話からはいよいよ本格的にリニューアルオープンする「ザ・ベアー」での奮闘ぶりが描かれる。そして前作から少しずつ明らかになってきた、カーミーの家族との関係性や母親との確執など、彼らの動向が気になるところだ。
「一流シェフのファミリーレストラン」シーズン3は、ディズニープラスのスターで独占配信中。
◆文=suzuki
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