本作の見どころは、現役の大学生だからこそ描ける、若者の繊細な心情をリアルに表現している点にある。主人公の夢子は、自分の実力を信じ“漫画”という道に邁進するも、ライバルの存在や大学生活、恋を楽しむ友人などに心をかき乱される。
作中では、アイドルになる夢を諦めて夢子にも“現実を見た方が良い”と忠告をする親友の芹香(菊池日菜子)や、才能あふれる夢子のライバル的存在・安曇一樹が登場し、劣等感や戸惑いが生まれる夢子が痛々しく描かれる。
実はHU35のグランプリ受賞時、「(私は)自意識とか劣等感とかが、すさまじい人間なんですよ。多分どういった作品を描いても、それは現れてくるんですけど、それをやらないと私はやっていけないなって思うし、私の持ち味があるとしたら、そこだなって思う」と語っていた瀬名監督。
実際に夢子も、一樹や芹香たちに影響を受けながら、それと同時に“うまく描けない、でも描きたい、描けるはず”という“自我”の感情にも振り回されている。そして葛藤の末、自分の中でかつて描いていた“ある人物”の存在によって、夢子は一筋の光を見出していくのだ。
この繊細な心情を痛々しいほどリアルに描けているのは、瀬名監督がインタビューで語った“自意識や劣等感”が夢子に投影されているからなのかもしれない。
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