そしてライリーは羞恥心や比較、怠惰などをよりはっきりした形で外に向けて表現できるようになった。前作で新しい環境になじめなかった頃の話もすっかり思い出となり、友人との関係も良好。大好きなアイスホッケーも続けていて、ちょっとした有望株でもある。
ライリーの内部では、先に触れた「感情たち」が大忙し。彼らはライリーの中にある「司令部」にいて、例えば楽しいときは「ヨロコビ」が、ふと過去の失敗を思い出したときなど「ハズカシ」がイニシアティブをとる。が、物事に関していつも「単一の感情」で対処できるわけなどなく、「アイスホッケーでさらに上を目指したいが、だからといって親友たちと異なる道に行くのは寂しい」という、複雑な思いも出てくる。そのあたりの「感情のブレンド」がいかにライリーの体内で行われているかも、この「2」の見どころとなろう。
さらに今回は音楽も充実していて、リズムが特に際立っているなと思ったら、日本の学生や社会人もこぞって譜面を取り寄せて演奏しているジャズ・オーケストラ“ゴードン・グッドウィンズ・ビッグ・ファット・バンド”に在籍経験のある名ドラマー、バーニー・ドレセルの名前がクレジットされているではないか。ストーリー、作画、音楽、音質、どの分野にも超一流が集まって、「本気の遊び心」でエンターテインメント性たっぷりの世界を繰り広げれば、その先にあるのは、世代も国籍もすべて超えた、だが人間であれば疑いなく感じ入ることが可能な「喜びの世界」しかない。
前作は「第88回アカデミー賞」長編アニメーション賞に輝いたが、今作も同等もしくはそれ以上に数多くの栄誉に浴することだろう。
◆文=原田和典
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