「第88回米国アカデミー賞」で長編アニメーション賞を受賞した「インサイド・ヘッド」(ディズニープラスで配信中)の続編となるディズニー&ピクサーの新作「インサイド・ヘッド2」が8月1日に全国公開された。7月に本作のプロモーションで来日したケルシー・マン監督とマーク・ニールセンプロデューサーにヒットの手応え、他にもあった“感情”の候補について、日本の印象などを聞いた。
同作は、日本に先駆けて6月14日から全米をはじめ世界各国で公開されると「アナと雪の女王2」を追い越し、アニメーション映画史上世界No.1の世界興行収入となるなど、歴史的な大ヒットを記録している。前作で小学生だった明るく元気な女の子ライリーが高校入学を控えたティーンエージャーに成長。これまでの「ヨロコビ」や「カナシミ」などに加え、「シンパイ」「ハズカシ」「イイナー」「ダリィ」といった大人の感情たちが新たに登場し、思春期ならではの悩みや葛藤が描かれる。
――世界的に大ヒットしておりますが、製作の段階で手応えを感じていらっしゃいましたか?
ケルシー:まったく予想外、期待以上の成功です。
マーク:作っているときには「観客の方が共感してくださること」を願って一生懸命仕事をしています。ピクサーという会社の中で4年間を費やして作品を完成させているので、その中にいる私たちはこれに共感できますが、「果たしてその会社の外に出たときに、この作品はどう評価されるのだろう」という気持ちは確かにありました。その作品が今、世の中に出ていろんな方から大変な共感を集めているということを知って、すごくうれしく思っています。
――続編に取り組んだいきさつについて教えてください。
ケルシー:「『インサイド・ヘッド』をもう一つ作ろうと思うんだけど、何かアイデアはないかな?」とピートから言われたのは2020年1月のことでした。
マーク:以前の「インサイド・ヘッド」では、私はアソシエイトプロデューサーを担当していました。当時は1本で完結する作品だと考えていて、シリーズものにする気持ちはまったくありませんでした。でも、その作品の監督で、今はチーフクリエイティブオフィサー(CCO)を務めているピート・ドクターが「どれだけ、あの映画が自分にインパクトを与えたか」「自分の感情を考えるようになった」など「インサイド・ヘッド」に関するさまざまな良い反応を、たくさんの人から耳にしたそうです。
――主人公のライリーも成長して、「シンパイ」「ハズカシ」「イイナー」「ダリィ」という4つの新しい感情が出てきました。この感情は多くの感情の中から厳選されたキャラクターですか。他にはどんな感情候補がありましたか?
ケルシー:アイデアはたくさんありましたが、今回の作品でのライリーの年頃であればやはり自意識が過剰になってくるであろうということで、この4つの感情を選びました。他に考えていた感情の一つには、「妬み」(jealousy)があります。これは「イイナー」の双子の妹という設定で考えていて、「あなたは(妬みとイイナーの)どっちなの?」と言い合うセリフも考えていました。あれこれリサーチをしていくうちに、自分も含めてライリーの年代の時には、妬むよりも「自分もこうだったらいいのに」と憧れるほうが多かったのではと思い、今回は「イイナー」のキャラクターを生かしました。
――「インサイド・ヘッド2」はライリーという少女が主人公ですが、男女共通のテーマを取り上げていて、年齢を重ねた方も若かった頃を思い出して、懐かしさや切なさを覚えるところがあるはずです。ピクサーアニメは、大人の観客もすごく大切にして作っているのかなという印象を受けました。
ケルシー:マークも私も10代の子どもを持つ父親ですが、「家族全員で見に行きたいと思う映画は、実はあまりない」と私は思っています。多くの映画は、ある特定の年代の人ってある特定のグループをターゲットにしていると感じます。ただ、ピクサーの映画に関しては、どの年代の家族でも全員が楽しめるものにしたいと考えて製作しています。だから私はピクサーが大好きです。
――今回の来日にあたって楽しみにしていたことはありますか? 日本のアニメや日本関連のものでお気に入りのものがあれば教えていただけますか?
マーク:私は今回、3度目の来日です。初めて来たのは5年前、「トイ・ストーリー4」のときです。そのときに私は日本に恋に落ちました。美しい町並み、歴史など、本当に探るべきところがたくさんあると思います。それに私は、スタジオジブリの作品が大好きなんですよ。ピクサーとジブリはすごくいい関係にあって、宮崎駿さんがピクサーを訪ねてきてくれたこともあります。
ケルシー:私が最初に日本に来たのは2013年で、「モンスターズ・ユニバーシティ」の時です。また戻ってこられたことがうれしいですし、17歳の息子が特にアニメファンで、「呪術廻戦」など日本のアニメのことをいろいろ教えてくれるんです。
――「インサイド・ヘッド3」の構想は?
ケルシー:今のところプランはありませんが、「インサイド・ヘッド2」で使われなかったアイデアもいっぱいありますので、その中のいくつかが陽の目を見たらいいなと思っています。
――では最後に、公開を待ちわびていた日本のファンにメッセージをお願いします。
ケルシー:この映画を通じて、自分自身を見つめていただけたらと思います。主人公はアメリカのサンフランシスコに住んでいて、アイスホッケーをやっている13歳の女の子ですが、究極的には「人間の感情」についての話です。だから前作も今作も、ものすごく皆さんの反応が良いのかなとも思いますね。たくさんの人が「共感できる」と言ってくださっているので。ついに日本の劇場で公開されるということで非常にワクワクしております。私たちは本当に心を込めてこの映画を作りました。さまざまな感情が、違った視点から見えるようになってもらえたらすごくうれしいですね。
マーク:「インサイド・ヘッド」公開の後、「この映画がきっかけで、親子で初めて感情について話し合いました」「今までそんなに価値があると思わなかった、例えばカナシミのような感情について話をするようになりました」という声をたくさん聞くことができました。今回は、より複雑な感情について描かれていますが、さまざまな感情の中にあなたを見つけていただけたらと思います。すでに公開が始まった国でもとても評判が良いですし、日本の皆さんの心にも触れることができたらと願います。家族全員で、どなたが見てもどんな年齢の方が観ても共感できると思っていますので、ぜひお楽しみください。
◆取材・文=原田和典
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